診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第6章 菜の花寮の大騒動

103話 川瀬サイド・見習い寮父・2

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 佳代ちゃんの手伝いを始めて、ようやく5日が経った。

何とか朝の手順は分かってきた。

分かればどんどん体が動く。

茶碗の場所も分かり、調理用具の仕舞い方も覚えた。

寮生たちも俺が手伝う姿に見慣れてきたようで、違和感なく接してくれる。

7時から食事時間が始まる。

その前に佐久間先生へ届けなきゃいけない。

なるべく早く持っていくようにして、待合室にいなければ部屋まで運んだ。冷めちゃうからね。

配達を終えて戻ると、今度は自分の朝食。佳代ちゃんも一緒に食べる。

ワイワイと「このおかずがどうだ」とか「こっちの味がどうだ」とか、寮生があれこれ言っている。

でも皆楽しそうだ。やっぱりご飯の時間は大事なんだな。

台所の戸棚や引き出しは写真で一覧表を作り、ベッドのそばに貼りまくった。

毎日眺めて、だいたい覚えた気がする。……これはもう受験勉強だな。

ただ、まだ苦手な分野がある。味を覚えることだ。

今までは「うまい」か「まずい」か、それとも「分からない」しかなかった。

それじゃ通用しない。

自分の舌が一番信用できないって、どういうことだよ?

――バカ舌だ。全く……。

でも焦っても仕方ない。佳代ちゃんに少しずつ教えてもらうしかない。

仕事が終わると風呂に入り、佐久間先生の分を届けてから、夜の佳代ちゃんの手伝いをする。

汁物は味噌汁か澄まし汁以外はカップに分けてトレーへ。

夜は弁当があるから、ほうじ茶をたっぷりポットに入れてテーブルの端に置く。

それと取り皿と作ってあるおかずを並べていく。

――料理が出来ていると本当に楽だ。

これを今まで全部、佳代ちゃんがやっていたなんて信じられない。

そりゃあ休む暇もなかっただろう。

食べ終わった食器は皆が自分で洗って乾燥機へ。

これは北原の指示らしい。

それまでは佳代ちゃんが全部洗っていたんだな。

俺は北原みたいに料理は出来ない。

でも佳代ちゃんが「卵焼きの練習をしてみる?」と言ってくれた。

「味をつけてもいいし、つけなくても醤油をかけるだけでもおかずになるよ」と。

俺は味をつけるやり方を教わった。

出汁を少し入れて、砂糖を入れる。

覚えれば問題ない。手術よりは楽なんだから。

――ただ、巻くのがどうにもならない。

すると別の方法を教えてくれた。

卵をぐちゃぐちゃに混ぜて、ゆるくボロボロにして焼く。

それを巻きすの上にラップを敷いて乗せ、巻きすでそのまま巻く。

冷めるまでそのまま放っておく。

そして切ったら――あら不思議。マジックみたいに美しい卵焼きが出来上がった。

これを俺の十八番にしよう。

「これはね、まだ誰もやってないと思うよ」

佳代ちゃんが秘伝を教えてくれた。

よし、任せてくれ。

それ以来、そればっかり作った。

でも不思議なんだ。朝出しても誰も「飽きた」って言わない。へへへ。

しかも夜のうちに作っておける。

俺は毎晩、卵焼きを作るようになった。

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