医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘～い愛の物語

603話 花井先生・初仕事

　あれから1か月たった。とうとう花井和彦先生が来てくれた。

無事に大学病院を辞められたようだ。大変だっただろうなあ。

朝礼で初めてスタッフに紹介する。皆のワクワク感と期待する視線がすごいな。

俺が声を出す前に、看護師長が「せーの」と声を掛けると、

「ようこそ、菜の花クリニックへ」と皆で声を揃えて大拍手になった！！

これには俺も花井先生も笑ってしまい、笑顔で照れまくりだった。

「お早うございます。皆さんに花井和彦先生をご紹介できることをうれしく思います。では先生からどうぞ」

「お早うございます。大学病院から来ました消化器内科専門医の花井和彦です。32歳です。あと1か月ほど遅れて妻の恵美もこちらでお世話になることになりました。まだ子供が4か月なので、急にお休みをすることがあるかもしれませんが、どうぞ温かい目で見ていただけるとうれしいです。北原先生は大学病院でもみんなの憧れの存在なので、ご一緒させていただけることを光栄に思っています。今後ともどうぞよろしくお願いします」

「わあ、褒めていただきました！（爆笑）ではそういうことで、皆さんも色々とフォローしてあげてください。今後は恵美先生もお迎えするので、不自由のないようにクリニック内の工事も入ります。また慌ただしくなると思いますが、助け合っていきましょう。よろしくお願いします」

「あと、皆さん自己紹介を花井先生にしてください。手前から順番にしましょうか？どうぞ」

それから各自自己紹介をしてくれた。

一度には覚えられないだろうけど、お互いに笑顔でいっぱいだった。

診療室は患者さんの利便性を考えて、一番患者さんが多い消化器内科を待合室から一番近い手前にした。

ドアの横には、＜消化器内科専門医　花井和彦＞のネームプレートもかけた。

その奥が今まで通り外科だ。俺は隔離室だ。

狭いのでカルテは自分で入力する。

今後は内科と新患は全部花井先生に回してもらう。

それにしてもなんという清々しいまでの解放感だろう。素敵だ。

初日はクリニック内のシステムについて、看護師長に説明を任せた。

インカムも初めてだろうから驚いているかもしれない。

レストランと変わらないからさ。笑う

「看護師長は怖くないから大丈夫だよ」花井先生がニターとした。

さて、今日の患者数は120名プラス緊急でお願いします。

13時から皆で食事に入れると良いね。

花井先生のお弁当も頼まれているからさ。

夜の分も欲しいってさ。愛妻家だねえ。(笑)

花井先生のテンポがまだわからないから、今日は様子を見ようと思う。

もっと増やせるなら頼みたいしね。

夏は上で事務仕事だ。2階から4階に移動したばかりだし、まだ終わっていないことが色々あるらしい。

少しレイアウトを変えると言っていた。

休憩室が狭いから、男性たちは2階で食事ができるように変えるんだって。

冷蔵庫と電子レンジに電気ポットも並べてあった。

こんなのあったか？　まあ、元々ゲスト用にミニキッチンもあったからさ。好きにやってくれ。

万が一、工事が遅れるようなら、2階で俺が診療するからさ。

変更は全部任せたんだ。これも立派な左うちわだよ。