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【6】起爆
【6】起爆……④
しおりを挟むミアには引っかかることがあった。
オセがシャノンたち獣人と地震後の地形変化の調査へ行った際、帰ってきて『特に何もない。あるはずがない』とまるでその結果を知っていたかのように断言していたことだ。そして、先ほどのカワウソ獣人がミアに向かって吐き捨てた言葉ーー。
(オセは何か知っているのか。それとも私が、とても重要なことを忘れているのか……)
あの『死の扉』には、こんな言葉があった。
――我々はいついつまでもあなたの帰りを待っています。
しかし、ここの獣人たちが人間を歓迎している姿は表向きだけで、その裏には当時から続く憎しみのようなものがあるのではないか、あって当然だと思った。
ミアのアルファからオメガへの転化など、とても小さな話で、もっと知らなければいけない事実があるような気がした。
ミアは、大聖堂を出て地下へとつながる鋼の扉へ向かった。
おそらく、あの下へ向かった灯りがシャノンだと思ったからだ。
ミアが鋼の扉のノブを回すと鍵は開いていた。
ブーツを脱ぎ、胸にあるパライバトルマリンのブローチを取って目立つ真っ白なマントは外す。咄嗟に闇に身を隠すことを選択してしまった。偶然にも今日はマントの下は黒い服だ。
手すりのない階段から見下ろすと、灯りはまだゆっくりと最低部に向かっている。その場にマントやブーツを置き、駆け下りやすいように靴下も脱いだ。壁に右手を置いて、そこからミアは一段飛ばしで階段を駆け下りた。
今夜、シャノンが何かしようとしているのなら、止めなくてはいけない。
息が上がってくるのを感じながら、ミアはシャノンの背中を追いかけた。まだ、灯りはずっと先だ。ミアは視線でその位置を確認しながら走った。
(え……)
少し先に、黒い影が揺れたような気がした。
「やっぱりミアか!危ないから、そんなに走って降りてこないで」
「嘘!?どいてください、そこ!!」
ミアは突然、暗がりの中から聞こえた声に驚いてつまずきそうになったが、勢いづいてしまって止まることができなかった。
「ギャッ」
まるで熟れた果実が壁にぶつかるように、ボスッとミアの勢いがシャノンの胸に吸収される。
「驚いた……」
「驚いたのは、僕の方だよ。あんな勢いで走って降りてくるんだから」
「何か間違いが起こってしまったらどうしようかと思って、焦ってしまって」
「間違いって?」
そこにいたのは、間違いなくシャノンだった。いつもの調子で笑っている。なんだか、この笑顔を見るのも久しぶりだった。
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