診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第9章 内定した方の為に

178話 楽しい計画

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  菜の花に理事と一緒に帰ってきて、院長室で一息ついた。

「それにしてもさ、一件落着はしたけど、実際のところ救命が3名も増えちゃったから、仕事の量が全然足りないんじゃないの?」と理事。

「そうなんだよね。麻酔医たちはみんな2号館の寮だから、まだ呼べないんだよ。

今呼ぶならまた寮を用意しないといけないしさ。

1、2名なら呼んで“ペインクリニック”をやればいいんだけど、何と言っても入院施設がないからね。そこが問題なんだよ」

そんな話をしていた。

「ねえ、こっちで患者を受けて、桜丘センターに回すことはできないの?」と理事。

「どうせ今は救急車の受け入れ、止まってるんでしょう?」

「うーん……でも今はスタッフが少ないからね。どうしようか。ちょっと考えるよ、待ってて」



 その日の夕方、8名がまた院長室にやって来た。岩城や川瀬も一緒だ。

「院長、ちょっと提案があるんだ」と岩城。

「みんなと話し合ったんだけど、今の菜の花は入院設備もないし、麻酔医もまだだろ?

8名がここにいるだけじゃ勿体ない。2号館ができるまで、日中はセンターにシャトルバスで通ったらどうかな?」

 思わず高原君の顔を見た。みんなも笑顔でうなずいている。

「ええ~、みんなそれでいいの? 大丈夫なの? 無理しなくていいんだよ。」

「はい。岩城先生や川瀬先生のもとなら安心して仕事ができます。
 
2号館ができるまでフォローしたいと思ってます」と高原。

高原「新たな救命医をセンター用に募集されますよね?」

「うん、それはすぐにやろうと思ってる」

河本も口を開いた。

「きっと“菜の花の募集”なら、すぐ人が集まると思います。

だから、その間は僕たちみんなで一緒にやっていこうって話したんです。

今だったら何の縛りもなく、楽しくできると思うんですよ」

「そうか。じゃあ、それでいいなら行っておいで。
シャトルバスは山野課長にお願いしておくから、送迎できるようにしておくね」

「悪いな、いろいろ変わっちゃってさ。でもこの8名がいれば、えらくゆったりしたシフトになるんだよ」

川瀬が笑いながら言った。

「だから俺たちも一緒にしばらく行くよ。送迎よろしく頼むな」

「うん、わかった。ありがとうね。みんなも無理しないようにね。
 休みたい時はいつでも休んでいいんだからね」

「はーい!」 声を揃えて答えてくれた。

高原真理さんが手を挙げた。

「あのう……それで、センターのみんなが一度“菜の花”を見学したいって言ってるんですよ。いいですか?」

「うん、いいよ。明日でも大丈夫。君たちを送って、そのバスでみんなが来たらいい。
うちでゆっくりして、お弁当も一緒に食べればいいしね。
……あ、そうだ! 土曜日にしたら?
クラブ活動だって、みんな参加していいんだよ」

「わー、それいい! 土曜日がいいよね?」

真理さんがみんなに聞くと、声が弾んだ。

「そうだよ、絶対土曜日が楽しいよ!」と河本。

「朝に来て見学して、お弁当食べて……その後はクラブ活動を見学。

その間、俺たちがセンターを見るからさ」

「うん、わかった。楽しそうな計画ができたね。

 じゃあ、山野さんに言っておくから、時間を伝えておいて」

「はーい!」また声がそろった。

みんなの明るい表情と声が、胸に響いた。

――ああ、ようやく本当の日常が戻って来たんだなと感じた。

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