渋谷ですれ違っただけなのに

スピカナ

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第4話 モデル偽装ミッション

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 俺だってさらに文句を言った。

 「なに自分中心なこと言ってんだよ。
俺だって文学部の出席日数が足りなくなるじゃないか!」

「だからさ、文学部の勉強なら俺が教えるから。
悪いけど、医学部を優先にしてくれないか? 頼むよ。
すごく勉強がきびしいんだよ。毎週テストあるしさ。ホント頼むよ」

そりゃそうだろ。医学部なんてエリートしか入れないんだから。

「まあ、それはいいけどさ。
でも俺、授業を聞いても分からないよ? それどうすんの?」

「もしさ、文学部を1年休学してくれたら、
学費も生活費も俺が払うからさ。

バイトもすぐやめるって電話してくれよ。
骨折したって言えばいいだろ?

というか、住んでるところをすぐ引き払ってうちに来てくれよ。
部屋はあるんだ。家賃だって浮くだろ? 生活費も俺が出すからさ」

……さすがボンボン、話がでかい。

「そうか? まあ、どうせ大学の授業は落ちこぼれてるしさ。
将来の就職口は?」

「わかった、俺が保証するよ。
うちの実家の病院の事務仕事すればいいじゃん。
ね、約束するよ」

「わかったよ、ちょっと待ってよ。バイト先に電話するからさ」

おれは転んで手を骨折したことにして、バイトを辞めさせてもらった。
これで良しと。

「はい、OK. じゃあいいよ。それで行こう。
ところでなんでいつも渋谷に来てるの?」

海斗がいきなり叫んだ。

「あーーーっ!! 忘れてた!
俺のモデル事務所が渋谷にあるんだよ。どうしよう。
今日は仕事があるんだよ!」

「はは、俺は無理だからね。
モデルなんてやったことないんだから」

「ダメだよ。これが飯のタネなんだから。
とにかく一緒に来いよ」

事務所へ向かう道すがら、海斗はもう対策を立てていた。

「いいか、俺の言ったとおりにすれば、15分くらいで終わるから。頼むよ」

そこは道玄坂の雑居ビル。

7階にモデル事務所があるらしい。

俺は言われたとおりに演技することにした。

家賃がかかってるんだ。

事務所のドアを開けた。

「お疲れ様です。遅くなってすみません」

俺はこの瞬間から役者になった。

「もう~待ってたわよ~」

派手めの女性マネージャーが声をかけてきた。

この情報は聞いていた。

「あら? この子はなあに?」

「すみません。実はなんか役者志望らしくて、
俺の仕事を参考にさせてくれって言うんですよ。
隅っこの方でいいんで、一緒にいてもいいですか?」

「はあん、そうなんだ。うん、いいわよ。好きにして」

俺は背中に冷や汗がたらたら流れていた。

「じゃあ、すぐ写真撮るからポーズよろしくね」

海斗がカメラ横でいろんなポーズをする。

俺はその通りに真似した。

ああ~もう、どうなってるのか知らないよ。

こんなんでいいのか?

とにかく、15分はあっという間に終わった。


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