診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第15章 進むべき道へ

280話 桃香の進路

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  緑道の散歩で疲れた莉子を寝かせて、桃香を塾に迎えに行った。

塾の門のそばで車を停めて、桃香にメールを送る。

7時ちょうど、塾の玄関ドアが開いて、桃香が駆けてきた。

「パパ、ただいま~」
「お帰りー」

そう言って車を出そうとしたら、塾の先生が出ていらした。

なんだろう? ドアを開けて降りた。

「こんばんは。お帰りのところをすみません。3分ほどお話してもよろしいですか?」

「はい、どうぞ。いつもお世話になっております」

「桃香ちゃんは素晴らしい吸収力で、本来なら飛び級させたいくらいです。
私立の中高一貫校をご希望でしたよね? 医学部志望でしたら、おすすめが2校あります。

ここにメモしましたので、学校説明会の予約が今年の9月ごろから始まりますから、ぜひご検討ください。
ちなみに、両校とも軽くパスできる実力がありますので、ご安心ください。ではまた」

「ありがとうございました」

桃香がニコニコして、「なあに?」とメモを見たそうにしている。

「家に帰ってから、ママと一緒に見ようね」
「うん、分かった」
「さあ、急いで帰ろう」

帰宅すると、夏が先に帰っていた。

「おかえり~」
夏はすでに桃香を抱きしめていた。

「あれ? 莉子はまだ寝てるかな?」

「うん、ちらっと見たけど爆睡してたよ。起こす?」

「どうしようかな……ちょっと様子を見てくるよ」

桃香のことをすぐ話したいけど、どうかな。

やはり、莉子はぐっすり眠っていた。
ベッドの脇に座って、莉子の頬をそっと撫でる。

「うん? なあに……ん……」
なんか寝ぼけてるぞ。ふふっ。

「莉子、桃香が帰ってきたよ。塾の先生から提案をもらったから、メモを一緒に見てくれない?」

バチッと目を開けた。
おっ、すごいぞ。桃香のことになると、俄然“母親モード”になるな。

「えっ? なに?」

「いいから起きろよ。ご飯をみんなで食べようよ」

引っ張るまでもなく、莉子はさっさと起きて、何事かと階下へ急いだ。

「桃香、今日は塾で何かあったの?」

「ううん、何もないよ。いつもと同じだもん」

ニヤッとした。まったく……。

「違うよ。先生のメモはこれだよ」

どれどれ、と夏まで一緒に覗き込んでいる。

夏「あー、これ中高一貫校のお薦め校じゃないの? すげえな。
こんなとこ、二つも薦められてんだ」

莉子「なあに? どうすごいの?」

夏「こんなとこ、将来東大も目指せるような子が行くとこだよ。
特別な秀才が集まる学校だよ」

莉子「あら、そうなの? 桃香、受かるのかなあ?」

「塾の先生によると、“二校とも軽くパスできる実力がありますからご安心ください”って言われたよ」

夏「ええ? 俺の桃香はすげえなあ、やったぞ!」

桃香を抱っこして、ぐるぐる回ってる。

「おいおい、もうそんな歳じゃないぞ」

莉子「なんだか信じられないわ。全部塾の先生任せだもんね。
桃香、偉いねえ~」

「えへへへ……」と、嬉しそうに笑う桃香。

「桃香は本当に偉いよ。
一生懸命に勉強してたもんねえ」

頭をなでなでして、ぎゅっと抱きしめた。

ふふふ、俺も夏と変わらないか。


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