医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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582話 名もなきイラストレーター

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 莉子がうまい具合に桃香のサインを夏に相談したらしい。

夏は急にやる気を出したのか、結局莉子が描いたサインに決まったらしい。

それをお父さんとRIKOカンパニーにファイルで送ると言っていたそうだ。

決まれば、それがキャラクターの絵の下に印刷され、ブランドのタグにも印刷されるそうだ。

こうなると、桃香のmomoというイラストレーターが誕生するのは、おそらく間違いないだろう。

なんだろうねえ?この思い付き⇒商品化⇒世界で販売の図式がすでに出来上がっているからな。

普通だったら、イラストをデザインしてもそれを売り込むのが大変だろうし、ましてや試作品もお金がかかるし、販売ルートだってせいぜい名もなきネットで細々としか売れないだろう。

それが我が家では思い付きだけで、世界に売り出せるルートがすでに出来上がっている。

幸せといえば幸せなんだけど、なんというか‥‥‥世に売り出したい人たちは大勢いるだろうにね。

子供の絵が可愛いからと言って、すぐに商品化できて販売できる。

反対するわけではないけれど、こんなに簡単に世に出ていいのかな。

全然苦労をしないで、人にやってもらって良いのだろうか?

それが桃香のためになるのかどうかはわからない。

別に苦労しろとは思わないけれど、どこかで世間を勉強するチャンスがあった方が、桃香の為になるような気がする。
まだ小学校の低学年だから、世間にデビューするには小さすぎるだろう?

でも俺の心配はよそに、どんどん話が進んじゃうんだろうなあ。

どこかで痛い目に合わなきゃいいけれど‥‥‥まあ、その時は大人が引き受ければいいんだけどさ。

翌日、桃香のサインのデザインを見せてもらった。

名前はmomoだ。そのmの文字の最初が像の鼻になっているかわいいものだった。

あとは、最後までアルファベットがつながっていて、oの文字にしっぽが付いているデザインになっている。

確かに、これだけですごくかわいい。これは莉子の才能だな。

まあ、俺は成り行きを見守るだけだよ。

親の仕事を見ていれば、子供も自然に覚えるものだ。

特に桃香は幼い時から莉子に絵を教わっている。

だからなるべくしてなったとも言える。

俺が心配するのをやめれば良いだけなんだよね、きっと。

ただ一つだけ注文を付けようと思う。

しばらくの間は、イラストレーターの詳細を伏せて欲しい。

やはり親が有名なだけに、子供がそれに乗っかってくれば、反感を抱く人も多いだろう。

それで駄目ならやめればいいんだからね。
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