6 / 7
俺の周りは心霊塗れで疲労困憊2 その3
しおりを挟む
という具合で、既に五つの不思議を回り終えた俺達。
六つ目は地下の体育倉庫なので、もう回る必要は無い事になる。
さて、そうすると七つ目か。
まぁ、ここまで来たら、もう七つでも八つでも変わるまい。
「で、七つ目の不思議ってのはどこにあるんだ?」
やや投げ槍気味に問う。もうこうなったら、さっさと終らせて一秒でも早く帰りたかった。割と切実に!
「いえ、七つ目は存在しませんわ」
「は?」
と、華京院からの意外な返答に自分でもえらく気の抜けた声が出ていた。
七つ目が無い?
「どういう事だ?」
「こういった学校の七不思議には、大抵の場合、七つ目は存在しません。コレは、元々の七不思議と言ったモノに不明なモノが隠されているという特徴から来ているといわれておりますわ」
首を傾げる俺に、華京院は丁寧な解説をしてくれた。
「この七つ目は『知ると不幸になる』と言われるのが一般的なようです。元々の七不思議では、八つ目の謎とされる場合もあるようですが」
ああ。
そういえば七不思議について調べたとき、そんな話を聞いた気がする。
実際に調べたわけではないが、どんな学校にも知られざる七つ目というモノがあるとか書いてあったっけ。
まぁ、この手の眉唾モノはそんな感じでぼかしている事も考えられる。というか、七つも作るのが面倒だしな。
『因みにこの学校の七不思議は『あの世に連れて行かれる』というペナルティだそうですわ』、と華京院の言葉が続いたがすこぶるどうでも良い。
テキトーなペナルティだな。
そもそもあの世があるのかも知らん人間が考えたであろう七不思議のペナルティが、なんでそうなるのか理解出来ない。
まぁ、この学校のは他のところとは一味違って、一応ホンモノではあったのだが。
……あれ、待てよ?
呆れる気味に考えていると、ふと思い至った。
七つ目が存在しないという事は。
「もしかして、これで検証は終了って事?」
高鳴る胸を抑えながら、期待を込めて問いかける。
非常にくだらないながらも、一応マジモノではあった六つの不思議―― 一個は解決済みになっているが――も検証出来た。
これ以上検証するものが無いなら、さっさと撤退するのが正しいだろう。
これ以上何かを探索するとか、面倒臭くて仕方ないし。
「ええ。もう見る物もありませんし、時間も時間ですので、そろそろ……」
「いや、それがさ」
と、華京院の言葉を遮って、神妙な声で何事か言い出す三島。
「なんだ?」
急な事に驚いて聞くと、三島は目を輝かせて身を乗り出してくる。
……近い。
「その、幻の七つ目が、最近発見されたんだよ」
「……マジで」
自分でも分るぐらいに顔から嫌悪感が滲み出てるのが分る。
いやだってさ、もう帰れると思ったんだから仕方ないよな。
そんな俺の内心をも完全に無視して、三島は続ける。
「そうなんだよ! それも、つい一週間前の出来事なんだよ」
「一週間前?」
「そう、一週間前だ!」
もう何本目か分らない投げ槍な返答を帰りたいオーラと共に吐き出す。
「なんでまたそんな急に判明するんだよ。今まで誰も知らなかったんだろ?」
「そりゃそうなんだけどさ。ただ、本当なんだから仕方が無いのさ」
うっとおしいリアクションと共に、何故か得意そうな顔の三島。
なんでドヤ顔なんだよ。
「いや~、こんなタイミングで七不思議が解明されるとか目出度いぜ。良い機会だし、一緒に解明しにいこうぜ!」
「……はぁ~」
自然と溜息が漏れた。
全く面倒な状況だ。こうなっては、もう付き合う意外に選択肢が無い事が何よりも面倒だ。
こんなにも楽しそうな級友の姿を見てしまっては、付き合わないわけにはいかないじゃないか。
全く面倒だ。
人間ってのは、どうしてこうも非情になりきれないのだろう。
仕方ない。
こうなったら最後まで付き合ってやろう。
「分ったよ。どうせ後一つだし、さっさと検証しちまおうぜ」
その答えに三島は満足そうに頷く。そんな俺達の姿を、一歩下がったところで微笑ましく見守る華京院の姿が、どこかこそばゆい。
「で、その七つ目の現場って何処なんだ?」
「ああ、それは」
――アハハ~、知~ッッチャッタ~――
「……え?」
と、三島の言葉を遮るように突然声が聞こえてきた。
――ウン、知~ッッチャッタネ~――
ソレは子供の声のようで、どこか大人の声も混じっているような、高音と低音が混じった気味の悪い声だった。
――知~ッッテッシマッタカ――
どこから発せられているのか、誰が喋っているのかわからない、夜の校舎に不気味に響く声。
――知~ッッチャッタヨ~――
――遂二、知~ッッチャッタ~――
――知~ッッチャッタ~、知~ッッチャッタ~――
「……なんだ、コレ?」
全身が粟立つような感覚に晒されながら、腰を落とす。
急に、辺りの空気が冷えたような感覚に襲われる。
薄ぼんやりとは見えていた筈の廊下に、薄っすら黒い靄にかかって見えた。
華京院を見るが、彼女も突然の事態に驚いているようで、首を横に振った。
――知ッチャッタ人ハ~……――
気がつくと、そこかしこから不快な視線を感じる。
周囲には何も無い筈なのに、視線の気配だけが充満していく。
――知ッチャッタ人ハ~……漏レナク、アノ世二ゴアンナ~イ!!!!!――
マジかよ……。
本格的にヤベェぞ、コレは。
視界の端に見える三島の顔は、明らかに生気を失っており、病的なほど真っ白だった。
『お前のせいで母さんが!!』
そんな言葉が脳裏を過ぎる。
クソッ!
こんなときに、ふざけんな!
奥歯を噛みしめながら、胸に湧き上がる不快感に耐える。
冷や汗が背中を伝っていく。
体温が徐々に奪われていくのが分る。寒い。なんでこんなに寒いんだ、此処は!
「雅貴さん!!」
華京院の声に意識が引き戻される。
気がつくと、薄闇の中から不気味な声に混じってカタカタと音がした。
それは徐々に、だが確実に近づいてきている。
「二人とも逃げるぞ!!」
考えるより早く、俺は三島の手を強引に掴んで走り出す。
思いの外冷たい手に驚きながらも、どうにか走る。縺れそうになる足を、必死で動かし近づいてくる不気味な音から遠ざかる。
「華京院! この状況に心当たりは?」
少しでも冷静になろうと、隣を走る華京院に声をかける
「分りませんわ」
「ここは、人畜無害だったんじゃないのか?」
「その筈です。私も把握していない怪異が紛れ込んだのかもしれませんが」
「なんだってそんな事に」
「だから、私も困惑しておりますの。定例で回っていても、こんな事はありませんでしたし」
「つまり何もわかんねぇ~って事か」
矢継ぎ早に問い返しながら、俺は必死に走った。とりあえず向かう先は、昇降口だ。
―― 七不思議ヲ知ッテシマッタモノハ、アノ世二御案内~ ――
―― 知ッチャッタラ、コノ世カラハ消エチャウ ――
―― ソレガ、七不思議ノ秘密~ ――
気持ち悪い声は尚も聞こえ続けた。
ええい、うっとおしい!
「ったく。こそこそしてねぇで、姿を見せろっての」
あまりにもイライラしたので、思わず本音が漏れていた。こういうまどろっこしい状況が何よりも腹が立つ。
「雅貴さん、いけませんわ!」
しかし、その呟きは華京院に諌められた。
「? どうかしたのか?」
「霊能者が不用意に言葉を発しては」
―― オノゾミトアラバ、オミセシマショウ ――
叱責の言葉が終わる前に、先ほどまでとは違う不気味な言葉が聞こえてくる。
それと同時に、寒々しい空気が一層冷え込んで、気配は大きくなっていった。
いよいよお出ましか。
「……ヒ、ヒィィ!!」
後ろの三島から恐怖の声にもならぬ声が漏れる。
気がつけば、足音と共に無数の影が浮かんでいた。
ソレは人の形をした骨格、要するに骸骨。
それも夥しい数の、骸骨、骸骨、骸骨、骸骨、夜の校舎の廊下を埋め尽くさんばかりの骸骨の群れ。
……おい。
もう、一体何処から突っ込んで良いのか分らんねぇんだが。
「どう考えても、絶対ホラー展開な筈なんだが、ぶち壊し感満載なんだけど!!」
「いえ、これは十分怖いと思うのですが……」
「いや、パニックホラーにしたって、少しはムードってもんをだな!!!!」
「かなりまずいのは確かだと思いますわ」
死にかけて声も出ない三島を放置して、言いたい放題してる俺と律儀に突っ込む華京院。
いやまぁ、何と言うかこんなところまでギャグみたいにしないで良いと俺は思うんだけど。
こういう雰囲気の時くらい、ちゃんとして欲しいんだけどな、ホラー。
これじゃただのギャグだろ!
「とりあえず、昇降口まで行くぞ! 細かいことはそれからだ」
「了解ですわ」
押し寄せる骸骨軍団を従えたまま、三島を半ば引きずる形で全力疾走する。
にしても、初めて廊下を走っちまった。こんな品行法制な生徒に何をさせるかね、この骸骨軍団。
とか思っている間に、階段の踊り場が見えてきた。
「二人とも、曲がるぞ」
「はい」
急制動宜しく廊下の柱を掴んで強引に曲がり、階段を一段飛ばしで駆け下りる。華京院も軽快な身のこなしで俺の後ろにぴったりとついてくる。
背後からは、ガラガラガッシャンと何かが崩れる音がした。
多分、急に止まろうとしてバラバラになった骸骨がいたのだろう。が、上手く曲がって追いかけてくる骸骨も多数。
構わず階段を駆け下りる俺。徐々に飛ばす段の数を増やしていく。その度に、骸骨がガラガラ崩れる音が聞こえてきた。
それでも、まだしつこく追いかけてくる骸骨軍団。
ったく、しつこい。
「ちょ……と、とうご……まっ……」
と、順調に骸骨達を撃破していってる中、真後ろで違う意味での恐怖の声が聞こえたが聞こえない事にする。
いや、仕方ないじゃん。お前、放置したら捕まるわけだし。
そんなこんなで、どうにか一階まで辿り着く。
相変わらず階段の上からは、押し寄せる骸骨軍団の足音が聞こえる。
くそ、しぶといな、あいつ等。
心の中で毒づきつつ、後ろでヒーヒー言っている三島の声を無視して昇降口へ向かう。
そうこうしている内に、昇降口はあっという間に視界へ飛び込んできた。
よし!
我ながら無茶したけど、校舎を出れば俺達の勝ちだ!
「後少しだ! 頑張れ、三島!!」
俺は振り返り、ボロボロの三島――ほぼ俺の無茶のせい――を励ます。
ああ、ホントボロボロだな、コイツ。
「雅貴さん!!! 前!」
と、華京院が慌てた声で警告を発した。
俺は勢い振り返ると、信じられない光景を見た。
目前に見える昇降口。
そこには骸骨が見えた。それも夥しい数、ってさっきと同じ状況じゃねぇか!!
「おいおいおい、マジかよ」
全速力で進む足を急ブレーキで止める。ああ、確実に上履きのゴムがかなり磨り減ったぞ、今。
いや、そんな事気にしてる場合でも無いんだけど。
「……ヤベェ」
おいでおいでといわんばかりに待ち構える骸骨の群れ。それはもう、全校生徒が結集しているぐらいの勢いで昇降口を埋め尽くしている。
ってか、ギャグ展開は一度で十分だろ。
「どういたしましょうか?」
「いや、そう言われてもな~」
華京院の困惑した声に、どうして良いか分らず反射的に答えを返す。
そうこうする内に、背後から迫ってきた骸骨軍団に道を塞がれる。気付けば、逆側の廊下も骸骨で埋め尽くされていた。
四方八方骸骨の群れ。
「クソ。囲まれちまった」
俺は三島を庇うように、ジリジリと迫ってくる骸骨軍団に対峙する。その逆側では、華京院が同じく身構えて骸骨達と対峙していた。
最悪俺と華京院だけなら、こういう状況でもどうにでもなるのだろうが、いかんせん今は三島がいる。
いや、しかし。
「と、東郷……」
不安げな声で俺達の背中に隠れる三島。
とにかく、コイツだけはどうにかして逃がさないと。たとえ多少危険であろうが、三島だけは助け出さないと。
「心配すんなよ。俺が何とかしてやるから」
「そうですわ。私達がいるのですから御安心下さいませ」
「東郷……華京院さん……」
そんな、名作アニメのワンシーンのような言葉を交わし、俺は華京院と三島に目配せする。
「二人とも、俺が合図したら全力で出口に向かって走れ」
心得たと言わんばかりに頷く華京院と三島を確認し、俺達は背中合わせで骸骨軍団の動きを注視しつつ、油断無く身構える。
先程までの喧騒が嘘のように静寂が周囲を支配した。
自分の呼気すら雑音に聞こえる程の、水をうったような静寂が夜の校舎を支配した。
そして――
「二人とも走れぇぇぇぇぇぇぇ~!」
俺の合図と共に、三人は出口めがけて走りだす。
それに反応して、骸骨軍団も一気に俺達めがけて殺到した。
「くそったれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~!!」
野菜に似た星の戦闘民族王子よろしく、やけっぱち気味に拳を突き出した。同時に嫌な感触が拳に伝わってくる。
それを皮切りに、腕をぶん回し、並み居る骸骨軍団を掻き分けていく。
俗に言う強行突破。
視界の端では、華京院がお札を撒いて骸骨を追い払っているのが見える。
背後からは、咄嗟の事態に出遅れた骸骨軍団が押し寄せてきている。が、前身して俺達を包囲しようとする前方の骸骨軍団に阻まれて上手く進めていないようだった。
よし。
何とかなりそうだ。
「うぉぉりゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ~~~~~~~~!!!!!」
気合を入れ、骸骨の頭を掴んでは投げ、アゴに拳を叩きつけ、体ごとなぎ払っていった。
それでも、骸骨の群れは後から後から湧いては俺達の行く手を阻み、捕まえようと襲い掛かる。
ったく! 何処から湧いてくんだよ、テメェらは。
「オラァァァ~~~~~~!!!!!!」
拳を思い切り握りこんで、そのまま外側へ全力で裏拳を叩き付けた。それをまともに喰らって、目の前を囲んでいた骸骨軍団が吹っ飛んでいく。
そうこうしている内に、昇降口の扉が見えてきた。
おし、もう少し!!
俺は無理矢理手を伸ばし、骸骨を突き飛ばし、隙間に体をねじ込む。
「こんのぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~!!!!」
全身で力任せに突っ込み、そして――
ガッシャァァァァァァァァァァ~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!
そのまま倒れこむように、昇降口の出口から転げ出た。
「いってぇぇぇ~」
思いっきり腰を打ったかもしれぬ。いや、今はそんな事はどうでも良い。
「三島! 華京院! 無事か!!?」
上体ごと顔を上げ、背後の昇降口を見る。
そこには、同じく倒れこんでいる三島と華京院の姿があった。
「二人とも無事か」
俺は慌てて二人に駆け寄る。それを受けて、二人とも顔を挙げ、何とか立ち上がる。
「ええ」
「なんとか」
とりあえず、校舎からの脱出には成功したようだ。にしても……。
「今回の七不思議探索で一番の恐怖じゃないのか、コレ?」
昇降口を見ながら呆れ気味に呟く。
そこには、扉に突っ掛かって抜け出せなくなっている骸骨の群れ。
マジ何処の地獄絵図だよ。怖過ぎッ!!
「で、コレどうするんだ?」
「そうですね~」
現在進行形の地獄絵図を眺め、俺と華京院は溜息をつく。
なんだかよくわからんが、この状態を放置はまずい気がする。
ってか、ほんとになんなんだ、一体。
「そもそもコレ、どういう事なんだろうな。なんでこんなんになったんだ?」
「まるで分らないのですよね、こんな状況になったのかも」
「うわぁぁぁぁ~~!!!!」
と、そんな事をしていたら、三島の絶叫がとどろく。
……え? 何?
と、投げ槍気味に顔を巡らせると、何処かから湧いてきたのか分らない謎の骸骨に絡みつかれていた。
「三島ァァ~ッ!」
「うあぁぁぁ~! 助けて、助けてぇぇぇ!!!」
「三島ァァァァァァ!!!」
気が付けば、俺は無我夢中で駆け出していた。
六つ目は地下の体育倉庫なので、もう回る必要は無い事になる。
さて、そうすると七つ目か。
まぁ、ここまで来たら、もう七つでも八つでも変わるまい。
「で、七つ目の不思議ってのはどこにあるんだ?」
やや投げ槍気味に問う。もうこうなったら、さっさと終らせて一秒でも早く帰りたかった。割と切実に!
「いえ、七つ目は存在しませんわ」
「は?」
と、華京院からの意外な返答に自分でもえらく気の抜けた声が出ていた。
七つ目が無い?
「どういう事だ?」
「こういった学校の七不思議には、大抵の場合、七つ目は存在しません。コレは、元々の七不思議と言ったモノに不明なモノが隠されているという特徴から来ているといわれておりますわ」
首を傾げる俺に、華京院は丁寧な解説をしてくれた。
「この七つ目は『知ると不幸になる』と言われるのが一般的なようです。元々の七不思議では、八つ目の謎とされる場合もあるようですが」
ああ。
そういえば七不思議について調べたとき、そんな話を聞いた気がする。
実際に調べたわけではないが、どんな学校にも知られざる七つ目というモノがあるとか書いてあったっけ。
まぁ、この手の眉唾モノはそんな感じでぼかしている事も考えられる。というか、七つも作るのが面倒だしな。
『因みにこの学校の七不思議は『あの世に連れて行かれる』というペナルティだそうですわ』、と華京院の言葉が続いたがすこぶるどうでも良い。
テキトーなペナルティだな。
そもそもあの世があるのかも知らん人間が考えたであろう七不思議のペナルティが、なんでそうなるのか理解出来ない。
まぁ、この学校のは他のところとは一味違って、一応ホンモノではあったのだが。
……あれ、待てよ?
呆れる気味に考えていると、ふと思い至った。
七つ目が存在しないという事は。
「もしかして、これで検証は終了って事?」
高鳴る胸を抑えながら、期待を込めて問いかける。
非常にくだらないながらも、一応マジモノではあった六つの不思議―― 一個は解決済みになっているが――も検証出来た。
これ以上検証するものが無いなら、さっさと撤退するのが正しいだろう。
これ以上何かを探索するとか、面倒臭くて仕方ないし。
「ええ。もう見る物もありませんし、時間も時間ですので、そろそろ……」
「いや、それがさ」
と、華京院の言葉を遮って、神妙な声で何事か言い出す三島。
「なんだ?」
急な事に驚いて聞くと、三島は目を輝かせて身を乗り出してくる。
……近い。
「その、幻の七つ目が、最近発見されたんだよ」
「……マジで」
自分でも分るぐらいに顔から嫌悪感が滲み出てるのが分る。
いやだってさ、もう帰れると思ったんだから仕方ないよな。
そんな俺の内心をも完全に無視して、三島は続ける。
「そうなんだよ! それも、つい一週間前の出来事なんだよ」
「一週間前?」
「そう、一週間前だ!」
もう何本目か分らない投げ槍な返答を帰りたいオーラと共に吐き出す。
「なんでまたそんな急に判明するんだよ。今まで誰も知らなかったんだろ?」
「そりゃそうなんだけどさ。ただ、本当なんだから仕方が無いのさ」
うっとおしいリアクションと共に、何故か得意そうな顔の三島。
なんでドヤ顔なんだよ。
「いや~、こんなタイミングで七不思議が解明されるとか目出度いぜ。良い機会だし、一緒に解明しにいこうぜ!」
「……はぁ~」
自然と溜息が漏れた。
全く面倒な状況だ。こうなっては、もう付き合う意外に選択肢が無い事が何よりも面倒だ。
こんなにも楽しそうな級友の姿を見てしまっては、付き合わないわけにはいかないじゃないか。
全く面倒だ。
人間ってのは、どうしてこうも非情になりきれないのだろう。
仕方ない。
こうなったら最後まで付き合ってやろう。
「分ったよ。どうせ後一つだし、さっさと検証しちまおうぜ」
その答えに三島は満足そうに頷く。そんな俺達の姿を、一歩下がったところで微笑ましく見守る華京院の姿が、どこかこそばゆい。
「で、その七つ目の現場って何処なんだ?」
「ああ、それは」
――アハハ~、知~ッッチャッタ~――
「……え?」
と、三島の言葉を遮るように突然声が聞こえてきた。
――ウン、知~ッッチャッタネ~――
ソレは子供の声のようで、どこか大人の声も混じっているような、高音と低音が混じった気味の悪い声だった。
――知~ッッテッシマッタカ――
どこから発せられているのか、誰が喋っているのかわからない、夜の校舎に不気味に響く声。
――知~ッッチャッタヨ~――
――遂二、知~ッッチャッタ~――
――知~ッッチャッタ~、知~ッッチャッタ~――
「……なんだ、コレ?」
全身が粟立つような感覚に晒されながら、腰を落とす。
急に、辺りの空気が冷えたような感覚に襲われる。
薄ぼんやりとは見えていた筈の廊下に、薄っすら黒い靄にかかって見えた。
華京院を見るが、彼女も突然の事態に驚いているようで、首を横に振った。
――知ッチャッタ人ハ~……――
気がつくと、そこかしこから不快な視線を感じる。
周囲には何も無い筈なのに、視線の気配だけが充満していく。
――知ッチャッタ人ハ~……漏レナク、アノ世二ゴアンナ~イ!!!!!――
マジかよ……。
本格的にヤベェぞ、コレは。
視界の端に見える三島の顔は、明らかに生気を失っており、病的なほど真っ白だった。
『お前のせいで母さんが!!』
そんな言葉が脳裏を過ぎる。
クソッ!
こんなときに、ふざけんな!
奥歯を噛みしめながら、胸に湧き上がる不快感に耐える。
冷や汗が背中を伝っていく。
体温が徐々に奪われていくのが分る。寒い。なんでこんなに寒いんだ、此処は!
「雅貴さん!!」
華京院の声に意識が引き戻される。
気がつくと、薄闇の中から不気味な声に混じってカタカタと音がした。
それは徐々に、だが確実に近づいてきている。
「二人とも逃げるぞ!!」
考えるより早く、俺は三島の手を強引に掴んで走り出す。
思いの外冷たい手に驚きながらも、どうにか走る。縺れそうになる足を、必死で動かし近づいてくる不気味な音から遠ざかる。
「華京院! この状況に心当たりは?」
少しでも冷静になろうと、隣を走る華京院に声をかける
「分りませんわ」
「ここは、人畜無害だったんじゃないのか?」
「その筈です。私も把握していない怪異が紛れ込んだのかもしれませんが」
「なんだってそんな事に」
「だから、私も困惑しておりますの。定例で回っていても、こんな事はありませんでしたし」
「つまり何もわかんねぇ~って事か」
矢継ぎ早に問い返しながら、俺は必死に走った。とりあえず向かう先は、昇降口だ。
―― 七不思議ヲ知ッテシマッタモノハ、アノ世二御案内~ ――
―― 知ッチャッタラ、コノ世カラハ消エチャウ ――
―― ソレガ、七不思議ノ秘密~ ――
気持ち悪い声は尚も聞こえ続けた。
ええい、うっとおしい!
「ったく。こそこそしてねぇで、姿を見せろっての」
あまりにもイライラしたので、思わず本音が漏れていた。こういうまどろっこしい状況が何よりも腹が立つ。
「雅貴さん、いけませんわ!」
しかし、その呟きは華京院に諌められた。
「? どうかしたのか?」
「霊能者が不用意に言葉を発しては」
―― オノゾミトアラバ、オミセシマショウ ――
叱責の言葉が終わる前に、先ほどまでとは違う不気味な言葉が聞こえてくる。
それと同時に、寒々しい空気が一層冷え込んで、気配は大きくなっていった。
いよいよお出ましか。
「……ヒ、ヒィィ!!」
後ろの三島から恐怖の声にもならぬ声が漏れる。
気がつけば、足音と共に無数の影が浮かんでいた。
ソレは人の形をした骨格、要するに骸骨。
それも夥しい数の、骸骨、骸骨、骸骨、骸骨、夜の校舎の廊下を埋め尽くさんばかりの骸骨の群れ。
……おい。
もう、一体何処から突っ込んで良いのか分らんねぇんだが。
「どう考えても、絶対ホラー展開な筈なんだが、ぶち壊し感満載なんだけど!!」
「いえ、これは十分怖いと思うのですが……」
「いや、パニックホラーにしたって、少しはムードってもんをだな!!!!」
「かなりまずいのは確かだと思いますわ」
死にかけて声も出ない三島を放置して、言いたい放題してる俺と律儀に突っ込む華京院。
いやまぁ、何と言うかこんなところまでギャグみたいにしないで良いと俺は思うんだけど。
こういう雰囲気の時くらい、ちゃんとして欲しいんだけどな、ホラー。
これじゃただのギャグだろ!
「とりあえず、昇降口まで行くぞ! 細かいことはそれからだ」
「了解ですわ」
押し寄せる骸骨軍団を従えたまま、三島を半ば引きずる形で全力疾走する。
にしても、初めて廊下を走っちまった。こんな品行法制な生徒に何をさせるかね、この骸骨軍団。
とか思っている間に、階段の踊り場が見えてきた。
「二人とも、曲がるぞ」
「はい」
急制動宜しく廊下の柱を掴んで強引に曲がり、階段を一段飛ばしで駆け下りる。華京院も軽快な身のこなしで俺の後ろにぴったりとついてくる。
背後からは、ガラガラガッシャンと何かが崩れる音がした。
多分、急に止まろうとしてバラバラになった骸骨がいたのだろう。が、上手く曲がって追いかけてくる骸骨も多数。
構わず階段を駆け下りる俺。徐々に飛ばす段の数を増やしていく。その度に、骸骨がガラガラ崩れる音が聞こえてきた。
それでも、まだしつこく追いかけてくる骸骨軍団。
ったく、しつこい。
「ちょ……と、とうご……まっ……」
と、順調に骸骨達を撃破していってる中、真後ろで違う意味での恐怖の声が聞こえたが聞こえない事にする。
いや、仕方ないじゃん。お前、放置したら捕まるわけだし。
そんなこんなで、どうにか一階まで辿り着く。
相変わらず階段の上からは、押し寄せる骸骨軍団の足音が聞こえる。
くそ、しぶといな、あいつ等。
心の中で毒づきつつ、後ろでヒーヒー言っている三島の声を無視して昇降口へ向かう。
そうこうしている内に、昇降口はあっという間に視界へ飛び込んできた。
よし!
我ながら無茶したけど、校舎を出れば俺達の勝ちだ!
「後少しだ! 頑張れ、三島!!」
俺は振り返り、ボロボロの三島――ほぼ俺の無茶のせい――を励ます。
ああ、ホントボロボロだな、コイツ。
「雅貴さん!!! 前!」
と、華京院が慌てた声で警告を発した。
俺は勢い振り返ると、信じられない光景を見た。
目前に見える昇降口。
そこには骸骨が見えた。それも夥しい数、ってさっきと同じ状況じゃねぇか!!
「おいおいおい、マジかよ」
全速力で進む足を急ブレーキで止める。ああ、確実に上履きのゴムがかなり磨り減ったぞ、今。
いや、そんな事気にしてる場合でも無いんだけど。
「……ヤベェ」
おいでおいでといわんばかりに待ち構える骸骨の群れ。それはもう、全校生徒が結集しているぐらいの勢いで昇降口を埋め尽くしている。
ってか、ギャグ展開は一度で十分だろ。
「どういたしましょうか?」
「いや、そう言われてもな~」
華京院の困惑した声に、どうして良いか分らず反射的に答えを返す。
そうこうする内に、背後から迫ってきた骸骨軍団に道を塞がれる。気付けば、逆側の廊下も骸骨で埋め尽くされていた。
四方八方骸骨の群れ。
「クソ。囲まれちまった」
俺は三島を庇うように、ジリジリと迫ってくる骸骨軍団に対峙する。その逆側では、華京院が同じく身構えて骸骨達と対峙していた。
最悪俺と華京院だけなら、こういう状況でもどうにでもなるのだろうが、いかんせん今は三島がいる。
いや、しかし。
「と、東郷……」
不安げな声で俺達の背中に隠れる三島。
とにかく、コイツだけはどうにかして逃がさないと。たとえ多少危険であろうが、三島だけは助け出さないと。
「心配すんなよ。俺が何とかしてやるから」
「そうですわ。私達がいるのですから御安心下さいませ」
「東郷……華京院さん……」
そんな、名作アニメのワンシーンのような言葉を交わし、俺は華京院と三島に目配せする。
「二人とも、俺が合図したら全力で出口に向かって走れ」
心得たと言わんばかりに頷く華京院と三島を確認し、俺達は背中合わせで骸骨軍団の動きを注視しつつ、油断無く身構える。
先程までの喧騒が嘘のように静寂が周囲を支配した。
自分の呼気すら雑音に聞こえる程の、水をうったような静寂が夜の校舎を支配した。
そして――
「二人とも走れぇぇぇぇぇぇぇ~!」
俺の合図と共に、三人は出口めがけて走りだす。
それに反応して、骸骨軍団も一気に俺達めがけて殺到した。
「くそったれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~!!」
野菜に似た星の戦闘民族王子よろしく、やけっぱち気味に拳を突き出した。同時に嫌な感触が拳に伝わってくる。
それを皮切りに、腕をぶん回し、並み居る骸骨軍団を掻き分けていく。
俗に言う強行突破。
視界の端では、華京院がお札を撒いて骸骨を追い払っているのが見える。
背後からは、咄嗟の事態に出遅れた骸骨軍団が押し寄せてきている。が、前身して俺達を包囲しようとする前方の骸骨軍団に阻まれて上手く進めていないようだった。
よし。
何とかなりそうだ。
「うぉぉりゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ~~~~~~~~!!!!!」
気合を入れ、骸骨の頭を掴んでは投げ、アゴに拳を叩きつけ、体ごとなぎ払っていった。
それでも、骸骨の群れは後から後から湧いては俺達の行く手を阻み、捕まえようと襲い掛かる。
ったく! 何処から湧いてくんだよ、テメェらは。
「オラァァァ~~~~~~!!!!!!」
拳を思い切り握りこんで、そのまま外側へ全力で裏拳を叩き付けた。それをまともに喰らって、目の前を囲んでいた骸骨軍団が吹っ飛んでいく。
そうこうしている内に、昇降口の扉が見えてきた。
おし、もう少し!!
俺は無理矢理手を伸ばし、骸骨を突き飛ばし、隙間に体をねじ込む。
「こんのぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~!!!!」
全身で力任せに突っ込み、そして――
ガッシャァァァァァァァァァァ~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!
そのまま倒れこむように、昇降口の出口から転げ出た。
「いってぇぇぇ~」
思いっきり腰を打ったかもしれぬ。いや、今はそんな事はどうでも良い。
「三島! 華京院! 無事か!!?」
上体ごと顔を上げ、背後の昇降口を見る。
そこには、同じく倒れこんでいる三島と華京院の姿があった。
「二人とも無事か」
俺は慌てて二人に駆け寄る。それを受けて、二人とも顔を挙げ、何とか立ち上がる。
「ええ」
「なんとか」
とりあえず、校舎からの脱出には成功したようだ。にしても……。
「今回の七不思議探索で一番の恐怖じゃないのか、コレ?」
昇降口を見ながら呆れ気味に呟く。
そこには、扉に突っ掛かって抜け出せなくなっている骸骨の群れ。
マジ何処の地獄絵図だよ。怖過ぎッ!!
「で、コレどうするんだ?」
「そうですね~」
現在進行形の地獄絵図を眺め、俺と華京院は溜息をつく。
なんだかよくわからんが、この状態を放置はまずい気がする。
ってか、ほんとになんなんだ、一体。
「そもそもコレ、どういう事なんだろうな。なんでこんなんになったんだ?」
「まるで分らないのですよね、こんな状況になったのかも」
「うわぁぁぁぁ~~!!!!」
と、そんな事をしていたら、三島の絶叫がとどろく。
……え? 何?
と、投げ槍気味に顔を巡らせると、何処かから湧いてきたのか分らない謎の骸骨に絡みつかれていた。
「三島ァァ~ッ!」
「うあぁぁぁ~! 助けて、助けてぇぇぇ!!!」
「三島ァァァァァァ!!!」
気が付けば、俺は無我夢中で駆け出していた。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『お母ちゃん(霊)といっしょ EP1st.~福井・小浜編 悩める「座敷童」の心の壁をぶち壊せ!~』
M‐赤井翼
ホラー
「お母ちゃん(霊)といっしょ」シリーズの実質「第2話」です。
読者様の希望により、いつもの「現代小説」カテゴリーでなく、「ホラー・ミステリー」カテゴリーからのエントリーとなりました。
広義の意味で「ホラー」とは「極端に非現実だけど誇張された状況の不条理さに焦点を当てたジャンル」とありますので、お母ちゃんの「かずみ」は浮遊霊キャラクターですので優しく見守ってやってください!
お時間のある方は「エピソード0」(実質的な「第1話」もアップしますのでお母ちゃんが今、家族と一緒に居る「前振り」の話がありますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです!
この作品にいただいた「エール」の投稿インセンティブは「こども食堂」運営の応援に使わせていただきますので、よろしかったらご協力ください!
では、お母ちゃん(霊】の「かずみ」と娘の「さとみ」、そしてお父ちゃんの「直」と今回のゲストの「座敷童」さんの応援をよろひこー!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる