診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第6章 菜の花寮の大騒動

108話 川瀬サイド・嫌な予感

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水曜日の夜。もう寝ようかと思っていたら、北原から電話がかかってきた。

「すぐスクラブ着てサテの1階に来て。お宅の大学病院からご指名の電話があったんだ。救急車がもう向かってる」

ガチャッ――電話は切れた。

なに?? なんだって??

とにかく急いで着替えて、サテ1階へ。

すでに救急車が到着していて、妊産婦らしき女性が呻いていた。

北原が待っていた。

「おい、なんでうちに来るんだよ!?」

「しょうがないだろ。お宅の病院からのご指名なんだよ」

北原は電話口の医者の真似をした。

『すみませんけど、そちらにいる川瀬先生にお願いしたいんです。

こっちはもう手いっぱいで身動きが取れないんですよ。

それに救急の佐久間先生もいらっしゃると聞いているので、万が一の対応もお願い出来ると思いました。

とにかくもう救急車がそっちに向かってますのでお願いします。

あっ、で、明日の外来は来なくていいと伝えてください。休んでいいそうです。では。ガチャ』


「はぁ? ここは大学の分院か?」

ニヤニヤ笑う北原。

「早く診ろよ。佐久間先生も起こしたからさ」

「わかったよ……診ればいいんだろ」

妊婦はすでに手術室に運ばれていた。

みんなで手術台に移す。

佐久間先生が診察を進め、西村主任に的確に指示を飛ばす。

でも、指示がなくても佳代ちゃんの動きは完璧だった。――さすが救急出身だ。

そこへ小児科の三浦先生も到着。

「どうですか? すぐ生まれそうですか?」

佐久間「まだ分からない。今エコーをかける」

患者はすでにもうろうとしていた。

三浦先生も全身をくまなくチェックしている。

「まだ臨月じゃないですね。せいぜい8か月くらい?」

佐久間「うん、それくらいだと思う。最近の妊婦さんはお腹が小さいんだよな」

三浦「川瀬先生の患者さんじゃないんですね?」

「いや、俺じゃない。荷物に母子手帳とかないの?」

西村「今、理事がお宅に電話しているので、見てきます」

北原に尋ねた。

「事故か?」

「そうかもしれない。ただの憶測だけど。道路に倒れていたらしい。

通行人が救急車を呼んだが、大学病院が事故で手いっぱいだったらしい。

詳細は不明。救急隊が駆けつけたときにはもうろうとして、受け答えができなかったって」

「血圧は?」

三浦「あ、僕がチェックします。……結構高いです。186」

「血糖値は?」

西村「360です」

「わーっ!」全員の声が揃った。

俺は陰部を消毒して内診した。出血している。

「ああ……どうするかな。まだ早い。悩むな」

佐久間「頭部のCTを撮りましょう。仕方ないですね」

「はい、背に腹は代えられない」

西村「母子手帳が見つかりました。妊娠8か月の1週目です」

佐久間「とにかくCTへ行こう」

「はい」――全員で移動した。

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