20 / 41
4-3
しおりを挟む
その日、僕は学校に来ていた。
休み時間、図書室にでも行こうと考えて出向く。気軽に誘える友達が居ないのだから、1人で時間を潰すとなると、思いつくのは図書室しかなかった。スマホでもいいのだが、今日は本の気分だった。
「あれ・・・確か日陰さんだよね」
僕は誰かに話しかけられる。
「うぇ」
変な声が出る。
話しかけてきたのは純太君だった。
「やっぱり、同級生だったんだ」
「あぁ・・・そっすね」
僕が出会う人、皆この学校だ。
何か不思議な縁を感じる。
「やっぱり自分ら縁を感じるね」
「あはは」
愛想笑いだ。
本当に不思議だ。
「やっぱり、本を借りに?」
「まぁ、そんなところかな」
「どういうのがいいの?」
「そうだなぁ、冒険っていうか、ミステリー系?」
「分かる、面白いよね」
「純太君も本読むの?」
「あぁ、だって本屋で会ったじゃないか。本屋でバイトしてるのに本が嫌いって、日本が嫌いなのに来日する海外のアイドルみたいじゃないか。そんなの変だろ?」
「確かにそうかも」
「いい本を読んでる時は心地が良いよね。心が潤ってるのを感じる」
「分かるかも・・・」
素晴らしい本を読んでると深海に居る筈なのに呼吸できるような心地よさがある。
「これから先、AIの文学ってのが出てくるだろうと思うけど、それでもやっぱり人が書いた本に味を感じるよ。多分だけど、AIの方が面白い本を書けるかもしれないけど、でも、何て言うのかな。本を読む時って、何処かで作家を尊敬して居たいって思うんだよね。AIが書いたって分かると、文章の奥に潜んでる顔も知らない誰かを尊敬する心が薄れてしまう、そうすると何だか自分はその物語にあまり興味を感じなくなるんだよね。この文章を本気で理解したとしても、その奥に居るのは機械なんだ。分かり合うことが無いって分かってるからかもしれない。小説を読むってのは人を理解したいって気持ちから始まると思うし・・・まぁ、でも、この考え方はきっと将来的に古いって言われるんだろうな」
純太君は苦笑していた。
「そ、そんなことないと・・・思う」
僕は声がうわずる。
「そう?皆AIの方がいいっていうから。人間と違って疲れないし、望めばいくらでも文章を精製できるからね。気に入らなければ気軽に捨てられるし、気に入れば保存も簡単だろうしね。紙の本と比べて場所も取らないし便利は便利なんだ」
「場所をとってもいい・・・と思う・・・本棚に本が埋まってるのは楽しい・・・と思う」
「君、結構本好きだね」
「わ、わりと」
僕は何だか気恥ずかしくなり、顔を逸らす。
「是非とも、日陰さんにはこれを読んで欲しい」
「これ?」
僕は本を渡される。
「きっと、理解し合えると思うんだ。自分たちは」
「そうかも・・・しれない。
減ってきた本好き同士・・・で」
「あぁ・・・まだ生き残りが居たんだと嬉しくなる」
「うえへ」
「あはは」
僕らは笑い合う。
何だか通じ合ってる気がしてた。
「それじゃ、カードを」
「うん」
僕はカードを差し出して借りる。
今はPCで管理してるなと思う。
昔は紙に鉛筆で書いていた時代が懐かしい。
「これがその本だよ」
「ありが・・・と・・う?」
受取った本は純文学だった。
普段、僕が読む美少女盛りだくさん、ちょっとスケベなラノベではなかった。
「気に入ってくれるといいな」
純太君はにこっと微笑む。
その顔に一切の邪気は無かった。
「あー・・・」
どうしよう、困ったな。
僕が好きなのはラノベであって、純文学ではない。微妙ではあるが、この2つには差がある。どちらが上で、どちらが下という訳ではないのだが、何だか分かり合えない部分が根底にある気がする。
「面白いからぜひ、読んでよ」
「うん、読んでみる」
試しに読んでみるか。つまらなかったら、どうしようか。まぁ、その時に考えよう。話が盛り上がったのにラノベしか興味ないので、とは言いづらい。
学校が終わり、家に持って帰る。
「あれ、日陰ちゃん珍しいね純文学なんて」
姉が棒アイスを咥えながら話しかけてくる。寒いのによく食べるなと思う。
「まぁ・・・たまには」
試しに読んではみる。
でも、可愛い女の子が出ないと読むのが苦痛に感じるので、正直面白いとは思えなかった。純文学はヒロインらしいヒロインは出ないからな。どっちかって言うと社会派というか、堅苦しい感じがする。僕には合わなかった、さて、どうしたものだろうか?これをどう伝えるか迷う。とりあえず寝るか。僕は本を読み終えた後寝る。
翌朝、僕は再び学校の図書室に向かう。
「読んでくれた?」
「まぁ・・・」
「それで、どうかな。
自分的には傑作だったんだ。社会派って言うのかな、凄く知的好奇心を満たせるし、共感する部分が多いんだ。作者の頭の良さを感じて見ていて飽きない」
「えーっと、その・・・ああまりハマらなかったといいますか」
僕は正直に伝えることにした。でも、出来る限り相手を傷つけないように言葉は選んでるつもりだ。
「そうか」
やっぱり、純太君は落ち込んでいた。
「あ、でも、その人気なんだよね。僕はきっとバカなんだよ、うん、きっとそうだ。だから理解できないって言うかさ・・・だから面白いって感じる純太君の方が正しいよ」
「読んでくれて、ありがとう」
「え?」
「嘘を伝えられるより、良かった」
「そっか」
僕は安心する。
良かった、喧嘩にならなくて。この本の価値が分からない君はバカだと目の前で言われたら落ち込むし。そんなことがなくて良かったと思う。
「きっと、この作者は合わなかったんだ」
「えっと?」
純太君の目つきが変わる。
「コメディ、青春、ホラー名作は沢山ある、この中のどれかがきっと君に合うはずだ。大丈夫、君に合うのが見つかるまで自分も協力するから」
純太君はこれでもかと本を持ってくる。天井につくのではないかという勢いで本のタワーを持ってくる。これを全部読むのは一苦労だ。なので、僕がとった手段はこうだ。
「ごめんなさ~い!」
僕は図書室から逃げ出したのだった。
「あぁ、待って!」
純太君が大量の本を持って追いかけてくるのだった。
その日、夢で沢山の本に追い返られる悪夢を見たのだが、この体験が原因だろうと思った。
休み時間、図書室にでも行こうと考えて出向く。気軽に誘える友達が居ないのだから、1人で時間を潰すとなると、思いつくのは図書室しかなかった。スマホでもいいのだが、今日は本の気分だった。
「あれ・・・確か日陰さんだよね」
僕は誰かに話しかけられる。
「うぇ」
変な声が出る。
話しかけてきたのは純太君だった。
「やっぱり、同級生だったんだ」
「あぁ・・・そっすね」
僕が出会う人、皆この学校だ。
何か不思議な縁を感じる。
「やっぱり自分ら縁を感じるね」
「あはは」
愛想笑いだ。
本当に不思議だ。
「やっぱり、本を借りに?」
「まぁ、そんなところかな」
「どういうのがいいの?」
「そうだなぁ、冒険っていうか、ミステリー系?」
「分かる、面白いよね」
「純太君も本読むの?」
「あぁ、だって本屋で会ったじゃないか。本屋でバイトしてるのに本が嫌いって、日本が嫌いなのに来日する海外のアイドルみたいじゃないか。そんなの変だろ?」
「確かにそうかも」
「いい本を読んでる時は心地が良いよね。心が潤ってるのを感じる」
「分かるかも・・・」
素晴らしい本を読んでると深海に居る筈なのに呼吸できるような心地よさがある。
「これから先、AIの文学ってのが出てくるだろうと思うけど、それでもやっぱり人が書いた本に味を感じるよ。多分だけど、AIの方が面白い本を書けるかもしれないけど、でも、何て言うのかな。本を読む時って、何処かで作家を尊敬して居たいって思うんだよね。AIが書いたって分かると、文章の奥に潜んでる顔も知らない誰かを尊敬する心が薄れてしまう、そうすると何だか自分はその物語にあまり興味を感じなくなるんだよね。この文章を本気で理解したとしても、その奥に居るのは機械なんだ。分かり合うことが無いって分かってるからかもしれない。小説を読むってのは人を理解したいって気持ちから始まると思うし・・・まぁ、でも、この考え方はきっと将来的に古いって言われるんだろうな」
純太君は苦笑していた。
「そ、そんなことないと・・・思う」
僕は声がうわずる。
「そう?皆AIの方がいいっていうから。人間と違って疲れないし、望めばいくらでも文章を精製できるからね。気に入らなければ気軽に捨てられるし、気に入れば保存も簡単だろうしね。紙の本と比べて場所も取らないし便利は便利なんだ」
「場所をとってもいい・・・と思う・・・本棚に本が埋まってるのは楽しい・・・と思う」
「君、結構本好きだね」
「わ、わりと」
僕は何だか気恥ずかしくなり、顔を逸らす。
「是非とも、日陰さんにはこれを読んで欲しい」
「これ?」
僕は本を渡される。
「きっと、理解し合えると思うんだ。自分たちは」
「そうかも・・・しれない。
減ってきた本好き同士・・・で」
「あぁ・・・まだ生き残りが居たんだと嬉しくなる」
「うえへ」
「あはは」
僕らは笑い合う。
何だか通じ合ってる気がしてた。
「それじゃ、カードを」
「うん」
僕はカードを差し出して借りる。
今はPCで管理してるなと思う。
昔は紙に鉛筆で書いていた時代が懐かしい。
「これがその本だよ」
「ありが・・・と・・う?」
受取った本は純文学だった。
普段、僕が読む美少女盛りだくさん、ちょっとスケベなラノベではなかった。
「気に入ってくれるといいな」
純太君はにこっと微笑む。
その顔に一切の邪気は無かった。
「あー・・・」
どうしよう、困ったな。
僕が好きなのはラノベであって、純文学ではない。微妙ではあるが、この2つには差がある。どちらが上で、どちらが下という訳ではないのだが、何だか分かり合えない部分が根底にある気がする。
「面白いからぜひ、読んでよ」
「うん、読んでみる」
試しに読んでみるか。つまらなかったら、どうしようか。まぁ、その時に考えよう。話が盛り上がったのにラノベしか興味ないので、とは言いづらい。
学校が終わり、家に持って帰る。
「あれ、日陰ちゃん珍しいね純文学なんて」
姉が棒アイスを咥えながら話しかけてくる。寒いのによく食べるなと思う。
「まぁ・・・たまには」
試しに読んではみる。
でも、可愛い女の子が出ないと読むのが苦痛に感じるので、正直面白いとは思えなかった。純文学はヒロインらしいヒロインは出ないからな。どっちかって言うと社会派というか、堅苦しい感じがする。僕には合わなかった、さて、どうしたものだろうか?これをどう伝えるか迷う。とりあえず寝るか。僕は本を読み終えた後寝る。
翌朝、僕は再び学校の図書室に向かう。
「読んでくれた?」
「まぁ・・・」
「それで、どうかな。
自分的には傑作だったんだ。社会派って言うのかな、凄く知的好奇心を満たせるし、共感する部分が多いんだ。作者の頭の良さを感じて見ていて飽きない」
「えーっと、その・・・ああまりハマらなかったといいますか」
僕は正直に伝えることにした。でも、出来る限り相手を傷つけないように言葉は選んでるつもりだ。
「そうか」
やっぱり、純太君は落ち込んでいた。
「あ、でも、その人気なんだよね。僕はきっとバカなんだよ、うん、きっとそうだ。だから理解できないって言うかさ・・・だから面白いって感じる純太君の方が正しいよ」
「読んでくれて、ありがとう」
「え?」
「嘘を伝えられるより、良かった」
「そっか」
僕は安心する。
良かった、喧嘩にならなくて。この本の価値が分からない君はバカだと目の前で言われたら落ち込むし。そんなことがなくて良かったと思う。
「きっと、この作者は合わなかったんだ」
「えっと?」
純太君の目つきが変わる。
「コメディ、青春、ホラー名作は沢山ある、この中のどれかがきっと君に合うはずだ。大丈夫、君に合うのが見つかるまで自分も協力するから」
純太君はこれでもかと本を持ってくる。天井につくのではないかという勢いで本のタワーを持ってくる。これを全部読むのは一苦労だ。なので、僕がとった手段はこうだ。
「ごめんなさ~い!」
僕は図書室から逃げ出したのだった。
「あぁ、待って!」
純太君が大量の本を持って追いかけてくるのだった。
その日、夢で沢山の本に追い返られる悪夢を見たのだが、この体験が原因だろうと思った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ゆりいろリレーション
楠富 つかさ
青春
中学の女子剣道部で部長を務める三崎七瀬は男子よりも強く勇ましい少女。ある日、同じクラスの美少女、早乙女卯月から呼び出しを受ける。
てっきり彼女にしつこく迫る男子を懲らしめて欲しいと思っていた七瀬だったが、卯月から恋人のフリをしてほしいと頼まれる。悩んだ末にその頼みを受け入れる七瀬だが、次第に卯月への思い入れが強まり……。
二人の少女のフリだけどフリじゃない恋人生活が始まります!
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる