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歩いてる時にレスキィに尋ねられる。
「あの、自分気になったんですが」
「なんだ?」
俺は聞き返す。
「偽物を退治するのが旅の目的なんですよね」
「俺はな、他の奴は知らんが」
「残りってどのくらいなのかなって」
「ん?」
「あ、ほら、残りの人数が分かれば後はこれぐらいだーって、終わりが見えるから頑張りやすいって思えるかなぁー・・・って」
「俺は分からん」
俺は断言する。
「ですよね・・・あはは・・・」
レスキィは苦笑する。
「そのために向かってる」
「どういうことでしょう?」
レスキィは不思議そうな顔をする。
「あぁ、なるほどね」
ギルシュバインは納得する。
「え、え?」
レスキィだけが困惑する。
「秘密だ」
「えーーっ、ずるいです。二人だけで森がってるじゃないですか!」
レスキィはぷんすかだった。
「行けばわかるよ」
俺はそう伝える。
そうして歩く、そして、辿り着く。
ついた先はダークな街並みだった。
「暗いですねぇ、昼間ぐらいの筈なのに」
レスキィはそんな感想を漏らす。
「ここは1日中暗い街なんだよ」
「へぇ、不思議です」
「明るいのが嫌いな奴には過ごしやすい所なんだ」
橋が架かってるのだが、少しでも足を外せば下に落下しそうだった。
底が見えず、どれほどの深さなのか想像できない。
「それで、こんな場所に何の用でしょうか?」
「とりあえず、行ってみるか」
俺たちはある場所へと向かう。
そこは占いの館と書かれた場所だった。
アパートのような場所で、なんだか庶民的だった。
「ここ・・・ですか?」
「入るぞ」
俺はベルを鳴らす。
「空いてます、どうぞ」
中から女性の声がする。
「だとさ、行くぞ」
俺は中に入る。
「えっと、お邪魔します」
レスキィはおっかなびっくりという感じで入る。
「お邪魔します」
ギルシュバインは普通に入った。
「げっ」
そこに居たのは、俺の事を監禁していたナバナという男だった。
「どうしてお前がここに」
俺は不思議に思う。
「べ、別にいいじゃないですか。
悩み相談ですよ、悩み相談!」
「悩み相談ねぇ」
俺はニヤリと笑う。
「別に変な意味はないですから、ただ単に相談しに来ただけです!」
ナバナは顔を真っ赤にする。
「別に俺も変な意味があると思ってないぜ」
「嘘言わないでください、そのにやけた面は明らかに思惑があるでしょう!」
「それはお前の中にやましいことがあるからじゃないのぉ?」
「もういいです!」
ナバナは怒って出ていく。
「いいんでしょうか」
レスキィは心配そうにする。
「まぁ、大丈夫だろう。
それよりも、久しぶりだな、ルル」
「はぁ・・・あんた達か」
面倒くさそうに返事する人がそこに居た。
魔女っぽい恰好をしてる大人な女性だと思えた。
「会いに来たぜ」
「アンタたちが来ると商売困るんだよね。
無料で見ろって言うんだから、本当に困ったものだ」
「いいだろ、友達料金だ」
「はぁ、友達なら払ってくれよ全く」
ルルはため息を吐く。
「あの・・・この方は」
「あぁ、かつて勇者の仲間の1人だったメンバーの未来視ルル」
ギルシュバインが説明する。
「あーーーっ、大ファンです。大ファン!
握手いいですか?サインいいですか?投げキッス貰えますか?」
レスキィはテンションが上がる。
「誰、この子?」
ルルは引いていた。
「勇者に憧れてるらしい、レスキィって子だ」
俺はそう説明する。
「ファンです!」
レスキィの目がキラキラしていた。
「なるほど、そういうこと」
ルルは納得したようだ。
「ファンの期待を裏切らない方がいいと思うぜ?」
俺はルルにそんなことを言う。
「あー、分かってますよ、はいはい。
ほら、サイン書いてあげるから」
「顔に書いてください!」
「顔って・・・服とかじゃなくていいの?」
「いいんです、鏡とか見るときに毎回幸せな気分になれるので!」
「風呂はどうするのよ、顔を洗うでしょ。
落ちるじゃない」
「入らないです、風呂キャンセルです!」
「あ、そう」
ルルはちょっと面倒な人が来たなという顔をするものの、一応はファンサービスとして顔にサインを書いていた。
「ありがとうございます!」
レスキィは喜んでいた。
「まぁ、喜んでるし、いいか」
ルルは諦めた。
「悪いが、次は俺の用事だ」
「本当にいつもあんたってそうよね。
友達づきあいは悪い癖に、ふらっと来てはうちを頼る。頼って欲しいなら普段から会って欲しいんだけど?」
「悪いと思ってる、だが、頼む」
「はぁ・・・うちもバカな女よね。
勘違いしないでね、これは別にあんたのことが好きとかそういうんじゃなくて、うちが優しいだけだから」
「分かってる、頼むよ」
「はいはい・・・」
ルルは水晶に魔力を込める。
すると、ぼうと小さな光が浮かび上がる。
まるで、水晶の中で小さな宇宙が出来上がってるように見えた。小さな光が星々に見えたからだ。
「綺麗です・・・でも・・・これは?」
レスキィは不思議そうな顔をする。
「・・・」
ちらと俺の方を見る。
「彼女はもう知ってる、隠す必要はない」
俺はルルに伝える。
「そう・・・それじゃ言うけど・・・これは命の輝きってところかしら」
「命の・・・輝き?」
「そう、確かレスキィって言ったかしら」
「はい、自分はレスキィです」
「人にはそれぞれ魔力が存在する。
それは別の言い方をするならば命の輝きとも言える」
「なるほど?」
「そして、この輝きはある1人の女性を表してる。
不思議よね、1人の女性であるにも関わらず、複数の輝きを放ってるのだから」
「あっ」
レスキィは何かに気づいたようだ。
「そう、貴方も想像ついたでしょうけど、改めてハッキリ言うわ、これはエナトリアの輝きよ」
「エナトリアさんの・・・でも輝きの数が少ないような気が・・・」
「そう・・・少なくなってる・・・誰かが減らしてるのよ・・・ねぇ・・・クルバス?」
「・・・」
この女、気づいてるか。
賢い女は必要なことにも気づくが、
気づいて欲しくないことにも気づくのが賢い女の嫌な所だ。
「それじゃ、もしかして」
レスキィは期待のまなざしを向ける。
「終わりが近い」
ルルは告げる。
「クルバスさん!」
レスキィはキラキラした目で俺の方を見る。
「そうか・・・終わりが近いか」
俺も報われるような思いを感じる。
それと同時に、もしも残ってる奴らが全て偽物だったらという不安も感じるのだった。
「これで希望が見えてきましたね!」
レスキィは嬉しそうだった。
「良かったな、クルバス。
これで君の戦いは無駄ではなかったと世界は認めてくれるだろうさ」
ギルシュバインも喜んでいた。
「あぁ・・・」
けれど2人の喜びとは違い、俺は素直に喜べなかったが。
「クルバスさんは嬉しくないですか?」
レスキィが不安そうに聞いてくる。
「最後の最後まで気が抜けないだけさ。
終わりが近いからといって、気を緩めたらエナトリアに殺されるかもしれないからな」
「さすが、クルバスさんです。
自分はそこまで気が回りませんでした!」
レスキィは子分みたいな言い回しをする。
「泊る所、無いんでしょ。
せっかく来たんだし、うちに泊まりなよ」
「俺は良い、何処かホテルでも探して・・・」
「と・ま・れ!」
ルルに睨まれる。
「何で睨むんだよ」
「占ってもらって、はい、終わり?
そんなやり捨てみたいなことしないでよ」
「表現が悪いぞ」
「泊りなって、話したいこともあるしさ」
「はぁ・・・分かったよ」
俺はルルの好意に甘えて泊まることにした。
占いの館が実質、彼女の家でもあるので、部屋はすぐ後ろだった。
「ここが、ルルさんのお家ですか」
「おー・・・」
ギルシュバインが辺りを見渡す。
部屋は女の子らしく可愛い感じではなく、
テーブルに座布団というシンプルなものだった。
家具はとくに無し。
部屋は綺麗にしてあると思える。
「綺麗にしてるんだな」
俺はそんな感想を漏らす。
「勘違いしないでね、いつでも友達が来てもいいように部屋を綺麗にしてるとか、そういうんじゃないからね!」
「分かってるよ、ルル」
俺は伝える。
「本当に分かってるのかしら・・・」
ルルはぎゅっと帽子のつばを手で押さえて顔を隠す。
「よっこらせ」
俺は人の家で寝る。
「ちょっと、人の家なんですけど!」
ルルが怒る。
「人の家だから緊張するなぁ」
ギルシュバインは正座で大人しく座る。
彼の礼儀正しい一面が見える。
「ギルみたいに、礼儀正しくできないのかしら。
全く・・・そういえば腹減ってない?」
「減ってる、何か作ってくれるのか?」
俺は寝ながら声をかける。
「あの、何か手伝いましょうか?」
レスキィは手伝いを申し出る。
彼女の優しさが見える台詞だろう。
「大丈夫、今は便利な世の中だから」
「ほぇ?」
レスキィは不思議そうな顔をする。
すると、いきなりドンドンと扉がノックされる。
「来た来た」
「どうも、出前です」
配達員のお兄さんがやってくる。
「どうも~」
ルルは手を振って彼を見送った。
「何を頼んだんだ?」
俺は尋ねる。
「定期的にピザを頼んでるのよ、
それで配達もしてもらえるようになったんだから。
便利よねぇ、今の時代」
「おぉ」
俺は感動する。
「皆来ると思って、頼んだのよ」
ルルはふふんと得意げだった。
「開けてもいいか?」
俺はルルに尋ねる。
「えぇ、どうぞ」
ルルに許可を貰ったので俺は蓋を開ける。
すると、そこには美味しそうなピザがあった。
「いただきます」
口の中でさわやかなトマトの酸味と、
チーズのトロッとした塩味が合わさってコクを感じて美味いと思えた。
「見てください、これ、伸びます!」
レスキィはピザを初めて見たのか、
ピザを2切れ持って間にチーズの橋を作っていた。
「凄いでしょ」
ルルはレスキィを微笑ましそうな顔で見る。
「はい、こんなの自分の村では見たことないです!」
「8切れだから・・・1人2つ分って所だろうか」
ギルシュバインはぶつぶつ呟く。
「要らないの?じゃ、俺もらうわ」
俺は3切れ目を食べる。
「あーーーーーっ!」
ギルシュバインは絶叫する。
「ん?」
俺は何でギルシュバインが叫んだのか理解できずにピザをむしゃむしゃと食べるのだった。
「いっぱいあるから気にしないで」
ルルは沢山のピザ箱を見せる。
「うう・・・ありがとう」
ギルシュバインは泣いていた。
「やべ、うんこしていい?」
俺は食べまくって、トイレしたい気分になる。
「黙って行きなさいよ、全く・・・」
ルルは俺に呆れていた。
俺は急いで駆け込む。
「ふぅ・・・」
結構出たなと、くだらないことに感動する。
俺はカラカラと紙を手で巻く。
そして尻を拭いてる最中だった。
「あのさ・・・いいかな」
ルルが話しかけてくる。
「もうちょっと待ってくれ、ケツが汚れたままなんだ。拭かなきゃ出れん。ルルが小便したい気持ちは理解できる、だが、俺も汚れたままなのは嫌なんだ。ここは堪えて欲しい」
「バカ、違うわよ」
ルルに怒られる。
「それじゃ、なんだよ」
「そのままでいいから聞いて」
「何だよ、俺の便所の音を聞いても面白くないぞ」
「皆が寝静まったら2人でbarに行きましょう。
行きつけの所があるの」
「へぇ」
「じゃ、そういことだから」
「これは・・・デートの誘いか?」
なんて俺はバカなことを考えるのだった。
トイレから出た後、すでに2人は眠っていた。
「レスキィとギルシュバインはどうした?」
「秘蔵の酒って言ったら喜んで飲んでたわ。
歯止めが利かなくなったのか、そのまま瓶で飲んだら・・・これよ」
ギルシュバインは裸で眠っていた。
とてもじゃないがモザイクなしでは見せられない。
レスキィは酒瓶を抱き枕代わりにして眠っていた。
とても気持ちよさそうだった。
「これで2人きりだな」
「そうね、それじゃ行きましょうか」
「あぁ」
俺たちは夜の街に2人きりで出かけるのだった。
「あの、自分気になったんですが」
「なんだ?」
俺は聞き返す。
「偽物を退治するのが旅の目的なんですよね」
「俺はな、他の奴は知らんが」
「残りってどのくらいなのかなって」
「ん?」
「あ、ほら、残りの人数が分かれば後はこれぐらいだーって、終わりが見えるから頑張りやすいって思えるかなぁー・・・って」
「俺は分からん」
俺は断言する。
「ですよね・・・あはは・・・」
レスキィは苦笑する。
「そのために向かってる」
「どういうことでしょう?」
レスキィは不思議そうな顔をする。
「あぁ、なるほどね」
ギルシュバインは納得する。
「え、え?」
レスキィだけが困惑する。
「秘密だ」
「えーーっ、ずるいです。二人だけで森がってるじゃないですか!」
レスキィはぷんすかだった。
「行けばわかるよ」
俺はそう伝える。
そうして歩く、そして、辿り着く。
ついた先はダークな街並みだった。
「暗いですねぇ、昼間ぐらいの筈なのに」
レスキィはそんな感想を漏らす。
「ここは1日中暗い街なんだよ」
「へぇ、不思議です」
「明るいのが嫌いな奴には過ごしやすい所なんだ」
橋が架かってるのだが、少しでも足を外せば下に落下しそうだった。
底が見えず、どれほどの深さなのか想像できない。
「それで、こんな場所に何の用でしょうか?」
「とりあえず、行ってみるか」
俺たちはある場所へと向かう。
そこは占いの館と書かれた場所だった。
アパートのような場所で、なんだか庶民的だった。
「ここ・・・ですか?」
「入るぞ」
俺はベルを鳴らす。
「空いてます、どうぞ」
中から女性の声がする。
「だとさ、行くぞ」
俺は中に入る。
「えっと、お邪魔します」
レスキィはおっかなびっくりという感じで入る。
「お邪魔します」
ギルシュバインは普通に入った。
「げっ」
そこに居たのは、俺の事を監禁していたナバナという男だった。
「どうしてお前がここに」
俺は不思議に思う。
「べ、別にいいじゃないですか。
悩み相談ですよ、悩み相談!」
「悩み相談ねぇ」
俺はニヤリと笑う。
「別に変な意味はないですから、ただ単に相談しに来ただけです!」
ナバナは顔を真っ赤にする。
「別に俺も変な意味があると思ってないぜ」
「嘘言わないでください、そのにやけた面は明らかに思惑があるでしょう!」
「それはお前の中にやましいことがあるからじゃないのぉ?」
「もういいです!」
ナバナは怒って出ていく。
「いいんでしょうか」
レスキィは心配そうにする。
「まぁ、大丈夫だろう。
それよりも、久しぶりだな、ルル」
「はぁ・・・あんた達か」
面倒くさそうに返事する人がそこに居た。
魔女っぽい恰好をしてる大人な女性だと思えた。
「会いに来たぜ」
「アンタたちが来ると商売困るんだよね。
無料で見ろって言うんだから、本当に困ったものだ」
「いいだろ、友達料金だ」
「はぁ、友達なら払ってくれよ全く」
ルルはため息を吐く。
「あの・・・この方は」
「あぁ、かつて勇者の仲間の1人だったメンバーの未来視ルル」
ギルシュバインが説明する。
「あーーーっ、大ファンです。大ファン!
握手いいですか?サインいいですか?投げキッス貰えますか?」
レスキィはテンションが上がる。
「誰、この子?」
ルルは引いていた。
「勇者に憧れてるらしい、レスキィって子だ」
俺はそう説明する。
「ファンです!」
レスキィの目がキラキラしていた。
「なるほど、そういうこと」
ルルは納得したようだ。
「ファンの期待を裏切らない方がいいと思うぜ?」
俺はルルにそんなことを言う。
「あー、分かってますよ、はいはい。
ほら、サイン書いてあげるから」
「顔に書いてください!」
「顔って・・・服とかじゃなくていいの?」
「いいんです、鏡とか見るときに毎回幸せな気分になれるので!」
「風呂はどうするのよ、顔を洗うでしょ。
落ちるじゃない」
「入らないです、風呂キャンセルです!」
「あ、そう」
ルルはちょっと面倒な人が来たなという顔をするものの、一応はファンサービスとして顔にサインを書いていた。
「ありがとうございます!」
レスキィは喜んでいた。
「まぁ、喜んでるし、いいか」
ルルは諦めた。
「悪いが、次は俺の用事だ」
「本当にいつもあんたってそうよね。
友達づきあいは悪い癖に、ふらっと来てはうちを頼る。頼って欲しいなら普段から会って欲しいんだけど?」
「悪いと思ってる、だが、頼む」
「はぁ・・・うちもバカな女よね。
勘違いしないでね、これは別にあんたのことが好きとかそういうんじゃなくて、うちが優しいだけだから」
「分かってる、頼むよ」
「はいはい・・・」
ルルは水晶に魔力を込める。
すると、ぼうと小さな光が浮かび上がる。
まるで、水晶の中で小さな宇宙が出来上がってるように見えた。小さな光が星々に見えたからだ。
「綺麗です・・・でも・・・これは?」
レスキィは不思議そうな顔をする。
「・・・」
ちらと俺の方を見る。
「彼女はもう知ってる、隠す必要はない」
俺はルルに伝える。
「そう・・・それじゃ言うけど・・・これは命の輝きってところかしら」
「命の・・・輝き?」
「そう、確かレスキィって言ったかしら」
「はい、自分はレスキィです」
「人にはそれぞれ魔力が存在する。
それは別の言い方をするならば命の輝きとも言える」
「なるほど?」
「そして、この輝きはある1人の女性を表してる。
不思議よね、1人の女性であるにも関わらず、複数の輝きを放ってるのだから」
「あっ」
レスキィは何かに気づいたようだ。
「そう、貴方も想像ついたでしょうけど、改めてハッキリ言うわ、これはエナトリアの輝きよ」
「エナトリアさんの・・・でも輝きの数が少ないような気が・・・」
「そう・・・少なくなってる・・・誰かが減らしてるのよ・・・ねぇ・・・クルバス?」
「・・・」
この女、気づいてるか。
賢い女は必要なことにも気づくが、
気づいて欲しくないことにも気づくのが賢い女の嫌な所だ。
「それじゃ、もしかして」
レスキィは期待のまなざしを向ける。
「終わりが近い」
ルルは告げる。
「クルバスさん!」
レスキィはキラキラした目で俺の方を見る。
「そうか・・・終わりが近いか」
俺も報われるような思いを感じる。
それと同時に、もしも残ってる奴らが全て偽物だったらという不安も感じるのだった。
「これで希望が見えてきましたね!」
レスキィは嬉しそうだった。
「良かったな、クルバス。
これで君の戦いは無駄ではなかったと世界は認めてくれるだろうさ」
ギルシュバインも喜んでいた。
「あぁ・・・」
けれど2人の喜びとは違い、俺は素直に喜べなかったが。
「クルバスさんは嬉しくないですか?」
レスキィが不安そうに聞いてくる。
「最後の最後まで気が抜けないだけさ。
終わりが近いからといって、気を緩めたらエナトリアに殺されるかもしれないからな」
「さすが、クルバスさんです。
自分はそこまで気が回りませんでした!」
レスキィは子分みたいな言い回しをする。
「泊る所、無いんでしょ。
せっかく来たんだし、うちに泊まりなよ」
「俺は良い、何処かホテルでも探して・・・」
「と・ま・れ!」
ルルに睨まれる。
「何で睨むんだよ」
「占ってもらって、はい、終わり?
そんなやり捨てみたいなことしないでよ」
「表現が悪いぞ」
「泊りなって、話したいこともあるしさ」
「はぁ・・・分かったよ」
俺はルルの好意に甘えて泊まることにした。
占いの館が実質、彼女の家でもあるので、部屋はすぐ後ろだった。
「ここが、ルルさんのお家ですか」
「おー・・・」
ギルシュバインが辺りを見渡す。
部屋は女の子らしく可愛い感じではなく、
テーブルに座布団というシンプルなものだった。
家具はとくに無し。
部屋は綺麗にしてあると思える。
「綺麗にしてるんだな」
俺はそんな感想を漏らす。
「勘違いしないでね、いつでも友達が来てもいいように部屋を綺麗にしてるとか、そういうんじゃないからね!」
「分かってるよ、ルル」
俺は伝える。
「本当に分かってるのかしら・・・」
ルルはぎゅっと帽子のつばを手で押さえて顔を隠す。
「よっこらせ」
俺は人の家で寝る。
「ちょっと、人の家なんですけど!」
ルルが怒る。
「人の家だから緊張するなぁ」
ギルシュバインは正座で大人しく座る。
彼の礼儀正しい一面が見える。
「ギルみたいに、礼儀正しくできないのかしら。
全く・・・そういえば腹減ってない?」
「減ってる、何か作ってくれるのか?」
俺は寝ながら声をかける。
「あの、何か手伝いましょうか?」
レスキィは手伝いを申し出る。
彼女の優しさが見える台詞だろう。
「大丈夫、今は便利な世の中だから」
「ほぇ?」
レスキィは不思議そうな顔をする。
すると、いきなりドンドンと扉がノックされる。
「来た来た」
「どうも、出前です」
配達員のお兄さんがやってくる。
「どうも~」
ルルは手を振って彼を見送った。
「何を頼んだんだ?」
俺は尋ねる。
「定期的にピザを頼んでるのよ、
それで配達もしてもらえるようになったんだから。
便利よねぇ、今の時代」
「おぉ」
俺は感動する。
「皆来ると思って、頼んだのよ」
ルルはふふんと得意げだった。
「開けてもいいか?」
俺はルルに尋ねる。
「えぇ、どうぞ」
ルルに許可を貰ったので俺は蓋を開ける。
すると、そこには美味しそうなピザがあった。
「いただきます」
口の中でさわやかなトマトの酸味と、
チーズのトロッとした塩味が合わさってコクを感じて美味いと思えた。
「見てください、これ、伸びます!」
レスキィはピザを初めて見たのか、
ピザを2切れ持って間にチーズの橋を作っていた。
「凄いでしょ」
ルルはレスキィを微笑ましそうな顔で見る。
「はい、こんなの自分の村では見たことないです!」
「8切れだから・・・1人2つ分って所だろうか」
ギルシュバインはぶつぶつ呟く。
「要らないの?じゃ、俺もらうわ」
俺は3切れ目を食べる。
「あーーーーーっ!」
ギルシュバインは絶叫する。
「ん?」
俺は何でギルシュバインが叫んだのか理解できずにピザをむしゃむしゃと食べるのだった。
「いっぱいあるから気にしないで」
ルルは沢山のピザ箱を見せる。
「うう・・・ありがとう」
ギルシュバインは泣いていた。
「やべ、うんこしていい?」
俺は食べまくって、トイレしたい気分になる。
「黙って行きなさいよ、全く・・・」
ルルは俺に呆れていた。
俺は急いで駆け込む。
「ふぅ・・・」
結構出たなと、くだらないことに感動する。
俺はカラカラと紙を手で巻く。
そして尻を拭いてる最中だった。
「あのさ・・・いいかな」
ルルが話しかけてくる。
「もうちょっと待ってくれ、ケツが汚れたままなんだ。拭かなきゃ出れん。ルルが小便したい気持ちは理解できる、だが、俺も汚れたままなのは嫌なんだ。ここは堪えて欲しい」
「バカ、違うわよ」
ルルに怒られる。
「それじゃ、なんだよ」
「そのままでいいから聞いて」
「何だよ、俺の便所の音を聞いても面白くないぞ」
「皆が寝静まったら2人でbarに行きましょう。
行きつけの所があるの」
「へぇ」
「じゃ、そういことだから」
「これは・・・デートの誘いか?」
なんて俺はバカなことを考えるのだった。
トイレから出た後、すでに2人は眠っていた。
「レスキィとギルシュバインはどうした?」
「秘蔵の酒って言ったら喜んで飲んでたわ。
歯止めが利かなくなったのか、そのまま瓶で飲んだら・・・これよ」
ギルシュバインは裸で眠っていた。
とてもじゃないがモザイクなしでは見せられない。
レスキィは酒瓶を抱き枕代わりにして眠っていた。
とても気持ちよさそうだった。
「これで2人きりだな」
「そうね、それじゃ行きましょうか」
「あぁ」
俺たちは夜の街に2人きりで出かけるのだった。
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藤谷 要
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