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902話 夏輝サイド・お兄さんからのプロポーズ
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「そうだ、なんで医者になったんだ?どのタイミングだったんだ?」
「うん、莉子が退院してマンションに戻った頃から、俺も医者になりたいって本気で思うようになったんだ。
それで夏休みに大学を辞めて、医学部を受験し直すことに決めた。昼は家事や莉子の面倒を見て、お兄さんのお見舞いに莉子を連れて行って買い物をして帰るって毎日だったんだ。
夜は塾に通って受験勉強を始めたんだけど、そのうち、お兄さんが退院できたから、俺は実家に戻って、昼の塾に変更して――“合格するまでは来ない”って宣言して、勉強に集中したんだ」
「えぇ~待ってくれよ。だって文系の学部だったんだろ?それで医学部?医学部なんて、トップ中のトップしか入れないって!」
「まぁね。でも頑張ったんだ。俺はお兄さんが卒業した医大に入りたくて、難関だったんだけど、なぜか出題されたところが塾でやった内容ばかりでさ。運よく奇跡的に合格したんだ。…でもビリだったけどね」
「ビリでもすげぇわ。でもよく留年しなかったな?」
「入ってからが地獄だったよ。マジで絶体絶命って感じ。周りが優秀すぎて歯が立たない。
詰んで、高熱で倒れてちゃってさ、それで母に頼んで、お兄さんに迎えに来て欲しいって連絡してもらったんだ」
「で、迎えに来てくれて治療してくれたんだけど、その後、莉子とお兄さんが俺の実家に挨拶に行くって言うからさ。
てっきり“縁を切りたい”って言われると思って覚悟してたんだけど――
二人が“俺をください”って両親にお願いしてくれたんだよ。
お兄さんは“俺が面倒を見て、一生責任を取ります。学費も出します”って言ってくれて。
“法律的には何もできないけど、責任を持って医者にします。嫁としてください”って。
“家族としてみんなで仲良く暮らしていきます”って――言ってくれたんだ」
「はぁ~~~……俺もうダメ。涙が出る。なんだよそれ、現実とは思えない」
「こういう話をぶっちゃけたのは、KAIが初めてなんだ。他には誰にも話してない。兄弟にも言ってない。まぁ仲悪いし、教えなくてもいいんだけどさ」
「ドラマみたいな話だな…。本にしたらいいのに」
「でもさ、現実離れしすぎて誰も信じないと思うよ。でもクリニックの人たちは、なんとなくわかってくれてるみたいで、口には出さないけど認めてくれてる。
きっと莉子が芸術家だから“超越した人”って見られてるんだ。みんな莉子を敬意の眼差しで見てる。俺は感じるよ。本当に尊敬されてる」
「俺ももう、莉子さん尊敬してるわ。そんなに心の広い人がいるなんて…でも、お前も相当頑張ったよ。十分じゃないか?」
「いや、尽くしたなんて思ってないよ。やりたいことをやっただけ。尽くしてくれたのは、お兄さんだ。
俺さ、医大に入ったはいいけど、授業についていけなくてさ。
お兄さんは毎晩仕事で疲れてるのに、何時間も俺の勉強を見てくれた。それが6年だよ。6年間!
お兄さんは“責任”を本気で果たしてくれた。だからようやく医者になれたんだ」
「それで、親が感激して“クリニックを作ろう”って言って建てたのが今の建物。だけどすぐに繁盛して1年で手狭になって、隣に今の7階建てのクリニックを建て直したんだ。
で、今は賃貸契約でお兄さんが借りてるってことになってて、俺は社長から派遣された理事として、病院の実質的な運営をしてるんだ。
――以上だ、長かっただろ?」
「いや~すごい話だった…。来てよかった!夏、俺と友達になってくれよ。こんな熱いヤツ、滅多にいない」
「いいよ。俺も嬉しい。外部の人と知り合う機会って、ほとんどないから。きっとお兄さんも、そう思ってたと思うよ。俺こそ友達になってくれたら嬉しい」
「今度はKAIの話を聞かせてよ」
「ああ、いいよ」
「うん、莉子が退院してマンションに戻った頃から、俺も医者になりたいって本気で思うようになったんだ。
それで夏休みに大学を辞めて、医学部を受験し直すことに決めた。昼は家事や莉子の面倒を見て、お兄さんのお見舞いに莉子を連れて行って買い物をして帰るって毎日だったんだ。
夜は塾に通って受験勉強を始めたんだけど、そのうち、お兄さんが退院できたから、俺は実家に戻って、昼の塾に変更して――“合格するまでは来ない”って宣言して、勉強に集中したんだ」
「えぇ~待ってくれよ。だって文系の学部だったんだろ?それで医学部?医学部なんて、トップ中のトップしか入れないって!」
「まぁね。でも頑張ったんだ。俺はお兄さんが卒業した医大に入りたくて、難関だったんだけど、なぜか出題されたところが塾でやった内容ばかりでさ。運よく奇跡的に合格したんだ。…でもビリだったけどね」
「ビリでもすげぇわ。でもよく留年しなかったな?」
「入ってからが地獄だったよ。マジで絶体絶命って感じ。周りが優秀すぎて歯が立たない。
詰んで、高熱で倒れてちゃってさ、それで母に頼んで、お兄さんに迎えに来て欲しいって連絡してもらったんだ」
「で、迎えに来てくれて治療してくれたんだけど、その後、莉子とお兄さんが俺の実家に挨拶に行くって言うからさ。
てっきり“縁を切りたい”って言われると思って覚悟してたんだけど――
二人が“俺をください”って両親にお願いしてくれたんだよ。
お兄さんは“俺が面倒を見て、一生責任を取ります。学費も出します”って言ってくれて。
“法律的には何もできないけど、責任を持って医者にします。嫁としてください”って。
“家族としてみんなで仲良く暮らしていきます”って――言ってくれたんだ」
「はぁ~~~……俺もうダメ。涙が出る。なんだよそれ、現実とは思えない」
「こういう話をぶっちゃけたのは、KAIが初めてなんだ。他には誰にも話してない。兄弟にも言ってない。まぁ仲悪いし、教えなくてもいいんだけどさ」
「ドラマみたいな話だな…。本にしたらいいのに」
「でもさ、現実離れしすぎて誰も信じないと思うよ。でもクリニックの人たちは、なんとなくわかってくれてるみたいで、口には出さないけど認めてくれてる。
きっと莉子が芸術家だから“超越した人”って見られてるんだ。みんな莉子を敬意の眼差しで見てる。俺は感じるよ。本当に尊敬されてる」
「俺ももう、莉子さん尊敬してるわ。そんなに心の広い人がいるなんて…でも、お前も相当頑張ったよ。十分じゃないか?」
「いや、尽くしたなんて思ってないよ。やりたいことをやっただけ。尽くしてくれたのは、お兄さんだ。
俺さ、医大に入ったはいいけど、授業についていけなくてさ。
お兄さんは毎晩仕事で疲れてるのに、何時間も俺の勉強を見てくれた。それが6年だよ。6年間!
お兄さんは“責任”を本気で果たしてくれた。だからようやく医者になれたんだ」
「それで、親が感激して“クリニックを作ろう”って言って建てたのが今の建物。だけどすぐに繁盛して1年で手狭になって、隣に今の7階建てのクリニックを建て直したんだ。
で、今は賃貸契約でお兄さんが借りてるってことになってて、俺は社長から派遣された理事として、病院の実質的な運営をしてるんだ。
――以上だ、長かっただろ?」
「いや~すごい話だった…。来てよかった!夏、俺と友達になってくれよ。こんな熱いヤツ、滅多にいない」
「いいよ。俺も嬉しい。外部の人と知り合う機会って、ほとんどないから。きっとお兄さんも、そう思ってたと思うよ。俺こそ友達になってくれたら嬉しい」
「今度はKAIの話を聞かせてよ」
「ああ、いいよ」
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