医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

文字の大きさ
779 / 996

782話 アニメ&撮影スタッフ

しおりを挟む
 水曜日になった。今日は院内ルームツアーの撮影日だ。

室内を360度撮影するそうだが、今日は休診日。

この日は莉子も俺と一緒に見学だ。

時間には余裕があるとはいえ、さすがに一日で全部は無理だろう、と思っていた。

――ところが、当日になってどやどやと助っ人がやって来た。

360度撮影可能なカメラも、何台も運び込まれてきた。

聞けば、社長のお父さんに頼んで、いつも撮影をお願いしているプロに一括で依頼したらしい。

病院の間取りや施設資料も、お父さんが準備して渡してくれたとのこと。

へえ~……。

夏がひとりで汗だくになって頑張るのかと思っていたら、あっさり予想は裏切られた。

現場を見ていると、「どこにカメラを設置するか」といった細かい指示も夏が出しているのかと思いきや、なーんにもしていない。

全部カメラマンにお任せで、趣旨だけ伝えてこう言ったらしい。



……内心、笑った。やっぱりねえ。お大臣の息子は、やることが違う。

俺はヘラヘラと笑ってしまった。

さて、この調子だと、土曜の撮影にもこの人たちを連れてくるのか?

さあ、見物だな。

撮影は午前中に終わり、スタッフにお弁当が出た。

みんなで休憩室に集まって食べていたところへ、アニメーション制作の関係者がやって来た。

ああ~なるほど、午前と午後で分けたんだ。

それぞれに打ち合わせが必要だと言うことだね。

ふ~ん、やっぱり俺は素人だな。

とりあえず、俺は莉子と一緒にお弁当を食べた。

莉子が「なんだかすごいね! どんなのが出来るのか楽しみだねえ~」とお気楽なことを言っていた。


一緒にお弁当を食べてもらったあと、撮影したばかりのルームツアーの映像を見た上で、アニメーション関係者たちは全館を見学した。

各フロアのスタッフ数を確認しながら、「どの場面でどの人物をどう動かすか?」といった打ち合わせを夏としていた。

特にリハビリステーションでは、実際にスタッフがリハビリ用具を動かしている場面の動画を撮っていた。

――なるほど、アニメの動き、ね。

地下では送迎バスのドアを開け、誰かが実際に乗り込んで椅子に座るところまでを撮影。

そのほかにも、1階の待合室や順番モニター、自動精算機の映像、さらに売店兼カフェやメニュー表も丁寧に録画していた。

カフェでは実際に注文して、ランチやお弁当なども土曜日に撮影するのだそうだ。へえ~。

その後は、2階、3階、4階と順に撮影。4階では、夏がいろいろな検査機器について説明していた。

健康診断ではレントゲン撮影があるから、2階のレントゲン施設も健康診断のコースに入れてくれるように頼んでいた。

まあ、健康診断のコースの資料は、事前に渡しているそうだから大丈夫だろう。

最後の5階では、個室やスイートルームに加え、リビングやキッチン、ダイニング、冷蔵庫、シャワールームなど、

細かい部分までしっかりと収録していた。

――アニメを作るって、大変なんだな。

莉子も俺と一緒に、スタッフの邪魔にならないように見物して回った。

素材をそろえるだけでも、こんなにやることがあるんだ。なるほどね。

これは確かに、夏ひとりじゃできないわけだよ。よくわかった。

さあ、今日はプロの手で下地がしっかり整った。

あとは土曜日の――スタッフの撮影だな。さて、どうなることか?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...