医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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148話 夏君と緊急連絡先

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 あれから穏やかな日々が過ぎていった。
莉子はまだ春休み中だから、絵画の部活で絵本作りと、テニス部の初心者クラスで練習に励んでいた。
まあ初心者といっても他の人とは体力が全然違うので、ついていっていないようだが、それでも少しずつでも続けているから大した進歩なんだよ。

しかも週に2回は夜、小川先生に2年時の予習を見てもらっている。充実した大学生活と言っていいんじゃないかと思う。両親にもメールで報告をしている。ただ、時々莉子が微熱を出すのはしょうがない。次の日までゆっくり休ませるだけだ。

全体的にいうと、なんだか違うんだよな。莉子の様子がちょっと冴えない。毎日こなしてはいるけど、表情が明るくないんだよね。弾む感じがなくなったんだよ。それがすごく気になるんだ。あえて聞かないけどね。

聞いてもしょうがないからさ。多分、原因は子供が出来ないからなんだよ。それで落ち込んでいるんだと思う。
前はもっとぽ~んと弾けていて明るかったんだ。こればかりは、俺が子供は要らないよと言っても慰められるもんじゃないんだ。だから言わないし、聞かない。ただなるべく莉子を抱いてチャンスを作るだけだ。

莉子は最近中イキができるようになったんだ。また大人の女に近づいたな。ふっ......と無邪気に喜んでいる場合じゃないな。今は莉子に良い子種を提供することが大事なんだよ。

ところで、俺の方の精子検査なんだけど、結果が来た。全く問題がないそうだ。いっそ俺に原因があれば良かったのに。それなら莉子もきっと自分を責めないで済んだと思う。

ふと、見るとメールが来ている。夏君からだ。「莉子がちょっと疲れている感じだから、帰りは送ります」って連絡が来た。ああ~申し訳ないな。いつも夏君におんぶにだっこだな。助かるよ。

そうこうしている間に、またメールが来てマンションに着いたらしい。下に降りていくと、莉子はやっとと言う感じで足取りも重い感じだった。なるほど。これじゃあ、電車に乗せられないな。

夏君が「こんにちは」と言った。すまないねえ。良かったらうちでお茶でも飲んでいってくれないか?「ああ......ええっと、いいんですか?」うん、一緒に来てくれる? すると莉子の荷物を持ってきてくれた。
莉子は脇を支えれば歩けるので、まだよかったよ。

莉子、どこか具合が悪いのか?と聞くと、「ううん、ちょっと疲れただけだから、寝れば平気」と気だるげに言った。
部屋に入ると、莉子を俺のベッドに寝かせた。
夏君、ちょっと悪いが、そこの椅子に座って待っていてくれる? ちょっとだけ莉子を診察するから。

熱や血圧を測り、聴診で音を確認した。やっぱり疲れだね。水を飲ませよう。莉子に水を飲ませて寝かせた。
夏君。ごめんね。お待たせ。コーヒーでいいかな? 夏君も疲れただろう?

「ああ、いえいえ、僕は体力があるので、全然疲れていないです。」そうか少し話がしたいな。

俺もコーヒーを飲むよ。なんか甘いものでも食べないか?ケーキがあるんだけど、好き?「あっ、はい好きです」
じゃあよかったと言って、アイスコーヒーとケーキを出した。俺も食べよう。

莉子に聞いたんだけど、アメリカにテニス留学をしていたんだって? どこをけがしたの?

「右手の肘なんですよ。プロでやっていくには致命的なんです。それにテニス留学をするには年齢的に遅かったんですよ。残念ながら向こうに行って悟りました」
ふ~ん、プロも大変なんだね。 ところで、今メモを書くんだけど、悪いけど、それを君の携帯に登録をしておいてもらえないかと思ってさ。「はい、わかりました」と夏君が言ってくれた。

俺のオンラインの診療もそうなんだけど、一人でやるってやっぱり危機管理が大事なんだよね。
父は海辺近くの町で内科を開業しているんだよ。ここから車で1時間半くらいのとこなんだけどね。

まあ、その父とオンライン診療の方は一応共有してもらっていて、万が一、俺が出来ない時には、父に代わってもらえるようにしているんだよ。患者さんに迷惑をかけないようにと思ってね。だから父の名前もホームページには出しているんだ。
で、莉子の事なんだけど、もし俺が外で急病になって連絡が取れないとかいう事態になったら、悪いけど父に電話してほしいんだよ。頼んでもいいかなあ?

「あっ、もちろんです。俺でかまわなければ喜んで」ああ、ありがとうね。ちょっと待ってて。俺は実家の住所と病院の電話番号と、父の携帯番号を書いた。

これなんだけどね。実家と病院は同じ建物だから住所は一緒だ。急ぎだったら父の携帯でもいいし、病院や家の電話番号は同じだからどちらでもいいんだ。内線でつながるようになっているんだ。

夏君が緊急連絡先を知っていてくれると本当に心強いよ。ありがとうね。はあ......安心したよ。ふっ。

「お兄さんは本当に完璧ですね。すごいなあ~って思いますよ。俺はそこまで考えていなかったです。本当にどこまでも莉子ちゃんのことを思っているんですねえ」

いや~そう言われるとなんか恥ずかしいなあ。ふふふ。ところで、いつも莉子のことで時間を使わせてしまって申し訳ないと思っているんだけど、おうちの方に不信がられていないかい?

「ああ~いやあ、どうですかねえ、うちは父が事業をしているんですが、長男と次男がもうその会社に入っていて仕事をしているので、三男の俺は特に経済学部に入る必要もなかったんですよ。
だから、国語の教師になろうと思って今の国文科を専攻しているんです。親は俺のことは何も気にしていないと思いますよ。
テニス留学だって行くには年齢的に遅すぎたのに、行かせてくれたわけですし、気が済むようにさせてくれていますね。だから問題はないです」
そうなんだ。三男か、うらやましいねえ。お宅のご両親が本当にうらやましいよ。俺は一人っ子だったんだ。そこへ14歳下の莉子が急に妹になったから、うれしくなって夢中になってしまったんだよ。ふふふ。

「へえ‥そうなんですね。それは可愛いに決まっていますよね。俺だって急に14歳年下の妹が出来たら、べたべたにかわいがりますよ。お兄さんにもきっと負けていないと思いますよ」と言うから、あはははと二人で笑った。
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