診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第19章 アニメと新しい世界へ

394話 ご褒美

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  新たに増えた曲は3曲だった。
結構難しいじゃん! くそー増やしやがって……。

とにかく朝礼が終わって院長室で郵便物を確認したら、すぐ帰宅した。
誰もいないから寝室に籠って新しい曲の練習をした。

ああ~3曲なんて、しかもこのキーは難しい。俺を試してるのか?
利用者にこのキーを弾かせるのか?

あとから川瀬師長からメールが来て、この3曲はナツ・アンサンブルの弦楽器と一緒に合奏をして最大の山場にしたいんだそうだ。

誰だ、そんな余計なことを考えたのは……?
利用者だけでいいんだよ。

とにかく見物客が増えるということだな。
しかも弦楽奏者は耳が良い。

俺が間違えたら目立つだろうが。
仕方ない。とにかく練習しまくった。

途中でトイレに立つと、腰がくがくした。

しかし、莉子が帰って来る時間には、下に降りてハーブティーを飲んでいた。
少しでもかっかする頭を冷やさないといけない。
そうだ、食後にイチゴミルクを食べて身体を冷やそう。
俺が先に家にいたので莉子がいぶかし気に俺を見た。

「春ちゃん、いつから家にいたの?」
「わかんない」
面倒だ。どうでもいいよ。

「ふ~ん、分かんないのねえ~」――意味ありげに俺を見つめていた。

「お弁当を食べよう」
二人で物も言わずに食べた。

「春ちゃん、病院の経営の方はどうなの?」
「独り勝ちだよ」
「ふ~ん……良かったねえ~」

診察室を鬼のように増やした結果、またまた患者が増えて繁盛している。
理由は?早いから。
外来を2倍近く増やしたんだ。呼ばれるのは早いさ。
待たずにすぐ診てくれると患者たちに評判らしい。

口コミにいっぱい書かれていた。
大学病院の患者が相当こちらに流れている。
あそこの院長の恨みを買いそうだな。

「で、朝は何をやってたの?」
「莉子のことを考えてた」
「ウソをつく子はお仕置きですよ」

ぷっ、二人で吹き出した。

「莉子は午後から何をやるの?」
「リトグラフをひたすら作るよ。まだ注文分が終わらないんだもん」

「そうなんだ。あれって莉子はいくらもらえるの?」
「知らな~い。桐生さんや佐伯さんが知ってるんじゃないの?」

「知らないのによく頑張れるね。感心するよ」
「そうでしょう?春ちゃんの奥さんは偉いんだよ~」

「だからさ、ご褒美に土曜は出掛けるんでしょ?」
「あれ、ご褒美だったんだ」

「そうだよ。最大のご褒美でしょう」
「帰りにさ、桃香もいるから、夕食はどこかで食べようか?」

「賛成!どこに行くの?」
「今から調べるよ。夜景がきれいなところにしようか?」
「うん、そうする」

そこで食事を終えたらパソコンを持ってきて調べた。
夜景のきれいな美味しいレストランだな。

うん?待てよ。夏の日がない。
木曜日の夏の予定はどうなってるんだろう。

まあ、夏が帰って来てから聞いてみよう。

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