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第12章 夏デビューへ
222話 弱音
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帰宅すると、莉子も桃香も食事を済ませたそうだ。
「夏は?」
「知らない。ずっと春ちゃんの寝室で練習でもしてるんじゃないの?」
「桃香はおにいの顔を見た?」
「見ないよ。怖い顔してるもん」
なんだかうつむいてちょっと寂し気な表情をしていた。
いつもならベタベタに甘やかしてくれるもんね。
「ふっ、そうなんだ。桃香、おいで」
呼んで抱きしめた。小さな手で俺の首に手を回してくる。かわいい。
「あのね、おにいはやらないといけないことがいっぱいあるんだよ。だから不安で怖い顔になっちゃうんだ。でも桃香のことは大好きだからね。分かってやってね。今度顔を見たら、手を繋いであげてみて」
「うんっ」と頷いて、分かったようだった。
可愛くてしばらくそのまま抱きしめて髪を撫でる
「今日は塾で何を習ったの?」
「えっとね、算数と国語。算数は難しかった」
「ふ~ん、算数はどんなところをやってるの?」
「方程式が分かんないよ」
「う~ん、そうか。小学校の算数では方程式は出ないからね。桃香はゆっくりやっていけばいいよ。分からないところは、分かるまで教えてもらえばいいんだからね」
「うん、わかった」
髪を撫でてやり、またぎゅっと抱きしめた。
子供の柔らかい匂いがした。
莉子がテーブルに肘をついて、やさしい眼差しで俺たちを見ていた。
「ご飯にしようかな……でも、夏は食べてないんだよね?」
「うん、多分ね」
「じゃあ、呼んでくるよ」
寝室に入ると、夏は眠っていた。どうしようか。
眠っている夏の髪を撫でて、頬にキスをした。
すると夏が両手を俺の背中に回した。……なんだ、起きてるのか?
「夏、どうした? 疲れたのか? ご飯を食べようよ」
「俺、もう自分がダメだってわかった‥‥‥」
「ふっ、もうか?」
うん、と頷いた。
「そうか。じゃあ、やめようか?」
夏が一瞬固まった。
「だって、それはダメでしょう?」
「ダメなもんか。まだ何にも始まってもいないよ。今から辞めれば間に合うよ」
……夏が唇を噛んで目尻に涙が滲んできた。
「向こうはプロだから、できる範囲を知ってるんだよ。だから、できないことは最初から要求しないと思うよ」
「‥‥‥そうなのかなあ?......」
「そうさ。やるだけやって、採用されなくてもいいじゃない。少なくとも、これだけ練習すればカラオケで歌えるようになってるよ。儲けもんだろう?」
ふふふと頬が緩んできた。
「なってるかな?」
「うん、なるなる。俺の夏は優秀だからな。それに、俺しか知らないことがある」
「えっ? なに?」
「ベッドでの夏の声。きれいだよ。内緒にしようと思ってたけど、女の子のような細い高い声が出る。俺の好きな夏の声だよ。魅力的だ」
夏がふふふと笑って、俺に抱きついてきた。
「だって、それはお兄さんしか知らないじゃん」
「うん、そうだよ。だから内緒にしておきたかったんだよ」
夏が顔をあげて、俺を見つめた。
「なんか俺、またやる気が出たみたい」
「あははは、単純な奴だな。じゃあ、ご飯を食べないと声が出ないよ。下に行こう」
「納得、分かった。行くよ」
急に元気が出たみたい。
「今夜ベッドで歌ってみる?」
「もう~そんなこと言われると、俺できなくなるかも__どうしよう?」
頬が緩んで照れまくっているのに、やや上目づかいの視線で俺を見つめた。
「そんな心配は要らないよ」
どうせ夏はベッドに入れば目をつぶってるんだし、
自分の声に気が付いていないんだから……まったく、悔しい。
なんで他人に聞かせなくてはいけないんだ?
全然納得できないのは__多分俺だけだな......。
深いため息をつきつつ、
ベッドから起きて夏の手を引いて起こした。
ドアを開けようとする夏の手を引っ張り、抱きしめて深い口づけを重ねた。
何回も何回も角度を変えて、夏の舌を絡め合って吸って噛んだ。
「…ん、う......あ…ッ、ふ......」
こんなかわいい声を誰に聞かせるんだ?
ふう__「ダメだよ、だって行くんでしょう?」
夏が熱い息を吐いて少し震える。
しょうがない。頭が爆発しそうだけど、きりがない。
我慢するしかないのか......。
「夏は?」
「知らない。ずっと春ちゃんの寝室で練習でもしてるんじゃないの?」
「桃香はおにいの顔を見た?」
「見ないよ。怖い顔してるもん」
なんだかうつむいてちょっと寂し気な表情をしていた。
いつもならベタベタに甘やかしてくれるもんね。
「ふっ、そうなんだ。桃香、おいで」
呼んで抱きしめた。小さな手で俺の首に手を回してくる。かわいい。
「あのね、おにいはやらないといけないことがいっぱいあるんだよ。だから不安で怖い顔になっちゃうんだ。でも桃香のことは大好きだからね。分かってやってね。今度顔を見たら、手を繋いであげてみて」
「うんっ」と頷いて、分かったようだった。
可愛くてしばらくそのまま抱きしめて髪を撫でる
「今日は塾で何を習ったの?」
「えっとね、算数と国語。算数は難しかった」
「ふ~ん、算数はどんなところをやってるの?」
「方程式が分かんないよ」
「う~ん、そうか。小学校の算数では方程式は出ないからね。桃香はゆっくりやっていけばいいよ。分からないところは、分かるまで教えてもらえばいいんだからね」
「うん、わかった」
髪を撫でてやり、またぎゅっと抱きしめた。
子供の柔らかい匂いがした。
莉子がテーブルに肘をついて、やさしい眼差しで俺たちを見ていた。
「ご飯にしようかな……でも、夏は食べてないんだよね?」
「うん、多分ね」
「じゃあ、呼んでくるよ」
寝室に入ると、夏は眠っていた。どうしようか。
眠っている夏の髪を撫でて、頬にキスをした。
すると夏が両手を俺の背中に回した。……なんだ、起きてるのか?
「夏、どうした? 疲れたのか? ご飯を食べようよ」
「俺、もう自分がダメだってわかった‥‥‥」
「ふっ、もうか?」
うん、と頷いた。
「そうか。じゃあ、やめようか?」
夏が一瞬固まった。
「だって、それはダメでしょう?」
「ダメなもんか。まだ何にも始まってもいないよ。今から辞めれば間に合うよ」
……夏が唇を噛んで目尻に涙が滲んできた。
「向こうはプロだから、できる範囲を知ってるんだよ。だから、できないことは最初から要求しないと思うよ」
「‥‥‥そうなのかなあ?......」
「そうさ。やるだけやって、採用されなくてもいいじゃない。少なくとも、これだけ練習すればカラオケで歌えるようになってるよ。儲けもんだろう?」
ふふふと頬が緩んできた。
「なってるかな?」
「うん、なるなる。俺の夏は優秀だからな。それに、俺しか知らないことがある」
「えっ? なに?」
「ベッドでの夏の声。きれいだよ。内緒にしようと思ってたけど、女の子のような細い高い声が出る。俺の好きな夏の声だよ。魅力的だ」
夏がふふふと笑って、俺に抱きついてきた。
「だって、それはお兄さんしか知らないじゃん」
「うん、そうだよ。だから内緒にしておきたかったんだよ」
夏が顔をあげて、俺を見つめた。
「なんか俺、またやる気が出たみたい」
「あははは、単純な奴だな。じゃあ、ご飯を食べないと声が出ないよ。下に行こう」
「納得、分かった。行くよ」
急に元気が出たみたい。
「今夜ベッドで歌ってみる?」
「もう~そんなこと言われると、俺できなくなるかも__どうしよう?」
頬が緩んで照れまくっているのに、やや上目づかいの視線で俺を見つめた。
「そんな心配は要らないよ」
どうせ夏はベッドに入れば目をつぶってるんだし、
自分の声に気が付いていないんだから……まったく、悔しい。
なんで他人に聞かせなくてはいけないんだ?
全然納得できないのは__多分俺だけだな......。
深いため息をつきつつ、
ベッドから起きて夏の手を引いて起こした。
ドアを開けようとする夏の手を引っ張り、抱きしめて深い口づけを重ねた。
何回も何回も角度を変えて、夏の舌を絡め合って吸って噛んだ。
「…ん、う......あ…ッ、ふ......」
こんなかわいい声を誰に聞かせるんだ?
ふう__「ダメだよ、だって行くんでしょう?」
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