診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第14章 2号館がオープンへ

279話 莉子の日・玉川上水遊歩道

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 最近はずっと忙しかったから、莉子と過ごす時間が少なかった。

莉子も忙しいからなあ。
でも火曜は仕事を午前だけにして、二人で出かけることにした。

この前も同じようなことをしたら、
手を繋いで駅に向かうところを、ばっちり6階の休憩室から見られてたんだよね。

「どこか行く?」と聞くと、
莉子は「ええ~っと……どうしようかな?」と、肩ひじをついて考えていた。

「この前の旅行は桃香中心だったけど、莉子はバナナのデザートがあるカフェに行きたいって言ってなかった?」

「ああ~そうだった!
あとは街歩きがしたいんだよね。
それと、どこか花の咲いてる公園がいいなあ~」

「とはいっても真冬だしね……。
じゃあ、そのカフェに先に行って、あとは近場に公園があったらそこでいい?」

「う~ん、公園ならどこでもいいってわけじゃないし」

「玉川上水の川沿いの遊歩道は?
花がなくても、きっと気持ちがいいと思うよ」

「うん、じゃあそこに行く」

「あったかい格好してね」
「わかった」

翌日、仕事を早めに終えて帰宅。
軽く家で食べて、厚着をして出かけた。

莉子はベージュのダウンのロングコートに、かわいい赤い帽子を被っていた。
マフラーも赤でお揃いだ。

「莉子、めちゃめちゃ可愛いから、今日はあちこちで写真を撮ってあげようか?莉子のインスタにあげると良いよ」
「うん、そうする!」

電車を乗り換えて向かう。

バナナのデザートで有名なカフェは、遊歩道の駅広場からも近い。
その遊歩道沿いにあった。

建物は木造で、三角屋根がすごく可愛かった。

「わあ~かわいいねえ。来てよかったよ」
この店の前でパチリ。

店先にはテイクアウト用の窓もあった。

「中に入ろうか?」

入り口のガラスケースには、いろんなケーキが並んでいた。
バナナばかりかと思ったら、リンゴのデザートもたくさん。
ここでも許可を頂いてパチリ。

「どれにする?」

「私は、焼きバナナが乗ってるタルトがいいなあ」

「じゃあ、俺はリンゴのタルトタタンにしようかな。
アイスクリームもつけられるらしいよ」

「私もアイスつける」

「飲み物は、俺はアップルティーにする。莉子は?」

「私も同じのにする。リンゴとバナナを制覇するわ」

注文したものが運ばれてきた。まずはパチリだ。

早速一口口に入れると目を丸くした。

「え~なんてバナナが甘いの?アイスと合うよ。すっごく美味しい」

ぷっ。かわいい。この顔もパチリ。

タルトタタンはすごく美味しかった。
アップルティーもね。
俺はこの二つをパチリだ。

ガラスのポットには、リンゴの皮がぐるぐる巻いたまま入っていた。
見た目も可愛いし、リンゴの香りが鼻をくすぐった。
これは絵になるねえ~。パチリ。

「このアップルティー、おいしいねえ」
「うん、うちでも作ろうか?」
「うん、夏に飲ませようよ」
「そうだね」

お腹がいっぱいになって、さあ散歩だ。

駅前広場近くの公園から、玉川上水の緑道へ。

川幅は狭いけれど、左右の木々が多くて、
遊歩道の幅はせいぜい1メートルくらい。
ずっと緑道が続いている。安心して歩ける道だった。
二人でお互いをパチリ。
途中で散歩中のご婦人がいたから、お願いして二人のショットを撮ってもらった。
ありがたい。

莉子と手をつないで歩いた。

時折、人とすれ違う時は、縦にならないと通れなかった。

莉子は、すーっと大きく深呼吸していた。

「空気が美味しい?」
「うん、なんだか緑の匂いがするよ」
時折風で木々が揺れて、かさかさと音がした。

ただ、ずっと緑の木々に癒されながら歩いていた。

「この辺の人は、毎日ここを散歩できるんだね」
「そうだね。そんなに気に入ったの?」
「うん。でも、毎日いたら分かんないよ」

「ふっ、だってうちで壁画を描くんでしょう?」

「……そうなんだよ。何を描くか迷ってて、困ってる」

しばらく歩くと、莉子の足が遅くなってきた。

「あそこのベンチで、少し休もうか?」
「うん、そうする」

しばらく、ぼーっとして道行く人を眺めていた。

莉子の肩を抱いていた。すると俺にもたれてきた。

「莉子、疲れたんだったら帰ろうか? もう結構歩いたし」
「うん、そうしようかな」

それから遊歩道を適当なところで離れて、大通りに出てタクシーを捕まえた。
近くの駅まで行ってもらい、電車で帰宅。

莉子は、結構疲れていた。

「莉子、お風呂入る?」
「ううん、ちょっと寝る」

寝室に連れて行って、寝かせた。
莉子は体力がないんだよね。

……でも、今日はすごく気持ちよかったな。

壁画って、何を描くんだろう?


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