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首都
28 家に帰ろう
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隷属の首輪が消滅してから1ヶ月。
神様のおかげだろう、新たに隷属の首輪を作ることは出来なくなっていた。もともとがいろんな魔法の重ね合わせで、奇跡のようにして生まれた代物だ。神様が禁じてしまえば、もう人間はその恩恵に預かることは出来なかった。たまに立ち寄ってくれるオギューさんからも、人間との歩み寄りは少しずつ進んでいると聞いていた。
ぼくは順調に回復を重ねていたところ、ライとレフが帰ってきたのをきっかけに、加護の助けを借りて、ついに全快した。
「周!ただいまー!」
「ようやくこの姿に戻れましたー!」
ライとレフは、世界中に加護を届けた後、粒子のように細かくなって、世界をとりまく命の流れに溶けたそうだ。ぼくもここに転生する前に、その中に溶け込んだ記憶がある。たくさんの命が還り、生まれる場所――みんなあの中で一緒になるんだね。
「世界中に散らばりすぎちゃって、私の欠片が集まるのに時間がかかってしまいましたー」
「面白かったな!あんなの俺史上初めてだよ!」
「あの時はほんとにありがとう!また会えてうれしいよ!」
ライとレフとの再会。全て失くしたと思っていたのに、ぼくの周りは少しずつ元通りになっていく。胸にあたたかいものが満ちていく。
ふと思い出したように、ライが言った。
「あ!そういえば、家に放火したアイツ覚えてる?」
「うん、火の精霊だったよね」
「アイツ――バアルって言うんだけど、うちに来るってさ」
「神様が言ってたー!」
「へ、なんで?復讐しに来るの?怖ぁ!」
「違うけど。あとは本人から聞いてよー。火が使えたら便利だよー」
「そうだな!周!外でバーベキューしようぜっ!肉!肉!」
ネロがノリノリで会話に参加してきた。お肉が好きだったのか。あの家では、手に入る食べ物があまりなくて、毎日卵とりんごしか食べてなかったもんね。
「おまえ誰ー?その色はもしかしてネロ?」
「ほわぁ、獣人だったのか」
「今頃気づいたのかよ。最初からずっと周の隣にいたんだが」
「俺たち、周にしか興味ないもん」
「ネロは周のおまけー!」
「あははっ!ネロ、言われてるぅ!」
「ひでぇ!」
***
家の仲間が全員揃ったことで、ぼくたちは神の高台にある家に戻ることにした。
今までお世話になった、スミや獣人のみなさんにお礼を伝え、神の高台の近くまで馬車で送ってもらった。
馬車を降りたのは、ちょうど、ヤギ獣人のミノンと初めて出会った岩塩の取れる崖あたりだった。
黒い塩の塊を目で探しながら歩いていると、後ろから、ぼくを呼ぶ明るい声がした。
「あまねーーー!お帰りーーー!」
ミノンだった。相変わらず元気いっぱいだ。
「オギューのおいちゃんから、今日帰ってくるって聞いたから、楽しみに待ってたんだ!都では、いろいろ大変だったみたいだね。
村のみんなが、首輪が取れて喜んでたよ!ありがとー!」
「ミノン!久しぶり!
教会でオギューさんに会ったよ。忙しそうにしてた」
「おいちゃん、人をまとめるのが得意だし、水牛は心も体も強い種族だから、あっちでも頑張れると思うよ!
都から逃げてきた獣人も村に住むようになって、前よりにぎやかな村になったんだー!
また遊びにきてよ!」
あの隠れ里での経験が無かったら、きっと隷属の首輪は今も獣人を苦しめていただろうし、ぼくもそれを遠くでながめるだけだったろう。
ミノンは結果的に、獣人の未来を救ったことになる。本人はそんなこと思いもよらないだろうけど。
「うん、ありがとう!また遊びに行くよ!」
ぼくは、ミノンと岩塩を探しながら、高台の森の手前で別れた。
今日はライとレフを呼び出していないので、ここからはネロと歩く。
二人きりになったのは、ずいぶん久しぶりだった。
「ネロ、いろいろあったね……というか、いろいろありすぎた!どこから話せばいいかわからないくらいだよ」
「これからはずっと一緒なんだ。ゆっくり話せばいいよ。
オレも周に話したいことがいっぱいある」
背の高い針葉樹の森の、すうっとした匂いに包まれながら、ぼくたちは手をつないで家路についた。
ネロの手はもう猫の手じゃない。少し節くれだった五本の指が、ぎゅっとぼくの指に絡む。これは恋人つなぎってやつだ。
変わり始めたぼくたちの関係に、照れくさいものを感じながら、ぼくも彼の手をぎゅっと握り返した――
神様のおかげだろう、新たに隷属の首輪を作ることは出来なくなっていた。もともとがいろんな魔法の重ね合わせで、奇跡のようにして生まれた代物だ。神様が禁じてしまえば、もう人間はその恩恵に預かることは出来なかった。たまに立ち寄ってくれるオギューさんからも、人間との歩み寄りは少しずつ進んでいると聞いていた。
ぼくは順調に回復を重ねていたところ、ライとレフが帰ってきたのをきっかけに、加護の助けを借りて、ついに全快した。
「周!ただいまー!」
「ようやくこの姿に戻れましたー!」
ライとレフは、世界中に加護を届けた後、粒子のように細かくなって、世界をとりまく命の流れに溶けたそうだ。ぼくもここに転生する前に、その中に溶け込んだ記憶がある。たくさんの命が還り、生まれる場所――みんなあの中で一緒になるんだね。
「世界中に散らばりすぎちゃって、私の欠片が集まるのに時間がかかってしまいましたー」
「面白かったな!あんなの俺史上初めてだよ!」
「あの時はほんとにありがとう!また会えてうれしいよ!」
ライとレフとの再会。全て失くしたと思っていたのに、ぼくの周りは少しずつ元通りになっていく。胸にあたたかいものが満ちていく。
ふと思い出したように、ライが言った。
「あ!そういえば、家に放火したアイツ覚えてる?」
「うん、火の精霊だったよね」
「アイツ――バアルって言うんだけど、うちに来るってさ」
「神様が言ってたー!」
「へ、なんで?復讐しに来るの?怖ぁ!」
「違うけど。あとは本人から聞いてよー。火が使えたら便利だよー」
「そうだな!周!外でバーベキューしようぜっ!肉!肉!」
ネロがノリノリで会話に参加してきた。お肉が好きだったのか。あの家では、手に入る食べ物があまりなくて、毎日卵とりんごしか食べてなかったもんね。
「おまえ誰ー?その色はもしかしてネロ?」
「ほわぁ、獣人だったのか」
「今頃気づいたのかよ。最初からずっと周の隣にいたんだが」
「俺たち、周にしか興味ないもん」
「ネロは周のおまけー!」
「あははっ!ネロ、言われてるぅ!」
「ひでぇ!」
***
家の仲間が全員揃ったことで、ぼくたちは神の高台にある家に戻ることにした。
今までお世話になった、スミや獣人のみなさんにお礼を伝え、神の高台の近くまで馬車で送ってもらった。
馬車を降りたのは、ちょうど、ヤギ獣人のミノンと初めて出会った岩塩の取れる崖あたりだった。
黒い塩の塊を目で探しながら歩いていると、後ろから、ぼくを呼ぶ明るい声がした。
「あまねーーー!お帰りーーー!」
ミノンだった。相変わらず元気いっぱいだ。
「オギューのおいちゃんから、今日帰ってくるって聞いたから、楽しみに待ってたんだ!都では、いろいろ大変だったみたいだね。
村のみんなが、首輪が取れて喜んでたよ!ありがとー!」
「ミノン!久しぶり!
教会でオギューさんに会ったよ。忙しそうにしてた」
「おいちゃん、人をまとめるのが得意だし、水牛は心も体も強い種族だから、あっちでも頑張れると思うよ!
都から逃げてきた獣人も村に住むようになって、前よりにぎやかな村になったんだー!
また遊びにきてよ!」
あの隠れ里での経験が無かったら、きっと隷属の首輪は今も獣人を苦しめていただろうし、ぼくもそれを遠くでながめるだけだったろう。
ミノンは結果的に、獣人の未来を救ったことになる。本人はそんなこと思いもよらないだろうけど。
「うん、ありがとう!また遊びに行くよ!」
ぼくは、ミノンと岩塩を探しながら、高台の森の手前で別れた。
今日はライとレフを呼び出していないので、ここからはネロと歩く。
二人きりになったのは、ずいぶん久しぶりだった。
「ネロ、いろいろあったね……というか、いろいろありすぎた!どこから話せばいいかわからないくらいだよ」
「これからはずっと一緒なんだ。ゆっくり話せばいいよ。
オレも周に話したいことがいっぱいある」
背の高い針葉樹の森の、すうっとした匂いに包まれながら、ぼくたちは手をつないで家路についた。
ネロの手はもう猫の手じゃない。少し節くれだった五本の指が、ぎゅっとぼくの指に絡む。これは恋人つなぎってやつだ。
変わり始めたぼくたちの関係に、照れくさいものを感じながら、ぼくも彼の手をぎゅっと握り返した――
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