オレの番になって──異世界に行って愛猫の番にされる話

まめ

文字の大きさ
3 / 32
こんにちは異世界

03 おなかがすいた

しおりを挟む

ぐーきゅるるる、自分のおなかの音で目が覚めた。
 
そういや、昨日からなにも食べてなかった。いろいろありすぎて、眠ってしまったけど。
ぼくの横に、ネロはいなかった。一瞬、昨日の再会は夢なのではないかと、不安になるけど、ベッドはネロの寝た形にへこみ、わずかにぬくもりが残っている。さっきまでここにいたんだ。
……ああ、よかった。ぼくはひとりじゃない──この世界でネロと生きていけるんだ。

今まで、ひとりでいることはそんなにつらくはなかった。でも、気の合う誰かと一緒にすごす心地よさを知ってしまうと、とたんにひとりがさみしくなってしまった。誰かって言っても、猫なんだけどね。

***
 
窓を開けると、早朝のひんやりした清浄な空気が入ってくる。今日も晴れだ。頭上では木漏れ日がちらちらと踊っている。聞こえるのは、ちゅりちゅりさえずる小鳥の声、風が揺らす木々の葉ずれの音、どこかで水の流れる音──ああ、そうだ。まず水を探さなくちゃ。
ぼくは、部屋にあったケトルを片手に、外に出た。
家の周りをぐるりとすると、ありがたいことに、裏庭に小さな泉を見つけた。幅一メートルくらいのお椀形に掘られている中央からは、こんこんと澄んだ水が涌き出ていた。泉の水は、細い小川に流れこんでおり、森の奥へとつながっていた。さざなみでキラキラ光る水の中で、小魚や川エビが遊んでいた。

「さっき聞こえた水の音は、この小川からだったのか」

ぼくは、水の中にゆっくり手を入れた。地中深くから涌いたばかりの清水は、とても冷たくて目が覚めるようだった。
そのまま水をすくいあげて、ばしゃばしゃと顔を洗う。昨日ネロになめられまくった髪も、軽くすすぎ、ちょっとのつもりが、全身びしょびしょになってしまった。濡れたシャツが体に張り付く。
さすがにここで服は脱げないので、ケトルに水を汲んで、家に入る。
室内で服を脱いだとしても、着替えがないので乾くまでずっと全裸?それは困る。
 
「この家のタンスをまだ開けてなかったな。
服入ってないかな?靴もほしいな」

備え付けのタンスを、少し期待しながら開けてみると、そこには、風合いのある生成り色のシャツ、ズボン等、生活に必要な衣類が、何枚も入っていた。隣のクローゼットには、フード付きコートと肩掛けカバン、柔らかいなめし革のブーツ、サンダルがあった。

「ひゃー!服あったぁー!
神様、至れり尽くせりだぁ!ありがとうございますーーーーっ!」

今まで無神論者だったけど、こんなの感謝しかない。礼儀も作法もしらないけど、ぼくはとにかく神様に"ありがとう"を伝えたかったので、大きな声でお礼を叫んで、濡れた服を脱いだ。
いきなりドアがばーん!と開いて、慌てた様子のネロが飛び込んできたのは、ぼくが素っ裸になって、タオルで体を拭いているときだった。

「がう!!!!!」

「あ!ネロ、おはよう!」

ネロは、あわただしく部屋の隅から隅までチェックして、誰もいないのを確認すると、こちらを向いてこてんと首をかたむけた。

「ん?どうした?誰もいないよ。
ぼくの独り言が聞こえた?
タンスに服があったから、神様にありがとうって言ってたの。
もしかして心配して飛んできたの?」

タオルでわしゃわしゃと髪の水気をとりながら、ネロに話しかける。
ネロのよだれでべたべただった肌が、すっきりして気持ちいー!その心の声が聞こえてしまったのだろうか。笑顔のぼくに、剣呑な目をしたネロが飛びかかった。
かくして、一糸纏わぬ裸のぼくは、床の上でネロの下敷きになり、本当に頭の先から足の爪の先まで、ざりざりの舌でなめられることになった。
マーキングってやつ?ぼくに自分の匂いをつけたいみたい。
大事なとこまで、丁寧になめられて、つい、声がもれてしまう。

「……あっ、あっ、ネロぉ、離してぇ……」
 
ちょっと変な気分になってしまった。ネロの舌が気持ちいいのが悪いし、わかってやっているようにすら見える。ぼくはネロに床に押し付けられたまま、無意識に腰を揺らし──
ぐるるるるー!
はっ!おなかの音に正気を取り戻す。ぼくはまだ水しか手に入れていないことに気づいた。ちんちんを硬くしてる場合じゃないぞ。

「ネロ!こんなことより、ごはんをなんとかしないと!」

「がう!がう!」

未だぼくを離す気のないネロは、びたんびたんとしっぽを床に叩きつけ、不服の意をしめした。
ぼくは、ネロの大きな背中をばんばんと叩いて、こちらもひかないぞとしめす。

「なにか食べないと、お腹ペコペコで死んじゃうかもしれないよ。この森に十分な食べ物があるかも、まだわからないんだし」

おなか空いちゃったなあ。ぼくは悲しそうな顔をして、自分のへこんだ腹をなで、ひもじそうにして見せると、ついにネロの拘束が解けた。

「服着るからさ、一緒に森を歩こうよ」

「がう!」

「そういえばネロ、さっきまでどこに行ってたの?」

「がう!」

生成りのシャツに、足首まであるズボン、ブーツを履いて、準備完了だ。
ネロは、ぼくの服の袖を軽く噛んで引っ張ると、外に向かった。さっきまで出かけていたようだし、なにかいいものを見つけたのかもしれない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました

天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。 そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。 はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。 優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。 「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

強面龍人おじさんのツガイになりました。

いんげん
BL
ひょんな感じで、異世界の番の元にやってきた主人公。 番は、やくざの組長みたいな着物の男だった。 勘違いが爆誕しながら、まったり過ごしていたが、何やら妖しい展開に。 強面攻めが、受けに授乳します。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

処理中です...