診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第8章 もっと寮が欲しい

150話 旅行

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 今週末の土曜日は、前回に続いて二回目の大量面接。夜はズーム面接だ。

さらに今回は日曜日の夜もズーム面接を入れた。

――本当に、たくさんの応募者が来てくれたことに心から感謝だ。

ところで。

アニメの募集動画のおかげで応募者が殺到したから、約束通り、莉子と夏を旅行に連れて行かないといけない。

来月の二連休に出かけることにした。



リビングでは、莉子と夏と桃香がそろってネットにしがみつき、「どこに行くか」で大揉めだった。

夏「お兄さんはどこに行きたいの?」

……正直、昼寝がしたいんだけど、そうは言えない。

「ええとね、みんなが行きたいところに行くから、まとめといて」

莉子「春ちゃん、私はその手には騙されないわよ。この前の恐竜博物館の時を忘れたの?」

「……? なんだっけ?」

夏「ああ!思い出した。ホテルが良くないとか、食事が今ひとつとか、景色がどうとか、ずっと文句言ってたよね?」

「ふっ、俺がそんな贅沢言うわけないだろ?」

莉子「ぶーー!」
桃香「ぶっぶっぶーー!」

莉子「結局さ、宿の夕飯がまずそうだからって、市内の懐石料理屋に夕飯だけ食べに行ったんだよね!」

「あ……そういえば……あの懐石は美味かったな」

夏「ほら!やっぱりお兄さんは贅沢なんだよ」

ぷっと笑った。「誰だ?そんな奴は?」

三人がじろっと俺を見る。……ははは。

「だから最初から良いリゾートホテルにしようよ。景色はどうでもいいけど、上質な宿と温泉と美味い夕飯さえあればいい」

夏「ほら出た!」
莉子「それを贅沢って言うの!」
桃香「パパも反省しなさい!今度は桃香が行きたいとこに行くんだもん」

「どこ?」夏と莉子の声がそろった。

桃香「ディズニーランドに決まってる!」

――その瞬間、莉子と夏が妙におとなしくなった。

「せっかくだし紅葉の季節だから、蓼科とか軽井沢とか日光あたりに……と思ってたんだけど。桃香がディズニーランドなら、そこに行こう。ホテルも周りにいっぱいあるしね。翌日は千葉から館山の方へドライブして、海を見ようか」

父親らしく胸を張ってみせる。

それでも莉子と夏はまだすっきりしていない。

「莉子はどこが良かったの?」

莉子「私の望みは小さいよ。都心の素敵なホテルに泊まって、公園を回って、街を歩いてカフェに入ってデザート食べたいの」

「ふっ……小さいのか大きいのか分からないよ」

「じゃあ夏は?」

夏「俺は広い部屋で、温泉大浴場があって、ご馳走があれば文句なし。景色はどうでもいいよ」

「おい、それ俺と一緒じゃん」笑ってしまった。

潮騒の宿で景色を喜んでたくせに、どうでもいいはずないだろ。

「よし決めた。土曜は午後から出かけるから時間がない。ディズニーランド近くのホテルに泊まろう。できれば大浴場付きで。食事は――捨てた」

ぷっ。莉子と夏が笑う。

莉子「春ちゃんってホントうそつき!」

夏「この前も同じこと言ってたよね」

アハハハ。もう俺は黙るしかなかった。

――そういえば、前も“うそつき”って言われたんだった。エヘヘへ。

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