スキルテスター!本来大当たりなはずの数々のスキルがハズレ扱いされるのは大体コイツのせいである

騎士ランチ

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第二章カスヤロウあがき編

あがき6:カスヤロウ、若き王に同情するフリをしながら地獄に突き落とす

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 王の間へは私一人だけ通された。マリアとマーガレットは、それぞれ別の部屋で尋問を受けるそうだ。

 王家に仕える研究者達ならマリアが偽の聖女である事はすぐに気付くだろうし、マーガレットは基本的に自ら動く事は無い。つまり、私が短時間で王を説得せねば、私の社会的地位だけでなくマリアの身も危険に晒してしまう。マリアは今後の策に必要な存在。絶対に守ってみせる。

「来たか、このカスヤロウが」

 若き王は、私への嫌悪を微塵も隠さなかった。それはそうだ。この男は前王の長男でありながら、王太子の座を歳の離れた弟に奪われた。私の策謀には、魔力の高くて言いなりになる馬鹿を必要としたからだ。今の彼が玉座に座っているのも、正当な王位継承ではなく、聖女召喚に失敗した前王を幽閉して勝手に王を名乗っているだけである。

 要するに、彼は私のせいで王になるのに大きく遠回りをしなければならなくなり、さらに、王になっても聖女を失った責任を代わりに取らされ国民人気も非常に低く、他国からも無能な王として評価されているという事だ。

「こっちはなあ、お前のせいで散々な人生なんだぞ!」
「私も先日まで貴方のせいで地の底まで落ちぶれてました。陛下、人生とは上手く行く時期の方が少ないのです。それに、今日はそんな事を聞きたいのではありますまい?本題に入りましょう」

 私は契約書を取り出し、陛下に手渡した。

「ふん、神の契約書か?俺には魔力も知識も無いから真贋が分からん」

 そう言うと、陛下はマッチで契約書に火をつけようとした。私が止める間も無くマッチの火は契約書全体に広がるが、その火が契約書を焦がす事は無く、火は契約書の周りを一周した後に陛下の手元へと戻ってきた。

「熱っ!」
「神の創りし物を粗末に扱うからです」
「き、貴様だって聖女を私的に利用しようとしたり、この契約書を悪用しているではないか!」
「私の場合は専門家の監修の下、リスクを理解した上で取り扱いしております。さて、契約書が本物と分かった所さんで内容を今一度ご確認下さい」

 陛下は火傷した手を氷水で冷やしながら契約書を確認していく。

「本当に、聖女は二度と来ないのだな」
「はい、その様です」
「で、お前は娘を聖女と名乗らせて、お前が得たスキルという力を聖女由来と偽っていると」
「はい、事実に少しばかりアレンジを加えました。人民はまだ聖女を求めていますから」

 陛下に送った手紙と寸分変わらぬ返答をすると、彼は呆れた顔でこう言ってきた。

「お前アホだろ。こんな嘘、すぐにバレるぞ」
「契約書の実物を見せなければ、バレる心配はありません」
「お前以外のスキル試用者とやらがいるではないか!そこから嘘がバレるのも時間の問題だぞ!ただでさえ俺は信用を失っているのに、勝手に偽聖女など担ぎ出してんじゃない!」

 陛下は顔を真っ赤にして地団駄を踏む。その姿は一国の王としての威厳がまるで足りていない。

「陛下、落ち着いて話を聞いて下さい。スキル試用者はたった三人です。間もなくここに来る三人さえ身内に引き込み共犯関係となれば、聖女に従いし四戦士の完成です」
「待て、貴様、今何と言った?」
「他の試用者を丸め込めば、実質このアーモンド国が聖女の力を得たも同然という事です」
「そうじゃなくて、間もなくここに残りの試用者が来るって」
「はい、聖女会のネットワークを利用し、他の三国に通達しておきました」

 そう、この案件は時間との勝負。他の試用者が聖女の件を世間に公表したらそれで私も陛下も詰む。だから、私は他国に連絡を飛ばした。スキル試用者なら意味が分かる文面で、アーモンド王国の冒険者ギルドに集まる様に情報を発信しておいたのだ。

「と、言うわけで既に我らは引き返せない所さんまで来ています。陛下、色々ありましたが、力を合わせて頑張りましょう」
「ウボァー」

 陛下は白目を剥いて気絶していた。
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