家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎

文字の大きさ
40 / 54

12-4 三好一族の脅威④

しおりを挟む
 そこにメイザーレの部下が慌てて入室してきた。面々に非礼を詫びつつも、急いで彼に耳打ちをする。更には、カザルビンもまた自身の部下から同じように報告を受ける。

 その知らせは両者の顔色を失わせた。恐らく内容は同じだろう。

 呆然の二人。その様子にマーベッツとハインバイルは怪訝な表情を浮かべるばかり。国王もいぶかしんでしまう。だから、宰相仙熊は命じる。

「カザルビン外務局長、陛下にご報告を」

「は、はっ……。エイゼン王国は勇者に対し軍事行動を決定。王立魔術師団を投入致しました。……結果、魔術師団は殲滅、二千名のほとんどが皆殺しにされた模様です」

「何と!?」

 国防局長のマーベッツが信じられないとばかりに叫んだ。しかし、それはまだ序の口に過ぎない。

「更に、エイゼンは王国軍三万を投入するも、勇者とその妻の反攻を受け、壊滅。残存部隊は王都に帰還するも、勇者夫婦はその王都を包囲。約三十万の国民は、誰一人王都から出られない状況とのことです……」

 信じがたい知らせに、三重臣は困惑を隠せず。普段、感情を表に出さないバルディアランも、つい眉間にシワを寄せてしまった。平然を貫いたのは、両親のことを知っているその子供たちだけだ。

 神太郎はもう一度言う。

「どうも分からんなぁ。勇者である親父に、何でこうも強気に出られるのか……。親父は人間が決して敵わなかった魔軍七将を倒すほどの力があるんだろう? 何故、そんな男相手に喧嘩を売るのか、全然分からん」

 それは、彼の率直な感想だった。だからエイゼン側が謝罪せず、逆にそれを求めてきた理由が分からなかったのだ。

「ただ、まぁ……予想は出来る。舐めていたんだろう? 勇者と言っても、所詮はたった一人の人間。魔族より恐ろしいわけがない。それに一国の王子相手に無礼を働くわけがないとも思っていた。そういう価値観が、お前らを強気にさせたんだろう? その見誤った結果が、この大損害だ。残念だったな」

 そう想像すると、神太郎はつい苦笑してしまった。それがメイザーレを余計怒らせる。

「き、貴様は……。多くの人間が殺されたんだぞ。勇者によって、無実の人間たちが! 勇者は魔族を討つのが使命だろう! なのに、味方である人間を攻撃するなど言語道断! これは世界に対する大罪だ!」

 彼はその罪科を突きつけた。

 が……、

「違う、勘違いをしている」

 神太郎はそれを無視した。

「親父に人間を護る義務なんてないんだ。敵と判断すれば、魔族だろうが人間だろうが関係ない。そして、お前らは親父に敵対してしまった。結果、多くの命を失った。『勇者は人間の味方であるべき』というその思い込みも、この惨事の招いた理由の一つだな」

「人間のためでないと言うのなら、一体何のための魔王討伐だ!」

「国王に頼まれたから。それだけさ」

「……」

「この世界に来て右も左も分からない俺たち一家を世話してくれたのが、バルディアラン王だった。親父はその恩に応えているだけさ。世界旅行ついでにな。人間界全体のためとか、そんな大それた理由じゃない」

「……ぐ」

「大体さー、多くの無実の人間が死んだのは、そちらの国王が攻めさせたせいだろう。真冬に海に入って凍え死んだら、海のせいだって言うのか? 入った本人のせいだろう。馬鹿馬鹿しい」

 神太郎も最後には呆れてみせた。

「ここまで愚弄するか……貴様」

 だが、メイザーレにとってそれは到底受け入れられるものではない。

「宰相殿、何か言われい! でなければ、この小僧の発言、キダイ王国の総意と受け取って宜しいか!? ならば、貴国とは断交……否、戦火を交えることになりますぞ!」

 常に激高していた彼も、ここに至って遂に戦争を口にした。三重臣も神太郎がここまで無茶な煽りをするとは思ってもおらず、三好一族排除どころではなくなってくる。また、それを仙熊が放置していることも予想外だった。

「まだ分かっていないなぁ」

 そして、それを神太郎がまたまた呆れながら説明する。

「何故、兄貴が沈黙を護っているのか……。それは、この会談に結論を出す気がないからさ」

「何だと!?」

「だって、あと数日もすれば、交渉相手であるエイゼン王国は地上から消滅するんだ。適当に聞き流していれば、自動的に終わりってわけさ。一番簡単な解決方法だろう?」

「ぇ……」

 ここにきて、メイザーレはやっと状況を理解した。怒りを収め、赤かった顔を青くさせていく。

「き、貴国は我が国を滅ぼす気か?」

 そして、震えた口調で宰相に問うと、仙熊もやっと口を開いた。

「先ほど弟が言ったように、父は王への恩のみで魔王討伐を行っています。国王の命令ではなく、依頼で行動しているのです。つまり、キダイ王国の臣下ではない。そのため、今回の件は我が国とは関係ありませんし、我々には彼への召還命令も停戦命令も下せる権利はないのです」

「そんな……」

「我が国と長年に渡って友好関係にあったエイゼン王国が滅亡することは、誠に残念でなりません。その時はエイゼン国王を始め、国民の方々に対して、追悼の儀を致しましょう」

「い、いや……」

「お気の毒でございます」

 最後に、仙熊はそう言ってエイゼン側を突っぱねたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...