医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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509話 料理人誕生・2

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「あのう、実はこういう展開になるかなあと思いまして‥‥‥」

「なんだよ。早く言えよ」

「俺もそう思って、実は二人に頼んで、この前のメニューを作ってもらって父に食べさせたんですよ」

「はあ?問題が大きくなるだろう?」「実は・・ごめんなさい。大きくなっちゃいました」

「ええ??おい、夏!どうするんだよ!」

「父がいっぺんで気に入りまして、特にドレッシングを商品化したいというんですよ。父の会社は工業用だから食品に進出したかったんだけど、なかなかピタッとくるものがなかったんですって。
それで手始めに、このドレッシングを商品化して売りたいって言うんですよ。しかも菜の花クリニックの名前で!
一般にも売るけど、先にこの病院の中に小さい冷蔵庫を置いて売ったらどうだろうか?と言ってました。アンテナショップの意味合いもあるそうで、ヘルシーな手作りを売りにしたいんだそうです」

「えええ??、なんでそこまで話が大きくなるんだよ?」

「えへへへ、そうなんですよね。それでこのクリニックの近くに場所を探すから、そこで二人を正式に採用して、お弁当を作ってもらい、菜の花クリニックに配達をするというんですよ。
で、父の会社の食品部門も移動して、そこを子会社にして、二人にも協力してもらい、色々と商品開発をしていきたいそうです。俺もね、話が大きくなるなあとは思ったんですけどね。

でもこれだと、うちにリスクもないし、場所も要らないし、光熱費も要らない。マイナスなことは何もないんですよ。
で、あの二人がなんというか?・・なんですけど、ちょっと話してみたら面白そうだというんですよ。
第2の人生が開けるって言ってましたよ。
それにですよ、菜の花クリニックの名前が更に有名になるし、実はうちがオープンする時に病院名は商標登録しているんですよね。ただし、バッティングするところが全国でも多いから、菜の花の前に地名をつけたんですけどね。
まあ、それでも名前だけで収入になるじゃないですか?商標権がありますからね。
後続品だってうちの名前を付ければねえ、収入が増えていくわけなんですよ。
だからお掃除は新たに二名採用しますよ。あの二人は諦めてお弁当を作ってもらいましょうよ」

「はあ‥‥‥お前なあ‥‥‥、全く、なんて奴だ。もう・・商売がうますぎるだろう?」

それからは急転直下の展開だ。

あの創業者のお父さんだよ。抜かりはないよ。それもお弁当を食べてから2か月以内だよ。

うちの隣の物件を強引に買収して、どかせて、新たにリフォームをして新築みたいにおしゃれな店舗兼会社が出来た。
1階が店舗で、2階が倉庫と開発室で3階が会社だそうだ。もちろんエレベーターもあるよ。これって資本がないと出来ないことだよね?

うちのビルを新築で建てたばかりなのにさ、隣に新会社?あまりの桁違いさに俺は恐れ入るよ。

きっと夏はこういうことに慣れているんだろうなあ。さらっと話を決めてきちゃったもんね。

しかも先の展開まで読んじゃってさ。血は争えないな。凄いよ。

とにかく、隣はめちゃめちゃ垢ぬけていて、おしゃれな建物になった。高級品志向にしたらしい。

ヘルシーが売りだからね。素材にこだわれば値段も高くなるよね。

なんて凄いんだ! 俺も莉子も唖然としてしまった。これが本当の商売人か!!

もう商機を見逃さないすさまじさね。恐れ入るよ。

やっぱりうちの病院名を頭につけるわけだから、どうしても病院のそばでないと相乗効果が上がらないって言うんだよ。お父さんがだよ。俺も「はい」って言っちゃったよ。

夏を嫁にもらうってことは、お父さんにとって、俺は婿さんなんだよな。ここで初めて気がついたわ。(笑)

遅いよね。お父さんが病院を建てた段階で気が付くべきだったよ。

確かに夏の言うとおり、「損をすることなんて父に限っては絶対ない」って言ってたし、「必ず計算していますから」なんて言ってたな。あれは本当だったんだ。あははは、もう笑うしかない。

かくして、話題になったよ。なんのお店なの?って患者さん達も楽しみにしているらしい。

そこでさ、山科看護師長が患者さんに聞かれちゃうから、お弁当屋さんらしいですよ、なんて言ったんだよね。

まあ、うちの病院名が入っている以上は、宣伝しないとねと師長からも言われてさあ、「はい」だよ。

そして出来上がった店舗の看板がなんだと思う?「菜の花クリニック ヘルシーフードショップ」だよ。

ちょっと待ってくれー、これじゃあ、まるで俺が運営者みたいじゃないか。もろ、付属店になっているよ!

「いやいや、誰もそんなことは思わないから大丈夫だよ」なんてお父さんから言われてさ。また丸め込まれたよ。

はあ~婿さんはつらいよ。莉子がへらへら笑っていた。

俺はスタッフだけには言い訳をしておくよ。

隣は夏のお父さんの事業だからね。俺は関係ないんだよと言ったんだけどさ、「でもクリニックの名前が付いていますよねえ?」って言われてさあ‥‥‥もう俺、無理。 

俺はただの飼われている犬なんだよ。
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