医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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78話  離れて・1(両親を頼って)

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莉子が退院したのは良いんだけど、莉子の身体の状態があまりにも悪くて不安になった。俺一人で莉子を守れるのか? 夜中に目が覚めてしまい、そんなことをずっと考えていた。

今のまま、もし、あと3日もそのままなら、必ずマヒ性イレウスになる。術後性イレウスと言ってもいいくらいだ。
莉子が退院しても、いまだに夢でうなされるくらい治療がつらかった、あのイレウスになりそうな感じ。もう莉子を苦しめたくないんだ。昨日もおなかの音が悪かった。今日の状態も予想できる。 

問題は、俺が病院で仕事をしている間に莉子の状態が悪くなったら、帰宅するまでは対応が出来ないということだ。
やっぱり今結論を出すべきだな。躊躇は莉子を危険な目に合わせる。やはり、父や母の力を借りようと思う。

朝一で、父に電話した。
莉子が退院してきたんだけど、全身状態が悪い上に、イレウスに確実になりそうなくらい腸の動きが悪いこと。仕事に行っている間に具合が悪くなったら、帰宅するまでは対応できないこと。体力が落ちているので、毎日点滴をする必要があること。莉子が痛がるだろうが、点滴には腸を動かす薬も入れたいこと。1日に何回も状態を見て欲しいこと。高カロリー食が必要なこと。何より貧血の可能性と、すぐにでもレントゲンを撮りたいことを伝えた。
あと、俺がネット診療の日は連れて帰るけど、病院の仕事の日は莉子を実家で治療して欲しいこと。
最悪は自分が実家から病院に通勤することなどを伝えた。

父は黙って聞いていた。「わかった。すぐ連れて来い」とだけ言ってくれた。なんだか涙が出そうになった。

俺はすぐに莉子を連れていく準備をした。着替えや携帯、充電器、身の回りの物と、ナプキンやおむつも持って行こう。それは莉子のバッグとカバンに入れた。俺はパソコンと、スーツケースには二人分の着替えなどを入れた。
それといつもの診察道具のカバンも入れた。
あと万が一に備えて、ネット診療が実家で出来るように、デスクトップからノートパソコンにデータを入れて対応できるようにした。

さあ、莉子の診察をしよう。
莉子、起きているか? 莉子はどんよりとした力のない目をしていた。診察するよ。
熱はないけど、36度以下ってなんだよ。血圧も低い。上が90なんて絶対駄目だ。
胸の音はまあまあだけど、おなかの音が悪すぎる。そろそろ吐き気が出ていてもおかしくない。

莉子、どこか具合の悪いところはある?
「ん......、分かんない。なんだか食欲がない。ちょっと気持ちが悪い。おなかが張っていて苦しい。なんだか目が回るからトイレに行きたいけど行けない」

うわ~もうきてるな。早い! 一つずつ対処していこう。

トイレに先に行こう。抱っこするよ。おいでと莉子を抱っこしてトイレに連れて行く。
なんだかフラフラしていて、上半身を一人では保てないような感じだな。支えていないと無理だ。

ベッドに戻ると、水が飲めるか?? 「多分、ちょっと飲めると思う」ペットボトルで水を飲ませた。

莉子、大事な話があるから聞いて。
莉子の身体は今すごく弱っているんだ。多分、自分が思っている以上に身体がついていってない感じだ。
このまま、俺が大学病院に行っている時に、万が一トイレで倒れてもすぐに対応ができないのはわかるよね?
日中がすごく心配なんだ。だから、俺は決心したんだ。莉子をしばらく父さんや母さんに預けてお願いしようと思う。
もちろん、ネット診療の日や土日はここに戻ってくるよ。
でも最悪は俺が実家から大学病院に通勤しても良いと思っているんだ。莉子が元気になるまでの間だからね。

莉子はどう思う? しばらく目をつぶってじっと考えていた。
「うん、分かった、春ちゃんの言う通りにするよ」よし、一緒に帰ろうな。父さんには電話しておいたからね。

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