診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第10章 人が集う、嵐の春

199話 送迎車の甘い罠

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 実は「お掃除スタッフを送迎します」という案内が、現在働いているスタッフたちにも響いてしまい、送迎車に乗りたいという希望が殺到してしまった。

まあ……そうなるよね......。

希望者の住所を調べてコースを作るのは、山野課長まかせ。申し訳ない。

注文していた14人乗りのハイエースが2台、ついに納車された。

これに、すでにあるハイエース1台を加えて、どんどん試験的に送迎を始めることにした。

もちろん、すである病院用の整形や外科用のシャトルバス3台も別に動いている。

さらに、9人乗りのミニバンも2台注文済み。

ドライバーは9名いるので、シフトを組めば人数は回る。

朝晩はスタッフの送迎を、2次救命センターまで往復する。

夜間スタッフはレジデンスで待機。他のドライバーも休む時は部屋を使えるようにした。

少しでも休んでもらいたいからだ。

それにしても、莉子のかわいいイラスト入りの菜の花病院の送迎車が、毎日あちこちを走り回っている。

これはすごい宣伝になっているよね。

実際、患者さんから「あれに乗ってもいいの?」という問い合わせがどんどん来る。

わー……困る。一応、普段の患者用シャトルバスは通院やリハビリの予約が必要。

具合が悪くて歩くのが困難な方には、事前連絡で家まで送迎している。

でも、普通のバス感覚で乗られると、お掃除スタッフが乗れなくなってしまう。

だから、丁重にお断りしている。

夏が頭を抱えていた。

「あ~俺って人が良すぎるのかなあ?思いつきが良すぎて、後始末が大変だよ……」と嘆いていた。

そっちの方が面白いよ。

「日曜日だから、午後からカフェにでもみんなで行くか?」

「うん、行く。パンでも買おうよ」

みんなで、エリナさんのコーディネートで出かけた。
どんどん消化しないと、またエリナさんを悩ませちゃうからね。
行く途中、公園に寄って写真を撮りまくってからカフェへ。

カフェに着くと、中村君だけでなく岩城まで、黒いエプロンをつけてカウンターに入っていた。タフだねえ。

「いよっ、お揃いだねえ。まるで絵に描いたようなファッションだねえ」と感心していた。

「こんにちは」と莉子や桃香が、にっこり挨拶をした。

奥のテラスルーム横の窓際が空いていた。

「何食べるか先に決めよう」メニューを取ると、莉子たちが眺めていた。

そこへ岩城がお水を持って来た。

「今日のおすすめランチはすげえぞ。例の奨学生が作るからな。うんめえぞ~」

「何が出るの?」

「鶏モモ肉のフリカッセと、スペシャルにすると野菜のテリーヌが前菜につくんだよ。これが天下一品なんだ。デザートも盛り合わせが付くよ」

夏「おっ、俺それがいい」

莉子「私もスペシャルにする」

桃香「ママと同じにする」

「じゃあ、全員スペシャルでよろしくね」

「ヘイ!承知」

「なんだか岩城もおすすめ上手になってないか?」

「なってる~」と、みんなで声を揃えた。ふふふ。

そこへ、庭の手入れに洋子さんが花の苗をいっぱい抱えて庭に入って来た。

にっこり庭から会釈してくれた。

「夏、そういえばさ、2号館の屋上庭園だけど、あれはどうなってるの?」

夏「知らな~い。プロが庭も設計してるんじゃないの?」

「うん、あの映像を見るとさ、大きな樹木はあちこちにあったけど、花ばかりの花壇の植え込みがあっただろう?
あそこの花の植え込みだけでも洋子さんにお願いしてみたら?いつもすごくきれいにしてるからさ。

一度、ご両親にもここを案内して庭も見てもらえばいいじゃない?
だから奨学生がいる日がいいよ。次の日曜日、ランチにお誘いすればいいじゃない?ご両親、きっと喜ぶと思うよ」

夏「ああ~そうだね。考えつかなかった。確かに花壇があったね。話してみるよ」

その後、運ばれてきた野菜のテリーヌは、何層にも重ねられた野菜が爽やかで、味もフレッシュで本当に美味しかった。

鶏肉の白いフリカッセも絶品。

そばに添えられたピラフと一緒に食べると何ともクリーミーでうまい。

桃香には多いかと思ったけど、ぺろっと食べていた。

充実した気分にさせてくれるランチだった。

みんな、物も言わずにただ食べることに集中していた。(笑)

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