俺の周りは心霊塗れで疲労困憊

最果ての気球

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俺の周りは心霊塗れで疲労困憊その2 (2015/10/07-改定-)

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好奇心。
それは物事を探究しようとする心であり、自発的な調査・学習という知的活動の根源である。
人をはじめとした知能の高い生物に備わっていると言われるものである。
好奇心は、人の進化と文明の発展には欠かす事の出来ない。
『神の作りたもうた世界の不思議、人が知り得ぬ法則をもっと理解したい』というところから化学が発展したと高校になった最初の授業でも言っていた。
それらは一般的に知的好奇心と呼ばれる肯定的なモノと世間では扱われている。
しかしながら、この好奇心という奴にはもう一つの側面が存在する。

それは俗に言う『野次馬根性』という奴だ。
元は歳老いた馬が御しがたい様である『親父馬』が転じた言葉とされるそれは、自分とは直接関係無い事件や事故、他人の――特に世間的に有名な人間の生活の様、特にスキャンダルといった事を知りたがる気持ちである。
基本的には前者と差異は無い同一のモノであり、本質は一切変わらないものである。

しかしながら、この野次馬根性と呼ばれる方向に好奇心が働く事は、その実全く面倒なのだ。
何故面倒かと言えば、本来関わらない事に首を突っ込むというのは、余計な面倒事に自ら巻き込まれる可能性を作るからである。
そして、巻き込まれて面倒な事態の最たるモノが『心霊現象』である。
俺はそれを小学生の時に嫌と言うほど思い知らされた。
そして、未だにその厄介事に関わる羽目になるのは、持って生まれた妙な体質のせいであるのだった。
結局、こうしてまたしても関わりたくも無い事に関わる羽目になっているのだから。
全く困ったものだ。

教師に「忘れ物しました」とかテキトーな理由で倉庫の鍵を借りた俺は、幽体女を連れて体育館の裏手にやってきた。

目指すは地下倉庫。
薄暗い階段を下りきると、体育の授業前でお馴染みの倉庫の扉が現れる。
この扉は相当古いらしく、ところどころ錆びている。錠前じょうまえも随分時代がかったもので、古い御屋敷の倉みたいだ。
錆びた鍵をどうにか外すと、扉に手をかける。

「よっと」

体重をかけて扉を引きあけにかかる。
ガラガラ音を立てて、ゆっくりと扉が開いていく。ったく、この扉、重てぇんだよ!

「………」

バタン!!

「どうしたんですか!?」
「いや、なんか俺疲れてるみたいだ」

目頭をみながら返答する。その割には扉が軽く閉まったのだが、それはそれ、これはこれだろう。
よし。
気を取り直して、再び扉を引きあける。

「………」

バターンッ!!!

「どうも俺は来る場所を間違えたらしい」
「どうしてそうなるんですか!!!」

きびすを返して引き返そうとする俺の腕を、幽体娘が引っ張る。
妙に柔らかい感触がする。ああ、これが女性の手の感触か、はははははは。

「ここはきっと地下倉庫の入口じゃないんだよ。正しい入り口を探さなきゃな」
「いいえ! ここで合ってます! 私のライン、ここから伸びてるじゃないですか!!」

全力で帰ろうとする俺に、幽体娘は自分の下半身から伸びる線を指さして見せる。
ああ、確かに扉の向こうから来てるみたいね~、あははははは。

「……はぁ~」

今日一大きなため息をつき、俺は仕方なく扉を引きあけた。

「だったら、どういうことか説明してくれ!」

俺の目は正常……なのか?
そこは異様な空間だった。
壁には一面怪しい文字がビッチリ書き込まれ、床まで真っ赤。

その中央には幽体女のモノとおぼしき女生徒の身体が横たわる。
それを囲む六芒星。その頂点には蝋燭が立つ。
そして極めつけは女生徒が抱えるモノ。
しゃれこうべ。
つまり、人間の頭蓋骨。
……何処から持ってきた。

「これは一体何事だよ!!」
「幽体離脱の儀式の為の祭壇ですわ」
「どう見ても、サバトの会場にしか見えないんだけど!!!」

何故こうなるのか、本当に理解に苦しむ。
大体にしてだな……

「お前、由緒正しき神道の家系なんだよな?」
「ええ。その通りですわ」

腰に手をあてて、えへんと胸を張る幽体娘。
そこで誇らしげにすんなよ。誰も褒めて無ぇから!

「大体……なんで血文字なんだよ」

そこそこの広さがある壁に、ビッチリと書かれた怪しげな文字。ついでにちょっとにじんでて怖い。
明らかに人体の致死量超えてるだろ、どう考えても。

「いえ。あれはたまたま持っていた油性赤マジックです」

ツッコミが間に合わなくなりそうな中、更に阿呆な事を言い出す幽体娘。

「何で偶然にもそんなモノを持ってんだよ!!」

しかも、よりによって油性とか。

「こういうトラブルが一度や二度ではありませんでしたので、常備しておりますわ」
「どんだけイジメられてきたんだよ!!」

コイツ、トラブル慣れしてそうだな~。
まぁ、どうでも良いや。……にしても、掃除が大変そうだ。

「とりあえず何も見なかった事にしてとっとと逃げるぞ。掃除とかしてられるかよ」

まぁ、仮に掃除するとしても俺は無関係な人間として逃げるが。

「わかりましたわ」

言うが早いか、幽体女は自分の身体に戻る。
途端、中央に寝そべっていた女生徒が起き上がる。さっきまでとは違い制服を着た何処からどう見てもウチの学校の生徒だ。襟元えりもとから伸びるリボンから同級生と判別される。

「んじゃ、行くか」

サバト会場に背を向け、さっさとその場を後にした。


外に出ると完全に日が暮れていた。もう部活の生徒達もほとんどいないようだ。
校門を潜り、ようやく家路につく事が出来た。

「とりあえず終わったか」

肩を落とし、げんなりと俺は呟く。
なんだか今日はやけに疲れた気がする。この学校に来て以来の珍事だ。

「ええ。脱出は完了しましたわ」

隣の女生徒はなんだか意味深に言う。
おいおい、『脱出は』ってなんだ、『脱出は』って。

「まだなんかあるのかよ?」

心底嫌な気持ちを包み隠さず視線にめる。これで伝わらないなら、俺にテレパシーは使えない事が証明される。いや、するまでもなく無いけど。

「ええ。まだ私を閉じ込めた方達への報復が」

ほらね、やっぱり無い。
って! ! 今、報復と言いやがりましたよ、この人。
可愛い顔してあの子、割とやるもんだね~、とか言ってる場合じゃないだろうが。

「何する気だよ?」
「私の家に代々伝わる術を使います。この藁人形に相手の髪の毛を入れて」
「由緒正しき呪術じゃねぇか! !」

山でもないのにやまびこみたいにリフレインするツッコミ。
こいつの家、本当に神道家なのか? 怪しい新興宗教しんこうしゅうきょうとかじゃないだろうな。

「八百万の神をまつる神道ではありとあらゆる文化圏、宗教圏の神々をも内包し、あらゆる有用な技術を取り入れるのです」

「取り入れる技術間違ってるだろ、明らかに」

しかも、イジメの報復にうし刻参こくまいりはやり過ぎだ。
下手しなくても死ぬわ。間違いなく!
駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと。

「要するに閉じ込めた奴等に一発かまして二度と手出し出来ないようにしたい、と?」

忌わしい記憶を頼りに思考をトレースして尋ねる。

「ええ。その通りですわ」

力強くうなづく女生徒。
心なしか良い笑顔だ。呪いの藁人形わらにんぎょうを強く握り締めているのでちょっと怖い。ってか、マジで怖いから勘弁してくれ。

「とりあえず人形をしまえ。もっと楽な方法がある」

呆れ交じりに彼女を宥めにかかる。あんな程度の低いイジメの報復で死人は幾らなんでも勘弁だ。
だったらまだ穏便に片付く方法がある。正直、あまり使いたく無いのだが。

「本当ですか」

目を輝かす女生徒。
ってか距離を詰めるな、顔が近いって。少しは自分の容姿を自覚しろ。思わず勘違いしちゃうだろうが!!

「ああ。ついてこい」

照れ隠しの為、ぶっきらぼうに告げてさっさと歩き出す。

「あ、ちょっと待って」

女生徒が慌てて追い掛けてくる。

「そういえば、自己紹介がまだでしたね」

言われてみればそうだな。さして不都合を感じない程度に馴染んでいたが。

「私は華橋院静香かきょういんしずかと申します。静香と及び下さい」
「東郷雅貴だ。好きに呼んでくれ」

もうどうにでもなれと言わんばかりに投げやりな気持ちで告げる。

「では雅貴様と」
「待て待て。同級生にそれはこそばゆい」
「好きに呼べと言ったでは無いですか」
「今日知り合ったばっかの同級生相手に臆面も無くそんな恥ずかしい事言える奴がいるとは思わなかったんだ」

ホント、こいつ早くなんとかしないと身がもたん。

「むー。では雅貴さんと」

なんでむっとされるのかは分からんが、とりあえずそれで手を打つとしようか。

「そんじゃいくぞ、静……華橋院」
「なんでわざわざ言い直すんですか」

知り合ったばっかの女子を馴れ馴れしく呼び捨てとか無理だから。
へたれなんだから仕方がないだろうが!

校門を抜けてしばらく、無言のまま目的地へと歩く。
が、唐突に気になって足を止めた。一呼吸おいて、背後からの足音も止まる。

「なぁ」

振り返り背後に向けて言葉を発する。

「はい?」

俺が立ち止まる首をかしげる華橋院。やたら絵になるのは、こいつが同年代の女生徒達の中で飛びぬけて可愛いからだろう。実にどうでも良い話だが、一瞬あまりの可愛さに血迷いかけてしまったのでクールダウンがてら脳に再認識させる。
それはさておき、俺は頭に浮かんだ疑問を口にした。

「お前を閉じ込めた連中、『私、霊感あるんです』とか言ってる電波女、とかじゃないよな?」
「そこはかとなく馬鹿にされている気がしますね、その言い方」

少しむっとした表情で睨まれた。いや、別にそういう意図は無いぜ? お前は正真正銘の霊能力女だって事は先刻承知済みだから。

「いまいち釈然としませんが、まぁ良いでしょう」
「で、どうなんだ?」

先を促すと、華橋院は思案顔で空を仰いだ。

「そうですね~。恐らく違うと思います。クラスが一緒になって間も無いですが、あの方達にとっては噂話の延長で、特に深い興味があるわけでもないでしょう」
「って事は、わざわざ七不思議検証しに行ったりとかはしないわけな」

俺がやや断定気味に呟くと、華橋院はうなづく。

「ええ。そうだと思いますわ」

その返答を聞いて、俺は少しだけ安心した。思わず顔に笑みが浮かんでしまう程に。

「でも、どうして急にそんな事を?」

そんな俺の様子をいぶかしむように、首をかしげて尋ねてくる華橋院。

「いや、一応の確認だよ。この後の為の、な」

解るような解らないような、曖昧な返答でお茶を濁す。
まぁ、大体読めていた事ではあるが、一応そこは確認しておかないといけない。
具体的には俺の心情的に、な。

「よし。それじゃ急ぐぜ」

まだ腑に落ちないという顔をしている華橋院を促し、俺は再び目的地へと歩きだした。

連れ立って歩いている内、すっかり日は暮れていた。俺は華橋院を伴って町外れの方へとやってきた。

「で、結局何処へ行きますの?」

周囲が寂れていくねを見て不安だったのか、黙って着いてきてた華橋院が尋ねてきた。
無理も無い。
この辺りは、住宅も少なく工場や倉庫、墓地ぐらいしか無い。
ただ説明するには微妙にややこしい。会わせた方が早い。

「もうすぐだ」

それだけ告げ、目的地に向かって歩く。
不安げな吐息が聞こえたが、任せろと背中で語ってみる。まぁ、つもりでしか無いが。男は背中で語るもんだろ? 背中に口なんて無いけどな!
そんな事を考えていたら、目的地は目の前だった。

「ほら。着いたぜ」
「え?」

俺が言うと、華橋院は目を丸くする。

「ここは……」

まぁ、そうなるよな。その反応は折り込み済みだ。
目の前にあるのは、ただの空き地だった。元々は何かの工場だったらしい広大な敷地は鉄線に囲まれ、一面雑草に覆われている。
錆び付いた買い取り手募集の看板が鉄線に絡んでいるが、一向に買い手はつく予定も無さそうだ。
何処からどう見てもただの空き地だった。
一般人にとっては、だが。

「よく見ろ。お前になら見える筈だ」

そう。
お前が自分で言った通りの存在、霊能力者ならば!

「?」

空き地の奥を指差すと、華橋院は眉根を寄せて覗き込む。

「なっ!?」

その目が不意に大きく見開かれる。

「なんですか、あれは!!?」

上ずった声で、華橋院は広場の奥を指さした。
指さした先、広大な敷地の丁度中央辺りにうっすら何かが動いているのが見える。
もうすっかり日が暮れた夜の闇に似つかわしく無いぼんやり光を放つ怪しい影が多数。

そこにはバイクに跨がる半透明の女性の集団がいた。
赤に近い茶色に染まった長髪、オレンジのメッシュを入れた短髪、パンク頭、黒のパンチパーマに長い髪を天に向かって一直線に固めた金髪、刈り上げにアフロに果てはリーゼントという、髪型からして強烈な一団。それだけ見ると男にも見えなくもないが、ひざ丈よりも長い白の外套の胸元から覗くきつく巻かれたサラシから女性と判断がつく。
彼女達は、雑草生い茂る空き地を物々しいバイクに跨り縦横無尽に駆け巡っている。

そのバイクも彼女達の出で立ち同様に自己主張の激しい攻撃的なシルエットで、やたらと目立つ。
およそ走る為には不都合な奇怪な怪物の如き形。異様なくらい斜め上に突き出したマフラーなど煙突かよと言いたくなる。いまどき焼却炉にすらそんな立派なモノはついてないぜ。

「幽霊のレディースチーム『ゴーストライダース』の皆さんだ」

驚いて声も出ない華橋院に対して、投げ槍気味に紹介する。
それを受けて、ようやく驚きの硬直から解放された華橋院が此方に向き直った。

「幽霊の暴走族ですって? 街にそんな方がいたなんて知りませんでした」
「まぁ、知らなくて良いだろ」

俺だって知り合いたくは無かった。普通は知り合う事もあるまい。

あまり思い出したくも無い話だが、説明しよう。
ある夏の夕暮れ時、俺は街中から家へと急いでいた。
近隣で一番大きな三車線道路の交差点を信号待ちをしていると、対岸に妙な人影がいる事に気付いたのだ。
膝丈はあろうかという白く長い外套を身にまとい、オレンジのメッシュを入れた短髪の女性。不機嫌そうに歪んだ目線と堂々とした出で立ちは異様な程に目立っていた。

さて、皆さんは都市伝説『見えてるくせに』というのを御存知だろうか?
霊感の強い男が横断歩道の向かい側にいた女の人から尋常ではない気配を感じ取った。
その女性は異様に真っ白な顔をしており、まるで生気を感じない。
アレは、この世の者では無い。
男は直感的に理解した。
人ごみに隠れて見えないが、恐らく彼女には足もあるまい。
そう確信した男は、恐ろしさのあまり気づかないふりをしていた。
信号が青に変わり、男は対岸を目指して歩き出した。
勤めて女から目を反らして。
そして、二人は交差点の真ん中ですれ違った。
その瞬間、女が男の耳元で囁いた。

「見えてるくせに」

女はそのまま消えてしまったという。

その話を知っていた俺は、咄嗟に思ったのだ。
ああ。
ああいう人に気付いたら、見てみぬフリをしてはいけないのだと。
異様な気配と威圧感から、アレがただならぬものだと理解した俺は、じっと見つめていた。

やがて信号が変わると、俺は周りの人々ともに横断歩道に入る。その間も、奇妙な姿をした女性を目で追っていた。
決して目を反らす事無いように注意して。
やがて長い歩道の中央まで差し掛かると、俺達は互いに手と手が触れ合うくらいの距離にまで近づいた。

俺は彼女の横をするりと抜けようとしたが、彼女の足によってそれを阻まれる。
驚いて見上げると、そこには頭から血を流した女性が恐ろしい形相で此方を睨んでいたのだ。

「おい、小僧!」

どすの利いた低い声。恐怖を感じる間も無く、彼女は言った。

「見てんじゃねぇよ!!」

まぁ、言ってしまえば、その人はゴーストライダースのメンバー、ミヤビさんだった。

チーム一短気な彼女は、例え子供でも容赦なく脅し、誰であろうと殴るという信条の人で、俺はそのまま彼女たちの仲間がいるこの空き地につれて来られてしまった。

が、チームの人達が基本親切だった事もあり、俺はさしたる問題も無く解放されたのだった。
まぁ、ミヤビさんにつかまった時は小便ちびりそうになったけど。あの人、おっかな過ぎる。

「あの~……」

と、俺があまり覚えていたくも無い思い出に浸っていると、華橋院が控えめに声をかけてきた。

「それで、私たちはこれから何を?」

首をかしげる華橋院。
おっといけない。
こんな事してる場合じゃなかった。

「悪い悪い。さっさと要件を済ませちまおう」

俺は華橋院と共に鉄線の切れ目を潜った。ガンガン走るゴーストライダースに近付く。
その先頭にお目当ての人がいた。
長い茶髪を棚引かせる白い肌の女性。
大人と子供の狭間、成長しきる直前の瑞々しさを纏った彼女は、口元に獰猛な獣を思わせる笑みを浮かべている。
長く、微妙にウェーブがかかった茶髪は天然の色らしく、よく手入れされているようだ。

身を包む白く長い外套が風に靡く。
その背に『夜露死苦』という文字がデカデカと書かれているのは、いつ見ても異様だ。
何故この手の方は意味も無く漢字を使いたがるのだろうか? というテーマで論文でも発表したら何か貰えるかも。いや、無いな。

「おーい。姉御~」

力いっぱい呼び掛ける。
それに反応してライダースはバイクを止め、ガン付け宜しく此方を向く。が、すぐに全員の視線は緩んだ。

「なんだ、まー坊じゃないか」

先頭の女性はバイクを降りて此方に向かってくる。それに倣い、ライダースのメンバー達もバイクを降りて向かってきた。幽霊なので足首から先は無いけど。

「久しぶり、姉御。それにみんなも」

まさしく姉御と呼ぶに相応しい風格を放つ彼女は、無邪気な笑みを浮かべる。

「ああ、久しぶりだねぇ。元気してたかい?」
「もちろん」

うなづくと、満足げに笑う姉御。彼女はすぐに俺の横にいる華橋院の存在にも気付く。

「おや?まー坊に連れなんて珍しいね~」

その顔が見る間ににやけ始めた。全身舐め回すように華橋院を見る。まぁ、次に言いたい事は大体分かる。

「こいつの名誉の為に先に言うけど、断じて彼女とかじゃないから」
「ほぉ?」
「違うんですか! ?」

って! おい、そこ! !
何故にお前がショックを受けてる!?

「違うだろ。お前とは夕方知り合ったばっかりで、たまたま助けただけだろ」
「ええ。そうでしたわね」

笑顔で即答された。その笑顔が心無しか寂しげなのは一体どういう事だよ?
まぁ、良いや。

「華橋院。こちらゴーストライダースのリーダー、前沢優莉さん。俺は姉御と呼んでる」
「華橋院?」

俺が紹介すると何故か姉御から疑問の声が上がった。振り返ると驚いた顔と目が合う。

「もしかして、巴婆ともえばあちゃんの親戚かい?」
「?……ええ。巴は祖母ですが?祖母を御存じなのですか?」
「ああ。アンタの婆さんにはアタシラ、いつも世話になってるんだ。まさかこんなに可愛い孫がいるとはね~」

ニカっと歯を見せ笑う姉御。

「まぁ、そうでしたか。此方こそいつも祖母がお世話になっております」

なんだかよく分からない内に打ち解けてる二人。妙な共通項が見付かった。
だが、俺にはさっぱり分からないので説明を要求する! !

「姉御。世話になってるって?」
「ああ。この子の婆さんが夜中に暴走してるアタシラ見付けて、ここを紹介してくれたのさ」
「祖母はこの街で霊場の管理などを司る祭祀のお役目を賜っておりまして。さ迷う霊の方々を送り出すのが御仕事なのですわ」

へー、なるほど。
でも、だったら姉御達も成仏させなきゃおかしくね?

「アタシラはただ自由に走りたいってだけで、大した害は無いからね~」

いやいや、昔アンタラに付き合わされてえらい目に会った人間がここにおりますが。幽霊バイクの後ろに乗せられかっ飛ばされた俺が。
傍目から見たら座った体制のまま、空中を猛スピードで飛んでいく謎の小学生にしか見えなかったろう。

その後塾帰りの上級生にその姿を目撃されUFB、アンノウン・フライングボーイとかいう奇怪な噂まで流れて超恥ずかしかった。
ってか、アンノウンなのにボーイはおかしいだろ、ボーイは! !

「ああ、そんな事もあったね~。でもちゃんと門限前に家まで連れてったろ?」

悪びれもしない姉御。
まぁ、この人はメンバーの不始末を処理しただけだし罪は無いか。

「そんなわけでこの子の婆さんには世話になってるんだよ。お嬢ちゃん、名前は?」

「華橋院静香と申します。宜しく御願いしますわ、優莉様」
「ああ。此方こそ。静香」

お互い手に伸ばす二人。しかし、両者の手はすり抜けた。

「おっと。そうか。見えてても普通は触れないんだったね」

たははと笑い、姉御は頭をかいた。特殊な霊感体質である俺にすっかり慣れた姉御は失念していたらしい。華橋院は華橋院で自然と手を出してしまったようだが。

「今日は何しに来たんだい?」

真面目な顔で俺に向き直った姉御は、単刀直入に切り出した。

「ああ、その事なんだけどさ。ちょっとこいつの仕返しに手を貸して貰いたいんだ」
「仕返し?」

首を傾げる姉御。

「華橋院のクラスメイトを懲らしめるのさ。二度とこいつに嫌がらせとか出来ないように」

というわけで。
一走り、付き合えよ!!
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