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第二章カスヤロウあがき編
あがき3:カスヤロウ、これからの人生フワフワラッコになる
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私はクレイム。この国で一番頭が良く、策も自ら行う男だ。
領民達が大人しく帰宅していくのを確認した後、私も再度家に戻りジャージに着替える。
「マリア、聖女としての初任務、ゴブリン退治だ」
「本当に行くのですか?」
「大丈夫だ、お前はマーガレットの後ろに隠れていろ」
「お父様がやるのですか?お父様もうすぐ五十歳の管理職じゃない!」
マリアは心配しているが、私にはスキルがある。いや、そういえば領民対策優先でスキルの話は誰にもしてなかったな。
「マーガレット、今日のスキルは何かな?」
「はい!お教えしましょうぞ!」
これまで不満たっぷりだったマーガレットの顔が、本来の仕事を振られた事で明るくなる。
「お父様、スキルって」
「神は聖女そのものではなく、聖女の奇跡の一部を人々に分割して与える事にした、私はその試用者でこの天使は記録者だ」
「ですぞ!」
マーガレットはニッコニコで肯定する。出会ったばかりの彼なら、第三者にスキルの話をしたらいい顔しなかっただろうが、偽聖女関連で既に彼のバランス感覚はグラグラになっている。
「そして、本日の日替わりスキルは縮地ですぞ!」
縮地か、よく分からんがスキルの一つなのだから弱気なゴブリンぐらいなら倒せる能力なのだろう。
「マーガレット、縮地について説明したまえ」
「ぞ!それではジャンプしながら縮地と叫んで足をパタパタ動かして下さいぞ!」
私は言われた通りにその場でジャンプし、足をバタつかせながら叫んだ。
「縮地!」
すると、なんということだらうか!私の身体が一メートル程前進してからゆっくりと地面に着地したではないか!
「これが縮地、か」
「ですぞ!縮地は空中を歩けるスキルですぞ!」
「それだけか?」
「それだけですぞ!」
「よし、ゴブリン退治は明日にしよう。マーガレット、明日のスキルを聞きたいのだが」
縮地では戦闘に使えないと判断し、マーガレットに明日のスキルを聞くと、彼は腕を組み考え込んだ。
「できれば、スキルの名前と効果は当日まで待って欲しいのですぞ。予め教えると心構えされて、正確な感想を聞けなくなるからですぞ。ですが、クレイム殿なら問題ありませんから言いますぞ」
私の人徳が効いたのか、マーガレットは特例で明日のスキルを教えてくれた。
「明日の日替わりスキルはラッコマンですぞ」
「ラッコマン?」
「ラッコの着ぐるみが自動的に装備され丸一日ラッコになりきるというスキルですぞ」
「ゴブリン退治は明後日にするか」
「明後日のスキルは縮地ですぞ」
待て、これはどういう事だ。マーガレットが明日と明後日のスキルを教えてくれた。それはよい。それはよいのだが、今日は縮地、明日はラッコマン、明後日はまた縮地。日替わりでスキルが変化しなきゃならんのに、三日目で早くも縮地がもう一度来るか?
「マーガレット、今日から十日分のスキルを教えてくれ」
「奇数日は縮地、偶数日はラッコマンですぞ」
「もしかして、私のスキル縮地とラッコマンしか無いのか?」
恐る恐る聞くと、マーガレットはむっちゃムカつく笑顔で親指を立てながらイエスと肯定した。
「そうですぞー!神は全部で三十二のスキルを作り、三人の試用者に十ずつ貸し与え、余った二つのスキルを最後の一人、すなわち貴方様に貸し与える事にしたのですぞ!」
「へえ、それじゃあこれからお父様は一日おきにラッコの着ぐるみを着た変態親父になるのね。ププッ」
おお、自宅に引きこもって以来ずっと笑わなかったマリアに笑顔が!て、やかましいわ!
「ゴブリン退治に行くぞ!絶対に今日中に終わらせる!」
「えー、明日にしましょーよー、お父様のラッコモードみーてーみーたーいー!ねー、マーガレットさん、ラッコマンってどんな見た目になるのぉ?」
「フッフッフ、明日をお楽しみにですぞ」
おのれ、おのれ、おのれ!ラッコの着ぐるみ姿の五十手前の男に誰が従う?神め、私に何か恨みでもあるのか!?
「とにかくゴブリンの所さんまで行くぞ!ついて来い!」
ゴブリン対策?マーガレットに丸投げじゃいそんなん!あ~、ゴブリン退治成功したとして、明日領民の前に出られるだろうか私は。
領民達が大人しく帰宅していくのを確認した後、私も再度家に戻りジャージに着替える。
「マリア、聖女としての初任務、ゴブリン退治だ」
「本当に行くのですか?」
「大丈夫だ、お前はマーガレットの後ろに隠れていろ」
「お父様がやるのですか?お父様もうすぐ五十歳の管理職じゃない!」
マリアは心配しているが、私にはスキルがある。いや、そういえば領民対策優先でスキルの話は誰にもしてなかったな。
「マーガレット、今日のスキルは何かな?」
「はい!お教えしましょうぞ!」
これまで不満たっぷりだったマーガレットの顔が、本来の仕事を振られた事で明るくなる。
「お父様、スキルって」
「神は聖女そのものではなく、聖女の奇跡の一部を人々に分割して与える事にした、私はその試用者でこの天使は記録者だ」
「ですぞ!」
マーガレットはニッコニコで肯定する。出会ったばかりの彼なら、第三者にスキルの話をしたらいい顔しなかっただろうが、偽聖女関連で既に彼のバランス感覚はグラグラになっている。
「そして、本日の日替わりスキルは縮地ですぞ!」
縮地か、よく分からんがスキルの一つなのだから弱気なゴブリンぐらいなら倒せる能力なのだろう。
「マーガレット、縮地について説明したまえ」
「ぞ!それではジャンプしながら縮地と叫んで足をパタパタ動かして下さいぞ!」
私は言われた通りにその場でジャンプし、足をバタつかせながら叫んだ。
「縮地!」
すると、なんということだらうか!私の身体が一メートル程前進してからゆっくりと地面に着地したではないか!
「これが縮地、か」
「ですぞ!縮地は空中を歩けるスキルですぞ!」
「それだけか?」
「それだけですぞ!」
「よし、ゴブリン退治は明日にしよう。マーガレット、明日のスキルを聞きたいのだが」
縮地では戦闘に使えないと判断し、マーガレットに明日のスキルを聞くと、彼は腕を組み考え込んだ。
「できれば、スキルの名前と効果は当日まで待って欲しいのですぞ。予め教えると心構えされて、正確な感想を聞けなくなるからですぞ。ですが、クレイム殿なら問題ありませんから言いますぞ」
私の人徳が効いたのか、マーガレットは特例で明日のスキルを教えてくれた。
「明日の日替わりスキルはラッコマンですぞ」
「ラッコマン?」
「ラッコの着ぐるみが自動的に装備され丸一日ラッコになりきるというスキルですぞ」
「ゴブリン退治は明後日にするか」
「明後日のスキルは縮地ですぞ」
待て、これはどういう事だ。マーガレットが明日と明後日のスキルを教えてくれた。それはよい。それはよいのだが、今日は縮地、明日はラッコマン、明後日はまた縮地。日替わりでスキルが変化しなきゃならんのに、三日目で早くも縮地がもう一度来るか?
「マーガレット、今日から十日分のスキルを教えてくれ」
「奇数日は縮地、偶数日はラッコマンですぞ」
「もしかして、私のスキル縮地とラッコマンしか無いのか?」
恐る恐る聞くと、マーガレットはむっちゃムカつく笑顔で親指を立てながらイエスと肯定した。
「そうですぞー!神は全部で三十二のスキルを作り、三人の試用者に十ずつ貸し与え、余った二つのスキルを最後の一人、すなわち貴方様に貸し与える事にしたのですぞ!」
「へえ、それじゃあこれからお父様は一日おきにラッコの着ぐるみを着た変態親父になるのね。ププッ」
おお、自宅に引きこもって以来ずっと笑わなかったマリアに笑顔が!て、やかましいわ!
「ゴブリン退治に行くぞ!絶対に今日中に終わらせる!」
「えー、明日にしましょーよー、お父様のラッコモードみーてーみーたーいー!ねー、マーガレットさん、ラッコマンってどんな見た目になるのぉ?」
「フッフッフ、明日をお楽しみにですぞ」
おのれ、おのれ、おのれ!ラッコの着ぐるみ姿の五十手前の男に誰が従う?神め、私に何か恨みでもあるのか!?
「とにかくゴブリンの所さんまで行くぞ!ついて来い!」
ゴブリン対策?マーガレットに丸投げじゃいそんなん!あ~、ゴブリン退治成功したとして、明日領民の前に出られるだろうか私は。
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