医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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481話 春樹号泣

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 家に戻った。莉子がまだ起きていて「ご飯は食べたの?」と聞かれた。

「お兄さんはどこ?」「寝るって言って寝室に行ったよ」

「莉子、大事な話があるから一緒にお兄さんの部屋に行こう」

「うん、分かった」

お兄さんの部屋のノックをすると返事がなかった。眠っているのかもしれない。

ドアを開けるとお兄さんは横になっていた。でも目を開けて横になっているだけだった。

「お兄さん、ただいま。岩城先生から預かってきました」

「ん?」 「お兄さんが今朝、岩城先生にメールしたんでしょう?今抑うつ状態だって」

お兄さんは起き上がったけど、何も言わなかった。

莉子が「どういうこと?春ちゃんが抑うつ状態なの?」と俺に聞いた。

「岩城先生や川瀬先生から伝言があります。オープンしてから一か月間の毎週木曜日は川瀬先生が午前。岩城先生は午後に応援に来て診療してくださるそうなので、お兄さんは薬を飲んでゆっくり休んでほしいとのことでした。このことは大学病院の院長も承知しているから心配はしなくていから休んで欲しいとのことでした」

「莉子はお兄さんがちゃんと薬を飲んで眠るように見張ってくださいと、岩城先生からも言われたよ」

莉子はぼーっとお兄さんを見ていた。

お兄さんは何も言わずに、ただ涙がポロポロと零れていた。そして声を上げて泣いた。

俺と莉子はお兄さんに抱きついた。そして一緒に泣いた。

ひとしきり泣いた後、お兄さんは横になって目をつぶった。俺は手だけは握った。

「じゃあ、お水を持ってくるね。薬を飲まないといけないもんね」

莉子がそう言って部屋のドアを開けると、桃香がそこにいてしゃがんで泣いていた。

「桃香、どうしたの?」「ママ、寂しいよ」「おおよしよし、ごめんね。一緒にいようね」

「パパにお水を持っていかないといけないのよ。一緒に台所に行こうね」

桃香と手を繋いでお水と水差しを持って上がった。枕元に行って薬を出した。

「お兄さん、桃香がお水を持ってきたから、起きて薬を飲んでください」

するとお兄さんは起き上がった。「パパ、お水をどうぞ」

「うん、ありがとうね」薬を飲んでくれてまた横になった。

「夏、ご飯を食べていないでしょう?先に食べて。下で待ってるから」

皆で下に降りた。ダイニングテーブルに着くと、莉子が夕飯を出してくれた。

これはなんだろう?「これは何?」「何だと思う?」

「黒酢の野菜あんを作ろうとしたんだけど、片栗粉がこぼれたから、ちょっと固まったのよ」

どおりで正体不明の黒いのがコロンと固まっていた。ふふふ、分かったよ。食べるよ。

味は?悪くはないけど、固まり過ぎてもっちりしている・・ふふふ。莉子と二人で笑った。
 
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