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「私が怖いですか?」
ひやりとするが、どちらかというとドキドキする方が強い気がした。ちなりは小さく首を振る。なぜだろう。先ほど元カレを見ただけで倒れたのに、一柳は全く怖くない。
「このマンションにお住いの皆さんは、本当にご自分の力で事業を回されて、そうして、自分の道を切り開かれてきた方ばかりです。ちなりさんも、ご自分の力でここを購入されてるわけですよね」
「――もちろん。だってこのマンション、起業家優先でしか入れないんでしょ?」
ちなりが最初つかったのは、高校生まで頑張って貯めてきた貯金だけでしかない。その虎の子とも言うべき貯金を使って起業したのだ。今でも、最初に費用を振り込んだときの手の震えを思い出す。
「あなたが店に初めて入ってきたときに、なんて寂しそうな瞳をした人なんだろうって思ったんですけど、そんなことがあったからなんですね」
やさしく、片方の手で頭を撫でられる。ツルツルとした自分の髪の上を滑る男の指先が心地よくて、うっとりしてしまう。どうしてこんなに安心できるのだろう。同じ男でも、こんな風に安心できることは今までなかったのに……。
「あのっ――」
「なんですか?」
平常な声音で言われて少しだけ失望する。一柳はあくまでも、仕事の延長線上で自分に接しているのではないかと。こんな扇情的な下着に薄いシーツを巻いただけの若い娘を抱きしめて何も感じないんだろうか?
もしかすると自分の仕事のコンセプトが間違えているのか? と少し心配になってそろっと口に出した。
「一柳さんっは、この下着見てどう思います?」
ぴくりと抱きしめている腕の筋肉が少しだけ動いたように思って、恐る恐る、一柳の顔を見上げてみた。
「どう思う、とは……」
「いいなとか、脱がしてみたいとか、そういうのは思いもしなかった?」
そういうと、猛禽類のような笑みを一柳が浮かべた。
「なるほど。ちなりさんは、私が誘惑されるかどうかが知られたいと」
「え?」
そう思った時には、くるりと視界が回って、背中はスプリングの効いたベッドの感触を感じていた。
「あの、いち、りゅう、さ――」
言葉を継ごうと思ったら、熱く柔らかなものが己の唇にかぶさってくる。
「ん。むぅ……」
上唇を食まれ、閉じかけた唇の間に舌をねじ込まれる。時折、一柳の吐息が薄い皮膚にかかってぞわぞわっと背中が震えだす。まだシーツで体は包まれているが、間を合わせるように掴んでいた指から力が抜けている。そうして、つつー……と上唇を濡れた舌先がなぞりあげられて、さらにちなりはくぐもったうめき声をあげた。
「上唇の右端が弱いんですね、ちなりさんは」
ぼんやりと一柳をみると妖しい微笑みを浮かべて、見下ろしているのがわかった。
「いち……りゅうさん」
「さっきの質問の答え、ちゃんと教えてあげます。ただし途中で止まりませんからね」
「え……?」
ぼんやりとしていて、咄嗟に何のことかがわからなかったが、シーツの合わせ目に一柳の骨ばった長い指先が忍び込んで、はらりとシーツが肌からずり下がっていく。
「あっ」
美しくくびれたちなりの横腹にそのまま一柳の手のひらが滑り出す。触れられると、形が整った美しい指なのに労働のためか、少し硬くてちなりの薄い皮膚に少しだけ引っかかる。その引っかかっていく感触が、今から起こることをちなりに強く意識をさせた。
「とても綺麗ですね。触ると柔らかくて、なめらかで……。触れると少しだけ震える」
そう言って脇腹に触れながら、一柳がまたちなりにキスを落とし始める。息苦しいのに甘くて、熱くてどんどんと思考が溶け始めていく。ちゅっといくつものリップ音が耳に届くが、一柳の長いキスに翻弄されて、ちなりは受け入れるだけで必死である。歯列を舌でなぞられ、そのまま舌先をちなりの舌に絡めてくる。
お互いの混ざり合った唾液が、くちゅ、くちゅ……と音を立てて潤滑油のように絡み合う舌を滑っていく。
「ん――」
「甘い声をあげてるちなりさんは本当に素敵です。この辺ほんのりピンクに染まってますよ」
一柳が顔を上げて、そっとちなりの鎖骨近辺を撫でると、ふるっと体が震える。全身が一柳に触れてもらうのを待っているようだった。
「ちなりさんの下着、他には誰も見てないんですか?」
「こ、これは、誰も見てない、よ?」
「これは?」
「え。だ、だって、サイトの商品写真撮影するのに――」
そう答えた瞬間に、どういうことか悟ったのだろう。一柳が少し乱暴に、唇を合わせて貪ってくる。余裕がないのか、ちなりの体に少しだけ彼の重みが移ってくる。重たいのに熱いその体が感じられて嬉しいと思って、一柳の背中に自らの腕を伸ばす。
ちなりからすると、着たものがないと、女性は想像がつかないだろうからとおもって、販売サイトに上がっている画像は自分で着て撮影していた。そもそも大手通販サイトの大抵は、アジア人ではなく欧米人のモデルを使った画像が多い。それでは、購入する女性たちも親近感を持てないだろうと思ったのと、単純にモデル探しと費用がもったいないからそうしていたわけではあるが。
「あ、あ、ああぁっ――」
胸のふくらみの中心に入った切れ込みの隙間から指先が侵入してきて、立ち上がったちなりの胸の尖りを擦ってきた。鋭い快感に背中が反って、嬌声が口から漏れる。
「インターネットなんて滅びてしまえばいいのに……!」
一柳がしゃがれた低い声でそんなことを言う。
「あ、んっ。だ、だって。その方がコスト抑えられるし、フィット感も試せるし……!」
「なんて、脇の甘い人なんだ」
「や、か、顔は出してない……!」
「出してなくてもっ!」
ぎゅっと尖りをひねられて、硬い痛みと快感が身体の中心を走り抜ける。
「きゃ……ぁっ」
感じたことがない感覚は、浮遊感と落下感がないまぜになったような気分を与えて、ちなりは一柳にすがりついた。顎に口付けられ、そのまま首筋にかじりつかれる。甘い疼きを持った痛みが全身に広がっていく。吐息がかかるだけで震えるのに一柳はそんなちなりの様子に微笑んだ。
「モデルは何とかするから、もう二度と自分の写真をアップしないでください」
甘い低い声音がそっと耳元に落とされると、よく考えもせずにちなりは潤んだ瞳を揺らしながら是と答えるしかない。右側の胸に忍び込んだ指先が、胸をやわやわと揉む。体を洗う時に自分の胸に触れるが、こんな風に身体の中心に快感が降り積もっていくような気分になることはない。
ひやりとするが、どちらかというとドキドキする方が強い気がした。ちなりは小さく首を振る。なぜだろう。先ほど元カレを見ただけで倒れたのに、一柳は全く怖くない。
「このマンションにお住いの皆さんは、本当にご自分の力で事業を回されて、そうして、自分の道を切り開かれてきた方ばかりです。ちなりさんも、ご自分の力でここを購入されてるわけですよね」
「――もちろん。だってこのマンション、起業家優先でしか入れないんでしょ?」
ちなりが最初つかったのは、高校生まで頑張って貯めてきた貯金だけでしかない。その虎の子とも言うべき貯金を使って起業したのだ。今でも、最初に費用を振り込んだときの手の震えを思い出す。
「あなたが店に初めて入ってきたときに、なんて寂しそうな瞳をした人なんだろうって思ったんですけど、そんなことがあったからなんですね」
やさしく、片方の手で頭を撫でられる。ツルツルとした自分の髪の上を滑る男の指先が心地よくて、うっとりしてしまう。どうしてこんなに安心できるのだろう。同じ男でも、こんな風に安心できることは今までなかったのに……。
「あのっ――」
「なんですか?」
平常な声音で言われて少しだけ失望する。一柳はあくまでも、仕事の延長線上で自分に接しているのではないかと。こんな扇情的な下着に薄いシーツを巻いただけの若い娘を抱きしめて何も感じないんだろうか?
もしかすると自分の仕事のコンセプトが間違えているのか? と少し心配になってそろっと口に出した。
「一柳さんっは、この下着見てどう思います?」
ぴくりと抱きしめている腕の筋肉が少しだけ動いたように思って、恐る恐る、一柳の顔を見上げてみた。
「どう思う、とは……」
「いいなとか、脱がしてみたいとか、そういうのは思いもしなかった?」
そういうと、猛禽類のような笑みを一柳が浮かべた。
「なるほど。ちなりさんは、私が誘惑されるかどうかが知られたいと」
「え?」
そう思った時には、くるりと視界が回って、背中はスプリングの効いたベッドの感触を感じていた。
「あの、いち、りゅう、さ――」
言葉を継ごうと思ったら、熱く柔らかなものが己の唇にかぶさってくる。
「ん。むぅ……」
上唇を食まれ、閉じかけた唇の間に舌をねじ込まれる。時折、一柳の吐息が薄い皮膚にかかってぞわぞわっと背中が震えだす。まだシーツで体は包まれているが、間を合わせるように掴んでいた指から力が抜けている。そうして、つつー……と上唇を濡れた舌先がなぞりあげられて、さらにちなりはくぐもったうめき声をあげた。
「上唇の右端が弱いんですね、ちなりさんは」
ぼんやりと一柳をみると妖しい微笑みを浮かべて、見下ろしているのがわかった。
「いち……りゅうさん」
「さっきの質問の答え、ちゃんと教えてあげます。ただし途中で止まりませんからね」
「え……?」
ぼんやりとしていて、咄嗟に何のことかがわからなかったが、シーツの合わせ目に一柳の骨ばった長い指先が忍び込んで、はらりとシーツが肌からずり下がっていく。
「あっ」
美しくくびれたちなりの横腹にそのまま一柳の手のひらが滑り出す。触れられると、形が整った美しい指なのに労働のためか、少し硬くてちなりの薄い皮膚に少しだけ引っかかる。その引っかかっていく感触が、今から起こることをちなりに強く意識をさせた。
「とても綺麗ですね。触ると柔らかくて、なめらかで……。触れると少しだけ震える」
そう言って脇腹に触れながら、一柳がまたちなりにキスを落とし始める。息苦しいのに甘くて、熱くてどんどんと思考が溶け始めていく。ちゅっといくつものリップ音が耳に届くが、一柳の長いキスに翻弄されて、ちなりは受け入れるだけで必死である。歯列を舌でなぞられ、そのまま舌先をちなりの舌に絡めてくる。
お互いの混ざり合った唾液が、くちゅ、くちゅ……と音を立てて潤滑油のように絡み合う舌を滑っていく。
「ん――」
「甘い声をあげてるちなりさんは本当に素敵です。この辺ほんのりピンクに染まってますよ」
一柳が顔を上げて、そっとちなりの鎖骨近辺を撫でると、ふるっと体が震える。全身が一柳に触れてもらうのを待っているようだった。
「ちなりさんの下着、他には誰も見てないんですか?」
「こ、これは、誰も見てない、よ?」
「これは?」
「え。だ、だって、サイトの商品写真撮影するのに――」
そう答えた瞬間に、どういうことか悟ったのだろう。一柳が少し乱暴に、唇を合わせて貪ってくる。余裕がないのか、ちなりの体に少しだけ彼の重みが移ってくる。重たいのに熱いその体が感じられて嬉しいと思って、一柳の背中に自らの腕を伸ばす。
ちなりからすると、着たものがないと、女性は想像がつかないだろうからとおもって、販売サイトに上がっている画像は自分で着て撮影していた。そもそも大手通販サイトの大抵は、アジア人ではなく欧米人のモデルを使った画像が多い。それでは、購入する女性たちも親近感を持てないだろうと思ったのと、単純にモデル探しと費用がもったいないからそうしていたわけではあるが。
「あ、あ、ああぁっ――」
胸のふくらみの中心に入った切れ込みの隙間から指先が侵入してきて、立ち上がったちなりの胸の尖りを擦ってきた。鋭い快感に背中が反って、嬌声が口から漏れる。
「インターネットなんて滅びてしまえばいいのに……!」
一柳がしゃがれた低い声でそんなことを言う。
「あ、んっ。だ、だって。その方がコスト抑えられるし、フィット感も試せるし……!」
「なんて、脇の甘い人なんだ」
「や、か、顔は出してない……!」
「出してなくてもっ!」
ぎゅっと尖りをひねられて、硬い痛みと快感が身体の中心を走り抜ける。
「きゃ……ぁっ」
感じたことがない感覚は、浮遊感と落下感がないまぜになったような気分を与えて、ちなりは一柳にすがりついた。顎に口付けられ、そのまま首筋にかじりつかれる。甘い疼きを持った痛みが全身に広がっていく。吐息がかかるだけで震えるのに一柳はそんなちなりの様子に微笑んだ。
「モデルは何とかするから、もう二度と自分の写真をアップしないでください」
甘い低い声音がそっと耳元に落とされると、よく考えもせずにちなりは潤んだ瞳を揺らしながら是と答えるしかない。右側の胸に忍び込んだ指先が、胸をやわやわと揉む。体を洗う時に自分の胸に触れるが、こんな風に身体の中心に快感が降り積もっていくような気分になることはない。
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