ぼくの終わりの話

まめ

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「ねえ、ひろくん。セックスはいつするの?」

「ゆうは怖がりだから、地球が終わるときにひとつになってるのがいいと思うんだ。だから、明日の朝にしよ」

「それは安心するかもー。ひろくん頭いい!」

「じゃあ、今日はもう寝ようか。歯磨きしろよ」

 ぼくは歯磨きをしながら、明日で終わりなのに虫歯を気にするのがおかしくなって、ゲラゲラ笑いながらうがいをした。面白い音が出て、笑いすぎてむせた。

 ベッドに横たわると、ひろくんもふとんに入ってきた。
 今日はいろんなことがありすぎた。
 ぼくの脳は通常より多い情報量に耐えられなかったようで、気がついたらもう朝だった──

「ひろくん、もう朝だよ!
 ぼく時間をワープしたかもしれない!さっきまで夜だったのに……」

「ゆうは、それはそれはぐっすりお眠りでしたよ?」

「やっぱりー?
 あはは!ワープじゃない!
 最後に超能力が目覚めたらかっこいいのに!」

「地球を救うのか?」

「いや、なにもしないけど」

「じゃ、セックスしてみようか」

「うん。ひろくん、よろしくお願いします」

 ぼくは目覚めたままの姿で、ベッドに横たわり、静かにベッドのすみに腰かけるひろくんに、大きく手を広げた。
 朝の光がカーテンの隙間からこぼれて、ひろくんの輪郭を柔らかく浮かび上がらせている。彼の姿はいつもみたいに、どこかぼんやりとしていた。

 ひろくんがぼくにゆっくりと覆い被さってきた。
ぼくの唇に自分の唇を重ねようとして、ほほえみながら言った。

「ゆう、目を閉じて……
 ただ感覚だけで俺を受け入れて──」

 ぼくは目を閉じた。ひろくんの声が、頭の中じゃなくて、もっと深いところ、胸の奥とか、体の輪郭の内側で響いてる気がした。彼の手が、そっとぼくの髪に触れた──いや、触れたって感じじゃない。ひろくんの存在が、ぼくの肌をすり抜けて、ぼくの深いところにしみ込むみたいだった。

「ひろくん……」

「ゆう、どうかした?」

 彼の声が、ぼくの心の隙間を埋めるように流れ込んできた。唇からひろくんが入ってきた。  水面に落ちた一滴が波紋を広げるみたいに、ぼくの輪郭を溶かしていく。ずぶずぶと彼が染みてくる。
 どこまでがぼくで、どこからがひろくんなのか、あいまいになったとき、体の中心になにかの熱を感じた。

「これがセックスなの?」

「うーん、違うかも……
 ゆう、俺が中にいるのわかる?」

「あっ!わかるよ!
 ひろくんが中にいる!すごい!」

 ひろくんの存在を体で感じるのは、初めてかもしれない。

「すごいだろ!ゆう、目を閉じたまま、ただ感じてよ」

「ひろくん、ぼくの中をいっぱいにして……
 そしてひとつになってほしいんだ……」

「うん、了解した」

「ひとつになったら、もうお話できないかな?」

「……なってみないとわかんないね」

 ぼくたちは、体を合わせた場所からとけ合っていった。彼の体がぼくの中に完全に入りきって、ぼくをいっぱいに満たす。細胞の隅々までひろくんが重なった。
 そしてぼくたちは、あの事故に合う前の、ひとつの存在に戻った。

(ひろくん、聞こえる?)
(聞こえるよ)
(今まで一緒にいてくれてありがとう)
(ゆうが呼んだから、俺は生まれたし、ずっと一緒だよ)
(だね!)

──そのとき、ごうって風の音がした。
ぼくは幸せだったと思───────

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