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「あ……っ」
「真珠のように、なめらかな肌ですね」
耳の上をかじられて、舌先でそこを舐めながら野端が囁く。濡れた低い男の声にくすぐられて、由郁は甘い吐息を漏らした。耳元で囁かれるだけで腰が砕けそうになるなんてと、由郁はこれから行われることを考えると自然と両足をすりあわせた。
「感じ易いんですね。とてもかわいいですよ」
くすくすとまだ耳を嬲っていた男の声でさらに体の中心に、甘く重い期待感が募った。男はさらに露わになった由郁の腹からみぞおちへと指を上に滑らして、美しい刺繍で彩られたブラジャーに守られた下乳を指でたどる。
――嬲られてる。
そんな風に思うと、下腹のあたりがさらにきゅんとした。野端の手はすべて優しく動きも柔らかだ。なのに嬲られていると感じて、びくりと体が震えた。
「耳も可愛いですね」
外耳の輪郭を指でそっと辿られ、呻く。まだブラウスだけ、はだけられただけである。なのに自分の中心がどんどん潤っていく。耳の上の軟骨を親指で撫でられ、そくりと身を震わす。期待もあるし、性急にこの男の胸のうちに逃げ込んでしまいたかった。何事も気持ちいいのに、どこか決定的な快感が遠くてじれてきてしまう。
「お、願いです……」
「なんですか?」
くすくすと疑問で受けながら男の意図は明らかだ。由郁からほしいと言わせたいのであろう。身をくねらせて、恨みがましく野端の顔を睨むが、普段オフィスで彼を追い立てているような迫力はないだろう。
優しいのに、彼の手のひらは意地悪である。耳をなぶるのに飽きたのか、そっと手の甲を使って、彼女の首筋をたどり、髪に指を滑らして梳る。
「しゃちょ、う……」
「仕事では物覚えが良いのに、ベッドでは物覚えが悪いんですね」
笑いながら、首筋に今度は唇が滑る。舌先で時折舐められ、腰が揺らいだ。もっと強い刺激がほしい。今日別れた男はキスをして、由郁の胸の尖りをきつくいじって、そして突っ込んでくるような直線的なセックスしかしてこなかったが、野端は決して由郁の簡単に感じるような部分に触れてこない。
「颯斗っさん。お願い……っ」
「お願い事はちゃんと内容を言わないとわかりませんよ? 由郁」
そう言いながら濃い空色のブラジャーのカップを片方だけ引き下げる。ふるりと、由郁の白く丸い胸が外気に片方だけ触れる。
「もう勃っているんですね。可愛い胸ですね」
くにゃりと指先でゆるくつままれて、体が少しだけ跳ねる。きつくはない。きつくはないが、つままれて少しだけひねられたことがわかる指の動きに体が跳ねた。
「んあっ」
「ぷっくりと膨らんでますよ。ここ」
少しだけ色濃くなっている乳輪を指で辿られる。この男はどうも、自分の体のあらゆるところを指でたどることに使命感でもあるのではないだろうかと由郁の溶けかけた頭によぎった。
「可愛いですね。どこもかしこも可愛い。でもここは色づいて誘っているようで本当に可愛いです」
ふっと胸の尖りに息を吹きかけられて身を震わせると、まるで野端に差し出すように胸が揺れた。ぱくりと強くかじられて、脳天がしびれるようだった。
「ああ……ンっ。やぁぁ……!」
ぢゅっ、と音を立てて食まれて、吸いつかれると鋭い快感が胸先から背筋に登っていく。思わず男の肩に手をかけると、まったく彼のスーツは乱れていないことに気がついた。自分だけブラウスを全開にされ、片方だけ胸を露出させられ、乱れている。まるで由郁の様々な反応を観察するように男は、残された片方に指を差し込んでやわやわと丸い胸を揉んでくる。
「とても柔らかくて良い匂いがしますね。ふふ。どんどんあなたの匂いが濃くなってきてます」
「はぁ……んっやっ」
快感で涙の膜がたまっていく。男の名を唇にのせて懇願するしかない。そうやって彼の名を呼ぶことで甘い疼きが高まるようだった。
「颯斗さん、はやと、さんっ……っ」
「ん。なんですか?」
「もうっ……」
「だめですよ。由郁。あなたの可愛さをもっと見せてもらわないと」
かちゃりとかすかな音を立てて、由郁のパンツのベルトが引き抜かれる。そっとそのまま、パンツも引き抜かれて、ブラウスと下着だけが身につけているものになった。ふと心もとなくなり、男を見上げると、目を嬉しそうに細めて微笑まれる。穏やかな普段の仕草でどこか埋没してしまうが、整った顔立ちをしていることに改めて驚かされる。目尻は少しだけ下がっているが、それでも切れ長の目をしている。その瞳の奥は不穏な色香をたたえながら由郁を眺めている。しゅ……っとかすかな絹が擦れる音と共に彼はネクタイを解いて、ジャケットを脱いで床に落とした。その仕草だけで、きゅんとなる。
「ああ。もうこんなになっている」
少しだけ残念そうに言いながら、野端は体を由郁の足の間にねじ込んで、ショーツのクロッチの部分をそっと撫でた。
「んっ――」
「かんじゃダメですよ」
顎を指先だけで掴まれて、嬌声を飲み込んだ唇をほどかされる。
「あ。颯斗さ――」
下唇の敏感な粘膜の部分を舌で辿られ、言葉を封じ込められるが、そくりとした快感に背中をしならせた。ブラウスに手を入れられ、脱がされる。その時に、二の腕の無防備な裏側に彼の指が滑る。ぞわわっと快感が突き抜けてふるりと震えた。
「あ、ん」
「腕を撫でただけなのに感じるんですね。可愛い体だ」
そう微笑んで野端はまるで標本に蝶を止めるように由郁の両腕を縫い止めた。腕の内側を撫でられ、脇に唇を埋められる。かさりと乾いた男の唇が滑らかで、そして薄い皮膚の上を通り抜けていく。さりっとした男の唇が由郁をまた追い詰めていく。
「はぁん……っ」
「上半身しかほとんど触ってないのに、あなたの下の口はよだれを垂らして大変ですね」
「もっと触って――」
息も絶え絶えに懇願するが、男はまた由郁の唇を塞ぐ。ちゅっというリップ音と共にしめった男の舌が口内を嬲る。
「ああ。あなたの唇、いつも野いちごのようだって思ってたら、本当に甘いのですね」
絡めあっていると、どんどんと自分の口内に相手のものなのか、自分のものなのかわからない透明な体液がたまって流れようとする。
「こぼさないでそのまま飲み込みなさい」
ちゅ、ちゅっとさらに音を立てて唇を貪られ、時折舌先を強く吸われる。溶けた思考は男の命令に素直に従う。こくりと飲み込むと喉に少しだけ粘ついた体液が流れていくのを感じる。
「よくできました」
「真珠のように、なめらかな肌ですね」
耳の上をかじられて、舌先でそこを舐めながら野端が囁く。濡れた低い男の声にくすぐられて、由郁は甘い吐息を漏らした。耳元で囁かれるだけで腰が砕けそうになるなんてと、由郁はこれから行われることを考えると自然と両足をすりあわせた。
「感じ易いんですね。とてもかわいいですよ」
くすくすとまだ耳を嬲っていた男の声でさらに体の中心に、甘く重い期待感が募った。男はさらに露わになった由郁の腹からみぞおちへと指を上に滑らして、美しい刺繍で彩られたブラジャーに守られた下乳を指でたどる。
――嬲られてる。
そんな風に思うと、下腹のあたりがさらにきゅんとした。野端の手はすべて優しく動きも柔らかだ。なのに嬲られていると感じて、びくりと体が震えた。
「耳も可愛いですね」
外耳の輪郭を指でそっと辿られ、呻く。まだブラウスだけ、はだけられただけである。なのに自分の中心がどんどん潤っていく。耳の上の軟骨を親指で撫でられ、そくりと身を震わす。期待もあるし、性急にこの男の胸のうちに逃げ込んでしまいたかった。何事も気持ちいいのに、どこか決定的な快感が遠くてじれてきてしまう。
「お、願いです……」
「なんですか?」
くすくすと疑問で受けながら男の意図は明らかだ。由郁からほしいと言わせたいのであろう。身をくねらせて、恨みがましく野端の顔を睨むが、普段オフィスで彼を追い立てているような迫力はないだろう。
優しいのに、彼の手のひらは意地悪である。耳をなぶるのに飽きたのか、そっと手の甲を使って、彼女の首筋をたどり、髪に指を滑らして梳る。
「しゃちょ、う……」
「仕事では物覚えが良いのに、ベッドでは物覚えが悪いんですね」
笑いながら、首筋に今度は唇が滑る。舌先で時折舐められ、腰が揺らいだ。もっと強い刺激がほしい。今日別れた男はキスをして、由郁の胸の尖りをきつくいじって、そして突っ込んでくるような直線的なセックスしかしてこなかったが、野端は決して由郁の簡単に感じるような部分に触れてこない。
「颯斗っさん。お願い……っ」
「お願い事はちゃんと内容を言わないとわかりませんよ? 由郁」
そう言いながら濃い空色のブラジャーのカップを片方だけ引き下げる。ふるりと、由郁の白く丸い胸が外気に片方だけ触れる。
「もう勃っているんですね。可愛い胸ですね」
くにゃりと指先でゆるくつままれて、体が少しだけ跳ねる。きつくはない。きつくはないが、つままれて少しだけひねられたことがわかる指の動きに体が跳ねた。
「んあっ」
「ぷっくりと膨らんでますよ。ここ」
少しだけ色濃くなっている乳輪を指で辿られる。この男はどうも、自分の体のあらゆるところを指でたどることに使命感でもあるのではないだろうかと由郁の溶けかけた頭によぎった。
「可愛いですね。どこもかしこも可愛い。でもここは色づいて誘っているようで本当に可愛いです」
ふっと胸の尖りに息を吹きかけられて身を震わせると、まるで野端に差し出すように胸が揺れた。ぱくりと強くかじられて、脳天がしびれるようだった。
「ああ……ンっ。やぁぁ……!」
ぢゅっ、と音を立てて食まれて、吸いつかれると鋭い快感が胸先から背筋に登っていく。思わず男の肩に手をかけると、まったく彼のスーツは乱れていないことに気がついた。自分だけブラウスを全開にされ、片方だけ胸を露出させられ、乱れている。まるで由郁の様々な反応を観察するように男は、残された片方に指を差し込んでやわやわと丸い胸を揉んでくる。
「とても柔らかくて良い匂いがしますね。ふふ。どんどんあなたの匂いが濃くなってきてます」
「はぁ……んっやっ」
快感で涙の膜がたまっていく。男の名を唇にのせて懇願するしかない。そうやって彼の名を呼ぶことで甘い疼きが高まるようだった。
「颯斗さん、はやと、さんっ……っ」
「ん。なんですか?」
「もうっ……」
「だめですよ。由郁。あなたの可愛さをもっと見せてもらわないと」
かちゃりとかすかな音を立てて、由郁のパンツのベルトが引き抜かれる。そっとそのまま、パンツも引き抜かれて、ブラウスと下着だけが身につけているものになった。ふと心もとなくなり、男を見上げると、目を嬉しそうに細めて微笑まれる。穏やかな普段の仕草でどこか埋没してしまうが、整った顔立ちをしていることに改めて驚かされる。目尻は少しだけ下がっているが、それでも切れ長の目をしている。その瞳の奥は不穏な色香をたたえながら由郁を眺めている。しゅ……っとかすかな絹が擦れる音と共に彼はネクタイを解いて、ジャケットを脱いで床に落とした。その仕草だけで、きゅんとなる。
「ああ。もうこんなになっている」
少しだけ残念そうに言いながら、野端は体を由郁の足の間にねじ込んで、ショーツのクロッチの部分をそっと撫でた。
「んっ――」
「かんじゃダメですよ」
顎を指先だけで掴まれて、嬌声を飲み込んだ唇をほどかされる。
「あ。颯斗さ――」
下唇の敏感な粘膜の部分を舌で辿られ、言葉を封じ込められるが、そくりとした快感に背中をしならせた。ブラウスに手を入れられ、脱がされる。その時に、二の腕の無防備な裏側に彼の指が滑る。ぞわわっと快感が突き抜けてふるりと震えた。
「あ、ん」
「腕を撫でただけなのに感じるんですね。可愛い体だ」
そう微笑んで野端はまるで標本に蝶を止めるように由郁の両腕を縫い止めた。腕の内側を撫でられ、脇に唇を埋められる。かさりと乾いた男の唇が滑らかで、そして薄い皮膚の上を通り抜けていく。さりっとした男の唇が由郁をまた追い詰めていく。
「はぁん……っ」
「上半身しかほとんど触ってないのに、あなたの下の口はよだれを垂らして大変ですね」
「もっと触って――」
息も絶え絶えに懇願するが、男はまた由郁の唇を塞ぐ。ちゅっというリップ音と共にしめった男の舌が口内を嬲る。
「ああ。あなたの唇、いつも野いちごのようだって思ってたら、本当に甘いのですね」
絡めあっていると、どんどんと自分の口内に相手のものなのか、自分のものなのかわからない透明な体液がたまって流れようとする。
「こぼさないでそのまま飲み込みなさい」
ちゅ、ちゅっとさらに音を立てて唇を貪られ、時折舌先を強く吸われる。溶けた思考は男の命令に素直に従う。こくりと飲み込むと喉に少しだけ粘ついた体液が流れていくのを感じる。
「よくできました」
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