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835話 実業家の考え
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翌日、桐生君はさっそくアニメプラスの経過と、アプリ作りについて報告したようだ。
そして必要な人材をまとめ、夏はそのまま実家に帰ったという。
お父さんはまたまた「福の神がどうしたって?」と大喜びだったそうだ。
ふっ、まったくなんだよ。本当に商売が好きなんだなあ。
桐生さんの希望する人材を、すべて認めたらしい。
それからクリニックのほうでは、ナースを10名、看護助手を3名、掃除スタッフを3名、新たに採用したことも伝えたという。
──それだけではなかった。
「夏輝、もうお前は診療をやめたらどうだ? もっと忙しいことがあるだろう?」
そう言われたと聞いて、俺は思わず「はっ??」と反応した。
今までの俺や夏の、11年間の苦労は何のためだったんだ?
「それで、何と答えたの?」と、俺は真顔で尋ねた。
「外科の修業も始めたばかりだし、勘が鈍るから辞めるつもりはないですよ。ただ、医者をもう一人採用しろって言われたんです。健康診断を専任でやってくれる人を探せって。
それと、お兄さんに心療内科を週3回やってもらってるなら、それだけにして、全体を見る仕事に集中した方がいいって言われました。
俺が抜けてアニメプラスや莉子の仕事を進めた方が、全体としてプラスになるっていうんですよ」
「ふ~ん……そうなんだ」
正直、その思考回路は俺にはよく分からなかった。
それが本当に、全体のプラスになるのか?
けれど、大実業家のお父さんの思考に間違いはないはずだ。
今は分からなくても、いつか理解できる日が来るのだろう。
「うん、わかったよ。そうしよう。お父さんの言うことに間違いはない。信じる。
じゃあ医師をもう一人採用しよう。医局の会議で社長の意向をみんなに伝えて、理解してもらおう」
夏はすぐに人材募集を始めた。
医師を1名。
アニメプラスでは、アプリを開発するSEを2名、ウェブデザイナーを1名、アニメーターを2名。
アニメ関係は、桐生さんが知り合いに声をかけてくれているらしい。
人材の年収は、桐生さんに任せるという。相手次第でいかようにも──というのが、お父さんの考えだ。
つまり、完全に任せるということだ。
良い人材なら利益を生む分、年収も高くなるだろう。
でも、それでも構わない。任せると言ってくれたそうだ。
まあ、桐生さんもアニメプラスの社長なんだから、必死で考えるだろう。実力のある人だ。
そうなると、確かにクリニックで夏が「秘書が欲しい」と言っていた仕事は、だんだん浮いてくるね。
ふっ、手が空いたら俺がやるかな?
それでもいいよ。
夏と桐生さんに比べたら、断然俺のほうが暇になるからな。
多分、お父さんの思考ではそうなることが目に見えていたんだろう。笑うしかないよ。
今頃になって、お父さんの考えが分かってきた……。
確かにそのほうが、クリニックのためになるんだな。
いまは患者が増え続けていて、収支も大きな黒字だ。
いまさら医師を1名増やしたところで、何の問題もない。
このクリニックは、事業家のお父さんにとって“ただの事業のひとつ”にすぎない。
このクリニックだけが繁盛すればいいとは、まったく考えていない。
その周囲も一緒に発展していけば、基盤も大きくなっていく。
なるほどね。全体を見て、プラスの方向へ……またお父さんに教わったな。
とりあえず、医師が入ったら診療体制を大幅に変えないといけない。
俺は、その青写真をしっかり描いておこう。
そして必要な人材をまとめ、夏はそのまま実家に帰ったという。
お父さんはまたまた「福の神がどうしたって?」と大喜びだったそうだ。
ふっ、まったくなんだよ。本当に商売が好きなんだなあ。
桐生さんの希望する人材を、すべて認めたらしい。
それからクリニックのほうでは、ナースを10名、看護助手を3名、掃除スタッフを3名、新たに採用したことも伝えたという。
──それだけではなかった。
「夏輝、もうお前は診療をやめたらどうだ? もっと忙しいことがあるだろう?」
そう言われたと聞いて、俺は思わず「はっ??」と反応した。
今までの俺や夏の、11年間の苦労は何のためだったんだ?
「それで、何と答えたの?」と、俺は真顔で尋ねた。
「外科の修業も始めたばかりだし、勘が鈍るから辞めるつもりはないですよ。ただ、医者をもう一人採用しろって言われたんです。健康診断を専任でやってくれる人を探せって。
それと、お兄さんに心療内科を週3回やってもらってるなら、それだけにして、全体を見る仕事に集中した方がいいって言われました。
俺が抜けてアニメプラスや莉子の仕事を進めた方が、全体としてプラスになるっていうんですよ」
「ふ~ん……そうなんだ」
正直、その思考回路は俺にはよく分からなかった。
それが本当に、全体のプラスになるのか?
けれど、大実業家のお父さんの思考に間違いはないはずだ。
今は分からなくても、いつか理解できる日が来るのだろう。
「うん、わかったよ。そうしよう。お父さんの言うことに間違いはない。信じる。
じゃあ医師をもう一人採用しよう。医局の会議で社長の意向をみんなに伝えて、理解してもらおう」
夏はすぐに人材募集を始めた。
医師を1名。
アニメプラスでは、アプリを開発するSEを2名、ウェブデザイナーを1名、アニメーターを2名。
アニメ関係は、桐生さんが知り合いに声をかけてくれているらしい。
人材の年収は、桐生さんに任せるという。相手次第でいかようにも──というのが、お父さんの考えだ。
つまり、完全に任せるということだ。
良い人材なら利益を生む分、年収も高くなるだろう。
でも、それでも構わない。任せると言ってくれたそうだ。
まあ、桐生さんもアニメプラスの社長なんだから、必死で考えるだろう。実力のある人だ。
そうなると、確かにクリニックで夏が「秘書が欲しい」と言っていた仕事は、だんだん浮いてくるね。
ふっ、手が空いたら俺がやるかな?
それでもいいよ。
夏と桐生さんに比べたら、断然俺のほうが暇になるからな。
多分、お父さんの思考ではそうなることが目に見えていたんだろう。笑うしかないよ。
今頃になって、お父さんの考えが分かってきた……。
確かにそのほうが、クリニックのためになるんだな。
いまは患者が増え続けていて、収支も大きな黒字だ。
いまさら医師を1名増やしたところで、何の問題もない。
このクリニックは、事業家のお父さんにとって“ただの事業のひとつ”にすぎない。
このクリニックだけが繁盛すればいいとは、まったく考えていない。
その周囲も一緒に発展していけば、基盤も大きくなっていく。
なるほどね。全体を見て、プラスの方向へ……またお父さんに教わったな。
とりあえず、医師が入ったら診療体制を大幅に変えないといけない。
俺は、その青写真をしっかり描いておこう。
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