医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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860話 リフォーム工事

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 お父さんに相談した翌日には、もう建築事務所から設計士や施工会社の人が4人でやって来た。

クリニック内をすべて見学してもらったんだけど……初期と比べて、診療科目も医師もずいぶん増えていたので、みんな唖然としていた。内心、ちょっと笑った。

なんとも申し訳ない。こっちも、まさかこうなるとは思ってなかったんだけどね。

なんせオープンした当初は、将来診療科が増えてもいいようにと、診察室を余分に2つも用意してたんだよ。

それなのに、まだ建って1年も経ってないのに、その余裕がまったくなくなってしまった。

増えた医師たちでとっくに埋まっちゃって、もう新たに診察室を作る余地もない。

そんななか、今度は内視鏡室まで増やすことになって――さて、どこにしわ寄せするかっていうのが悩みのタネだった。

皆さんのあいだでは、「ああでもない、こうでもない」と厳しめの意見が飛び交う。

夏と桐生さんと俺は、ただ顔を見合わせるばかりで、申し訳なさから苦笑いしか出なかった。

でも、だからといって、お父さんにはこれ以上大きな病院は建てないでほしいなと強く思う。

……それだけは勘弁してほしい。

とにかく、判断は建築士の皆さんに任せて、俺たちは一抜けした。

だって、正直、分からないんだもん。


* * *


喧々諤々の話し合いも、なんとかまとまったようだ。

結局、4階の一番奥にある心療内科の診察室を、内視鏡の検査室に作り替えることになった。

とりあえず、これで4階には検査機器が並ぶことになる。

廊下にもロッカーがずらっと並んでるし、ベンチも置かれているから、最初の広々とした感じはすっかり薄れてしまった。

3階には、心療内科、循環器内科、健康診断科、代謝内科、皮膚科、フットケア科が並ぶ。

そして2階の循環器内科だったスペースは、消化器内科の新たな診察室になる。

4階と3階のリフォーム工期は、合わせて10日間だそうだ。


* * *


なんだか色々と気ぜわしくて、こっちもすっかり疲れてしまった。

帰宅すると、莉子がダイニングでデッサンを描いていた。

夏はまだ帰っていなかった。

「莉子、ご飯は食べたの?」

「うん、桃香と食べたよ。お茶淹れてあげようか?」

「そう?悪いね。お茶を淹れてもらったお返しはしなくていいの?」

「うん?ふふっ、分からないよ~。してもいいけど?」

「ははっ、どんなお返しがいいの?」

「今から考えるよ。あっ、そうだ!ねえ、お願いがあるんだけどなぁ~」

「なに?……怖いけど……」

「春ちゃんの顔、デッサンしてリトグラフにして売ってもいいかな~?」

「ふっ、いいよ。どうせ、バラバラに分解した顔なんだろ?大学祭の時みたいにさ」

「あら~、やだ~、根に持ってるじゃん。あれはすごく素敵だったと思うよ」

「じゃあ、今から描くよ。思いっきりハンサムには描いてあげるね」

莉子は俺の顔を見ながら、デッサンを始めた。

こんなにじっと見つめられるのは、なかなかない経験だ。

俺は気にせず、お弁当をパクパク食べていた。

まさか、食べてるところを描いてるのか……?

まあ、変に期待すると裏切られるからな。経験済みだ。

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