医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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824話 スマートな伝え方

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 桐生くんから「引っ越しが終わりました」と連絡が来た。

クリニックから車で10分のマンションだそうだ。

社員としての手続きがあるので、クリニックに立ち寄ってもらった。

さっそく夏が自慢げに秘書室へ案内する。

ドアの横には、高級感あふれる<秘書室 桐生>の金文字のプレートが取り付けられていた。

俺たちと同じ仕様のプレートだ。

「ええっ?? ……これは……」と、言葉が出ない様子(笑)

あまりにも驚いたようだ。

大型のデスクトップパソコンとノートパソコンの2台。加えてタブレットまで用意されていた。

夏は引き出しに文具類もそろえておいたそうだ。

大型パソコンはゲーム制作にも対応できる仕様とのこと。

ふ~ん、すごいなあ。

「こんなにしていただいていいんですか?」

夏は笑顔で、

「いいんですよ。父も桐生さんに期待して、ここを作ってくれました。これからうんと頑張ってくださいね」

なんて言っていた(笑)

お父さんの力はやっぱり偉大だ。

桐生君にも、きっとその期待と熱意が伝わったと思う。

そう考えると、これは“最高の伝え方”だよな。

「これから息子とクリニックをよろしく頼むよ」っていう、無言のメッセージ。

こういうやり方――本当にスマートだ。

好きだな……あのお父さん。


* * *


朝礼の時間。彼をみんなに紹介しないと。

一緒に朝礼に出ると――案の定、めちゃめちゃ騒がしくなった(笑)

「おはようございます。今日はうれしいお知らせがあります。浅田理事に秘書が付きました! では、自己紹介をどうぞ」

壇上を代わると、やっぱり背が高い。185cmだもんな、ふふふ。

「おはようございます。桐生悠と申します。この度こちらでお世話になることになりました。皆さんのことは、ずっとインスタで拝見していたので、とても“初めて”だとは思えません。皆さんの一員として働けること、大変光栄に思っています。いろいろ分からないことも多いと思いますが、ご指導のほど、よろしくお願い致します」

会場は、わーっと拍手と歓声に包まれた。

ピューピューと口笛まで鳴ってるんですけど? ぷっ、誰だ(笑)

ここまで歓迎される新人も珍しいな。笑っちゃうよ。

「簡単にご紹介しますと、桐生さんは元・大手ゲーム会社でプロダクトマネージャーをされていて、専門はIP管理、リスクマネジメント、海外のエンタメ契約全般です。これは非常に心強い戦力です。

浅田理事は現在、クリニックの運営に加え、莉子の個人会社、理事個人の会社、RIKOカンパニーの仕事、さらにゲームのプロデュースや海外との取引まで抱えており、とても診療まで手が回らない状況になっています。

ですので、その業務を大きくサポートしてもらえる存在として、期待しています。

理事の健康面を心配する声もありましたので、桐生さんの加入で少しでも負担が軽減されることを願っています。

皆さんも、ぜひ協力してあげてくださいね。よろしくお願いします。

ちなみに、秘書室は7階です。エレベーターを出たすぐ左手にあります。

それではみなさん、今日もがんばりましょう。解散!」

ニコニコしながら、女性スタッフたちは一礼しつつ、桐生くんの前を通っていく。

興味津々なのがバレバレだ。

ほんと、うちのスタッフは正直で可愛いよ。笑える。
 
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