死にかけの少女はマフィアの若頭に拾われる

田中正義

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プロローグ

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私はどこにでもいる普通の少女だった。
特に貧しくもなく家族仲も良く、これといって不自由を感じる生活ではなかった。

ただ少し私はこのまま町の学校に通って、両親の農場を手伝っていくんだと未来のことを考えては少々つまらなくも思っていた。

__しかしそんな安定していた未来はある物事で一瞬で崩れ落ちた。



私がまだ10歳の頃でやっと学校を通い始め友達が出来た時だった。
その日はたまたま友達の家に泊まりにおいでよ、と誘われたから家には帰らず丸一日家を開けていた。

その日のことはあまり思い出せないが 

”赤い満月”が窓から見えていたのが印象に残っていた。

この街の言い伝えで赤い満月の日はなにか不吉なことが起こると言われていたが、今では誰一人としてそんな噂を真に受けてなかった。

私も気にすることはなくただ目に焼き付く赤い満月に
「綺麗だなぁ」
と讃称した。




__不思議と胸のざわつきを覚えながら。


そして朝日が昇った頃、服を取りに帰る為いったん家に帰ることにした。

歩いて数分、そんなに遠くない自宅に向かって
朝の日照りを浴びながら歩いていた。

しかし、いつも朝早くから聞こえる牛の鳴き声も羊の鳴き声も 何も音が聞こえなかった。
牧場を見ても朝早くから仕事をしているはずの両親の姿も動物の姿も見えなかった。

___?


幼いながらも何かがおかしいと感じ取り心臓が煩く高鳴り始めた。

両親は寝坊でもしているんだろうと家のドアを勢いよく開けた先にはぶらん、と 人の姿が見えた。

朝なのに顔が見えないほど家の中は暗く、ランプの光のすらもなかった。

不気味に感じつつも暗闇の中にいるお母さんらしき人に 震えながら声をかけた  。

「おかあさ………」

かたかたと手の震えが止まらないまま母親の手を引くが 、全く温かみを感じない。

まるで氷を持っているように冷たい手だった。

私はがたがたと自分の片手を抑えながらマッチに火をつけてランプに火をつけた。

上の方に光をやると首をつっている両親の姿がぎぃぎぃと縄の軋む音を立てながら見えた。


「………あ……うあ……っあ……!!  」

声にならない驚きは冷や汗、涙となってでていく。  
見たくもない現実は小さなランプによって映し出されてしまった。

そこからはあまり覚えてない。小さい時だったからか記憶は抜けており、鮮明なのは両親の冷たくなった手と苦しんで死んでいった顔だけだった。

しかし、私は絶対に両親が自殺なんかしていないことは知っている。

警察があの後取り調べをしていたが明らかに他殺の痕があったのだ。
首を吊るされる前に何十回も刺された後が鮮明にも残っていたのに 警察は面倒だからと
「自殺」と片付けてしまった。


腹立たしい、腹立たしい腹立たしい。
私は絶対に犯人を見つけ出して復讐してやる。


そう決めた時には既に幸せだった私の人格は消えうせたのだろう。 復讐しか頭にない私は考えるより先に都会に場所を移していた。

なんでも、都会には情報屋がいるらしく何でも調べあげてくれるらしい。


どうにかして犯人を、見つけだしてもらおう。



そういって私は両親が残してくれた家も名前も全てを捨てて  、 小さな身と少々のお金で街を飛び出したのだった。






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