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第10章 人が集う、嵐の春
186話 TV出演とKAI君のおかげで
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夏の“テレビ作戦”にまんまと乗せられたが――
結果的には、KAI君たちの人気の威力がすさまじかった。
放送の翌日から、まるでKAI君がいつも病院に通っているかのような印象を与えてしまったらしく、
総合案内には「KAI君はいつ来ますか?」という問い合わせが殺到したという。
ふっ……案内の加納さんと広報の三枝君が気の毒だ。(笑)
院長室に戻ると、すぐに岩城から電話がかかってきた。
「テレビ見たけどさ、おめえは派手だなあ~。何だあれは?」
開口一番がそれだ。笑いながら続ける。
「ところでな、俺の大学の外科医仲間で篠原岳ってやつがいるんだ。二つ下なんだけど、これがえらく優秀でさ。
この前“准教授にならないか”って言われたんだけど、いやなんだってよ。変わってるだろ?
臨床に戻りたいらしくてさ。救命センターにどうかなと思って電話したんだ」
「マジか? 大歓迎だよ!大助かりだ。そんな優秀な人が来てくれるなんて最高だよ」
「だろ? まだあるぞ。おまけを連れていく。救命医だ。一人だけど、いいだろう?」
「えっ? 助かるよ。ありがとう。でもさ、今は大学病院勤務だろ?
院長が“菜の花に引き抜かれないか”って戦々恐々としてるらしいぞ。来れないんじゃないのか?」
「それも考えたさ。でもな、あのセンターは元々3次救命センターで、臨床研修指定病院にはなってるんだよ。
人が減って一時的にストップしてただけで、体制を整えればすぐ復活できるらしい」
「えっ、そうなのか? 全然知らなかったよ。誰もそんなこと言わなかったし、研修生もいなかったからな」
「そう。それで篠原岳が“外科の専攻医をセンターで研修させられる”って院長を説得したらしい」
「なるほど……。ってことは、まさか……?」
「そう、そのまさかだ。宮本が専攻医あと1年だろ?
研修先を救命センターにすれば、また菜の花に戻って来られるだろう?」
「ええーっ! それ、感激だよ。そんなことができるのか!」
「できるんだよ。すごいだろ? へっへっへ。さすが岩城様だぜ」
電話の向こうで笑う岩城の声が、やけに頼もしかった。
「でな、外科医の篠原岳。それからその子分の救命医・佐伯真。35歳。
こいつは外傷外科・救急外科のスペシャリストだ。
それと現場にはもう一人、優秀な外科医の小野寺啓介がいる。
専攻医は2名受け入れることになってて、そのうち1人は宮本の同期、2年目の宮内遥人。
この2人をセンターで研修させる段取りだ。これで当面は困らないだろ?」
「うわぁ……岩城、本当にありがとう。宮本君まで戻ってくるのか?
奥さん、絶対喜ぶなあ」
電話を切るとすぐに理事と桐生さんへ報告し、院内掲示板にも正式発表した。
*
その日の夕方――。
なんと宮本君が奥さんと一緒に院長室を訪ねてくれた。
「院長、お久しぶりです。いつも妻がお世話になっています」
その顔を見た瞬間、胸が熱くなった。
気づけば、俺は彼の手を取って抱きしめていた。二年ぶりの再会だった。
「ありがとう。よく帰ってきてくれたね。本当に頑張ったな」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
宮本君も、そして奥さんも泣いていた。
「センターが菜の花の傘下に入って、まさかこんな展開になるとはな。
でも本当にうれしいよ。今の菜の花がここまで来られたのは、
初期の苦しい時期に宮本君が支えてくれたおかげだ。俺は忘れていないよ」
宮本「ありがとうございます。ここにまた戻れるなんて……岩城先生のおかげです。
何から何まで、本当に感謝しかありません」
「そうか。岩城は面倒見のいいやつだからな。
――そうだ、来年3月に“菜の花テラス”の横に新しい寮、アネックスができるんだ。
そこに夫婦寮がある。どうだ、入らないか?
宮本君もセンター勤務なら夜勤もあるし、奥さんも忙しくなる。
そこなら朝食も出るし、シャトルバスでセンターまで通えるよ」
二人の顔がパッと明るくなった。
「本当ですか? いいんでしょうか?」
「うん、いいよ。抑えておくから安心して」
「わぁ、うれしい!」
二人は顔を見合わせて、ぎゅっと手を握り合った。
――なんてうれしい日なんだろう。
TV出演もKAI君も、夏の策略も。
すべて、この瞬間のためにあったのかもしれない。
結果的には、KAI君たちの人気の威力がすさまじかった。
放送の翌日から、まるでKAI君がいつも病院に通っているかのような印象を与えてしまったらしく、
総合案内には「KAI君はいつ来ますか?」という問い合わせが殺到したという。
ふっ……案内の加納さんと広報の三枝君が気の毒だ。(笑)
院長室に戻ると、すぐに岩城から電話がかかってきた。
「テレビ見たけどさ、おめえは派手だなあ~。何だあれは?」
開口一番がそれだ。笑いながら続ける。
「ところでな、俺の大学の外科医仲間で篠原岳ってやつがいるんだ。二つ下なんだけど、これがえらく優秀でさ。
この前“准教授にならないか”って言われたんだけど、いやなんだってよ。変わってるだろ?
臨床に戻りたいらしくてさ。救命センターにどうかなと思って電話したんだ」
「マジか? 大歓迎だよ!大助かりだ。そんな優秀な人が来てくれるなんて最高だよ」
「だろ? まだあるぞ。おまけを連れていく。救命医だ。一人だけど、いいだろう?」
「えっ? 助かるよ。ありがとう。でもさ、今は大学病院勤務だろ?
院長が“菜の花に引き抜かれないか”って戦々恐々としてるらしいぞ。来れないんじゃないのか?」
「それも考えたさ。でもな、あのセンターは元々3次救命センターで、臨床研修指定病院にはなってるんだよ。
人が減って一時的にストップしてただけで、体制を整えればすぐ復活できるらしい」
「えっ、そうなのか? 全然知らなかったよ。誰もそんなこと言わなかったし、研修生もいなかったからな」
「そう。それで篠原岳が“外科の専攻医をセンターで研修させられる”って院長を説得したらしい」
「なるほど……。ってことは、まさか……?」
「そう、そのまさかだ。宮本が専攻医あと1年だろ?
研修先を救命センターにすれば、また菜の花に戻って来られるだろう?」
「ええーっ! それ、感激だよ。そんなことができるのか!」
「できるんだよ。すごいだろ? へっへっへ。さすが岩城様だぜ」
電話の向こうで笑う岩城の声が、やけに頼もしかった。
「でな、外科医の篠原岳。それからその子分の救命医・佐伯真。35歳。
こいつは外傷外科・救急外科のスペシャリストだ。
それと現場にはもう一人、優秀な外科医の小野寺啓介がいる。
専攻医は2名受け入れることになってて、そのうち1人は宮本の同期、2年目の宮内遥人。
この2人をセンターで研修させる段取りだ。これで当面は困らないだろ?」
「うわぁ……岩城、本当にありがとう。宮本君まで戻ってくるのか?
奥さん、絶対喜ぶなあ」
電話を切るとすぐに理事と桐生さんへ報告し、院内掲示板にも正式発表した。
*
その日の夕方――。
なんと宮本君が奥さんと一緒に院長室を訪ねてくれた。
「院長、お久しぶりです。いつも妻がお世話になっています」
その顔を見た瞬間、胸が熱くなった。
気づけば、俺は彼の手を取って抱きしめていた。二年ぶりの再会だった。
「ありがとう。よく帰ってきてくれたね。本当に頑張ったな」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
宮本君も、そして奥さんも泣いていた。
「センターが菜の花の傘下に入って、まさかこんな展開になるとはな。
でも本当にうれしいよ。今の菜の花がここまで来られたのは、
初期の苦しい時期に宮本君が支えてくれたおかげだ。俺は忘れていないよ」
宮本「ありがとうございます。ここにまた戻れるなんて……岩城先生のおかげです。
何から何まで、本当に感謝しかありません」
「そうか。岩城は面倒見のいいやつだからな。
――そうだ、来年3月に“菜の花テラス”の横に新しい寮、アネックスができるんだ。
そこに夫婦寮がある。どうだ、入らないか?
宮本君もセンター勤務なら夜勤もあるし、奥さんも忙しくなる。
そこなら朝食も出るし、シャトルバスでセンターまで通えるよ」
二人の顔がパッと明るくなった。
「本当ですか? いいんでしょうか?」
「うん、いいよ。抑えておくから安心して」
「わぁ、うれしい!」
二人は顔を見合わせて、ぎゅっと手を握り合った。
――なんてうれしい日なんだろう。
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すべて、この瞬間のためにあったのかもしれない。
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