医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

文字の大きさ
350 / 996

349話 イクメン夏

しおりを挟む
 川瀬の診断は正しいと思った。いろいろな人の助けを借りて、莉子の初期の産後うつはすっかり良くなったのかな~くらいに、莉子は元気になっていた。

でもそれは見た目だけだったのかもしれない。

まだホルモン療法は続けていたけど、すぐ治るのは難しいんだね。時間がかかるようだ。

ただ、これは治るまで継続すればいいだけだ。これは解決としよう。

俺はいくつか資料を調べ、莉子にとってのベストの方法を考えた。

これは夏にも話そうと思う。

あいつもいずれ医大で習うから、一緒に暮らしている以上は知った方が良いと思う。

それに夏の手も借りたい・・というか、桃香の世話はほとんど夏と俺がしている。

気になるのは、莉子があまり桃香に話しかけていないことかなあ。

ただベビーカーに乗せて散歩に行くのは好きだけどね。見せて歩くのは好きなんだなあ。面白い。

一番桃香に話しかけているのは夏だね。さすがに桃香の世話が趣味だと言うだけはあるよ。

イケメンでイクメンだな。モテそうだ。

莉子は桃香を受け入れる心がまだ十分に育っていないということだと思う。

まだ出産してから9か月だもんね。

向き合えるようになるまで、なるべく好きなことをやらせるつもりだ。

俺が決めたスキンシップは続けるつもり。それは大事。

少しずつでもいいからセックスの感覚は覚えていて欲しい。

莉子は病院から帰った後も、なんだか沈んでいた。

今日は昼間に莉子と風呂に入っているから、夜は一緒に寝るだけだ。

9時になった。9時から9時半までが莉子を寝かしつける時間だ。笑われそうだけど。

赤ん坊みたいだって? そうだよ、今の莉子の心は赤ん坊と同じだ。

身体をマッサージしてあげた。「肩が凝っていた?」

「うん、肩だけじゃないよ。あっちこっちいっぱい」そうか・・笑。

じゃあ、全部やらないとだめだね。身体を全部さわりまくりだな。

「莉子、カルチャーの教室はどんな感じなの?楽しい?」

「うん、楽しいよ。年配の人が多いんだよね。平日の午後だからね」

「ふ~ん、みんなどんな絵を描いてるの?」

「正面に花瓶や小物を飾ってあるから、それを描くんだよ」

「今度莉子の絵を見せて欲しいなあ」

「うん、いいよ。今見る?」「うん、見たいよ」莉子がベッドから出てスケッチブックを持ってきた。

受け取ったスケッチブックをめくってみた。

鉛筆だけで描いた静物のデッサンもいっぱいあったけど、あとはほとんどが夏の顔の絵と、夏が桃香を抱いたり、ミルクを飲ませたりしているデッサンだった。少し色付けもされている。

なるほど、習いに行く前と後では少し変わっている。なんというか・・デッサンがちょっと鋭くなっているというか、それでいて色付けはやさしい感じ。やさしい感じがあふれている。中々うまいなあ・・。

なんだかうれしくなる。効果があるじゃないか!

眺めている最中にちらっと莉子の顔を見る。「えっ?なに?」ううん、なんでもない。ふっ。

俺の反応をすごく楽しみにしているのが分かった。本当に絵に夢中なんだね。

「莉子、わかったよ」「ん?なに?」「莉子は天才だよ!すっごくうまいよ!」

「ええ~もう‥‥‥、お世辞もほどほどにしてよ。見え透いてるよ」

「本当だって!すごいよ。それだけはわかる。特に夏が桃香と一緒のデッサンはすごく良いよ」

「ええ・・本当?」「うん、本当。すごく愛情が出ているよ。桃香もかわいいしね、夏も立派なイクメンだよ」

「えへへへ、私もそう思うよ。夏がお母さんだね!」 ふふふ、そうだね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

処理中です...