診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
160 / 431
第8章 もっと寮が欲しい

158話 ズーム面接・続き

しおりを挟む
 昨日の救命医の件を夏に話したのに、しばらくぼーっとしていた。

「なんで喜ばないんだよ?」

「だってさ……また騙されてないかって思ってさ。もう俺、あの一件で神経すり減らしちゃったよ」

「大丈夫だよ。ICUナースと二人で来るんだから。きっと1~2か月のうちに来る。ワンルームを2室取り置き済みだ」

「はーい!」

3番目の面接者は救急ナース。工藤美香さん。もちろん即採用とした。

ただし寮希望だったため、最後の学生寮を割り当てた。

募集要項に「ICU・救急には手当てがつく」と書いておいたのが効いたようだ。

さて――最大の山場は今夜だ。

待望の救命医の面接。そして救急ナース2名。

これが正念場になる。



Zoom面接が始まった。

最初に登場したのは救命医だった。

「こんばんは。初めまして、菜の花病院の院長、北原です」

「こんばんは。救命医の高原直哉、34歳です。よろしくお願いします」

「高原さんは都内の三次救命センターにお勤めですね。どうして菜の花に?」

高原「実は職場結婚した妻がいまして……今の病院は忙しすぎて家に帰れないことも多いんです。

いずれは子どもも欲しいですし、妻も『もっと余裕のある病院に移りたい』と。

それなら二人一緒に移ろう、と話し合ったんです」

「ああ、そういうことでしたか。では、ナースの高原真理さんというのは奥様ですね?」

高原「はい。今横にいますが、顔を出してもいいですか?」

「ふふ、もちろん。どうぞ」

画面に丸顔のかわいらしい女性が現れた。昨日のケースと同じく、夫婦そろっての登場だ。

「こんばんは。突然失礼します。高原真理です。よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。お二人とも大歓迎ですよ。

楽ができるかは分かりませんが、残業はほとんどないと思ってください。

シフトも最大限希望を考慮します。日数や時間を減らしたいなら、それも可能です。

ご自分で働きやすい環境を作ってくださって構いません」

二人は顔を見合わせ、思わず「えっ?」という表情になった。

高原「本当にそんなことでいいんですか?救急なのに?」

「あはは。そうですよね、信じがたいでしょう。でも救命医はすでにもう1名確定しています。

外科医も8名いて、他の診療科もほとんど揃いました。2号館をカバーできる見通しが立っています」

高原「すごい……まだ先のオープンなのに、もうそこまで?」

「ええ。大量のスタッフが必要ですから、先手必勝で動いてきました」

高原「……驚きました。私たちの方がのんびりしていたくらいです。

ところで、救命医の募集はまだ続けていますか?」

「はい、大丈夫です。どなたかご紹介いただけるんですか?」

真理「ええ、実は……主人もですが、ナース仲間の中にも菜の花の募集に心を動かされた人が多くて。

『行きたい』という声ばかりなんです。

でも一度に辞めるのは難しいので、まずは私たち夫婦が先陣を切ることにしました。

順番に行こうという話になっているんです」

「それはありがたいですね。もちろん全員歓迎しますよ。

予定が分かり次第、こちらでスケジュールを組んでおきます」

二人の顔に、安心と喜びが広がった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...