診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第7章 スタッフ強化作戦

131話 川瀬医師・部長はいかが?

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 さて、これで一通りの下準備は終わったな。

――あ、まだだ。川瀬に話していない。

寮に戻っている頃だろうと足を向けた。

リビングを覗くと、亜衣さんがぱっと笑顔で「わあ、院長先生!」と手を振ってくれた。可愛いな。

「こんばんは。川瀬先生は来てるかな?」

村上くんが首を振る。
「いや、多分、本館の5階ですよ」

「そういえば寮母さんは?」

亜衣さんがクスクス笑いながら答えた。
「間違いなく本館5階です。はい」

やっぱりか。笑いながら5階に向かった。

川瀬の部屋をノックすると、彼が顔を出した。
「寮母さんは?」

「佐久間先生の奥さんのとこじゃないの?用事?」

「うん、川瀬にちょっと話があってさ」

「じゃあ場所を変えようか」

二人で院長室に移動した。

「実はさ、川瀬に今度の2号館で産婦人科の部長をお願いしたいんだよ。どうかな?」

「ああ、いいよ。俺で良ければ」――なんだか、あっさりだな。

「もしかして、岩城から聞いてた?」

「うん」

プッ。「くそー!」

二人で吹き出して笑った。

笑いすぎて、本題を忘れそうになった。

「これさ、今度の産婦人科で採用した人の履歴書と、助産師3人の履歴書。あと、小児科もいる?」

「いる」

「小児科は三浦先生を含めて4人。で、部長は新しく採用した山口未来先生(39歳・東大出身)にしたんだ。4人とも悪くないけど突出した人がいなくて、年齢で決めちゃった。内緒だけど」

川瀬は履歴書をパラパラめくりながらニヤリとした。
「は~ん、東大だからだろ?」

「当たり!」また二人で笑った。

「でもさ、決め手がない時は最初に線を引かないと、あとで揉める元になるからね」

「評判を聞いたのか?」

「いや、特には」

「じゃあ、ちょっと保留にして。俺が調べるから3日待ってくれないか?」

「わかった。今は花井部長と理事にしか言ってないから、変えることはできる」

――数日後。

川瀬から「話したい」と連絡があった。

「調べたんだけど、俺の勘を信じてもらえるなら、部長は三浦先生にした方がいい」

「わかった。そうするよ。でも理由を聞かせてくれる?」

「山口先生は、多分本当は子供が苦手なんだと思う。抱っこや接触が少ないって口コミにあった。勉強一筋で、人と触れ合う経験が少なかったんじゃないかな」

「そうなんだ……へえ、聞いて良かったよ。じゃあ三浦先生は?」

「この人は慎重だけど、言うことははっきりしてる。前から“いいな”と思ってた」

「そうか。この人ね、うちに来るまでは理想の場所を探してて、非常勤ばかりだったんだよ」

「なるほど。やっぱりな。そういう人なら腹を据えてやってくれる。だから三浦先生にすれば間違いない」

俺はうなずいた。

――やっぱり川瀬に相談して正解だった。


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