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早朝、ローゼは珍しくすっきり起きられた。カーテンを開き窓を開けると日が昇りつつある。
「これはお祭り日和だね」
ぴゅう、と冷たい風が吹き、ローゼは震えた。
「まだ冬は長そうだ」
慌てて窓を閉め椅子にかけていたカーディガンを羽織る。階下に向かうとヴァルドがいつものように料理をしていた。
「おはよう、ヴァルド」
「おはよう、ローゼ。今日は美味しい料理が沢山食べられるからね。町内の皆で一品ずつ持ち寄りするんだ。いっぱい食べてね」
「あぁ」
ローゼは食卓に着き、いただきますをした。今日は野菜がたっぷり入った春雨スープだ。熱々で美味しい。ローゼはふと気が付いた。
「ん…これ、生姜が入っているのかい?」
「よく分かったね。生姜を食べると体が温まるからさ」
「そうなのだね。美味しいよ」
「よかった。ドーナツもあるからね」
「あぁ、頂くよ」
*
ローゼはいつものワンピースドレスに着替えている。腰元のボタンを留め、姿見で自身を確認した。
「なんだか今日は髪の毛が気になるね」
ローゼの髪の毛はゆるくウェーブしている。くせ毛なのだろう。
「まとめてみようか」
ローゼは長い髪の毛を編み、まとめて後ろで留めた。
「これならいいかな」
コンコンと部屋のドアがノックされる。ヴァルドが呼びに来たのだろう。
「ローゼ、準備出来た?」
「あぁ、今行く」
*
「ローゼの髪型可愛いね。いつも可愛いけど」
「そうかい?ありがとう」
2人は徒歩で公民館に向かっている。既に祭りの準備は始まっているようだ。
「おはようございます、ヴァルド様、ローゼ様」
子どもたちがやって来て挨拶をする。
「ローゼ様、すごくお姫様みたい!」
「あたしもそのお髪がいいー!」
「いいよ、後でやってあげようね」
「わ、私も!!」
「もちろんいいよ」
ローゼがくすり、と笑うと子どもたちがローゼに群がってくる。
「ローゼ様、大好きー!」
「みんな、ローゼはこれからお仕事があるからね」
ヴァルドが手を打ち言う。
「はぁーい」
今日のローゼの仕事はバザーの会計だった。公民館の前には3棟テントが建てられている。
「ヴァルド様、準備はほぼ完了しています」
「ありがとう。ローゼ、困ったらすぐ呼んで。他の人も助けてくれるから大丈夫だからね」
「承知したよ」
ローゼは公民館内の会計と書かれた机の後ろに座っている。しばらく静かだったがだんだんと人が集まってきた。
「これください」
一番最初の客は幼い女の子と母親だった。
「500ゼニです」
金額を伝えると母親が紙幣を差し出してきた。ちょうどだ。
「ありがとうございました」
「お姉ちゃん、お姫様なのー?」
「え?」
お姉ちゃんと呼ばれローゼは戸惑った。
「やだ、すみません。もうモンちゃん、お姉ちゃん困っちゃうでしょ?本当にごめんなさいね」
「いえ」
母親が女の子を抱き上げる。
「ばいばい、お姉ちゃん」
女の子が手を振ってきたのでローゼは振り返した。
それからローゼはしばらく接客を頑張った。
「ローゼ、お疲れ様…って大丈夫?」
人が切れた頃にはローゼの体力は限りなくゼロに近かった。
「ヴァルド…僕は…」
「大丈夫だよ!救護室行こうね!」
「すま…ないね」
かくっ、と落ちてしまったローゼをヴァルドは抱え救護室に運んでくれたらしい。ローゼが気が付くととっくに昼を過ぎていた。
「ローゼ様、ご飯持ってきたよ」
「あぁ、ありがとう」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。対人の仕事には慣れてなくてね。たべれば元通りさ」
ローゼは持ってきてもらった食事を食べ始めた。
「あとで髪の毛を結ってあげるよ。僕の今日の仕事はほとんど終わったからね」
「本当?」
「あぁ」
「待ってて!みんな呼んでくる!」
子どもたちが駆け出していく。ローゼは気にせず食事を摂り始めた。
「む…このサラダ、かぼちゃにチーズが入っているね。こっちのスープは飲んだことない出汁だ」
ローゼはしっかり食事を堪能し、ごちそうさまをした。
「さて、片付けをしなければね」
ローゼは食器を水道で洗い、歯を磨いた。
「ローゼ様、食べた?」
救護室に戻るとぴょこっと子どもたちが顔を出す。
「おいで」
ローゼの言葉に子どもたちは顔を輝かせ駆け寄ってきた。ローゼはひとりひとり丁寧に髪を結い上げてやった。皆、鏡を見て喜んでいたので、ローゼとしても嬉しかった。
「ローゼ、お疲れ様」
「ヴァルド、すまなかったね。大変じゃなかったかい?」
「大丈夫。皆心配していたよ。今は体調どう?」
「あぁ、もうなんともないよ。僕はもっと人と関わらなければと反省したのさ」
「氷像を見に行こうか?」
「あぁ、是非に」
2人の冬はまだ続く。
「これはお祭り日和だね」
ぴゅう、と冷たい風が吹き、ローゼは震えた。
「まだ冬は長そうだ」
慌てて窓を閉め椅子にかけていたカーディガンを羽織る。階下に向かうとヴァルドがいつものように料理をしていた。
「おはよう、ヴァルド」
「おはよう、ローゼ。今日は美味しい料理が沢山食べられるからね。町内の皆で一品ずつ持ち寄りするんだ。いっぱい食べてね」
「あぁ」
ローゼは食卓に着き、いただきますをした。今日は野菜がたっぷり入った春雨スープだ。熱々で美味しい。ローゼはふと気が付いた。
「ん…これ、生姜が入っているのかい?」
「よく分かったね。生姜を食べると体が温まるからさ」
「そうなのだね。美味しいよ」
「よかった。ドーナツもあるからね」
「あぁ、頂くよ」
*
ローゼはいつものワンピースドレスに着替えている。腰元のボタンを留め、姿見で自身を確認した。
「なんだか今日は髪の毛が気になるね」
ローゼの髪の毛はゆるくウェーブしている。くせ毛なのだろう。
「まとめてみようか」
ローゼは長い髪の毛を編み、まとめて後ろで留めた。
「これならいいかな」
コンコンと部屋のドアがノックされる。ヴァルドが呼びに来たのだろう。
「ローゼ、準備出来た?」
「あぁ、今行く」
*
「ローゼの髪型可愛いね。いつも可愛いけど」
「そうかい?ありがとう」
2人は徒歩で公民館に向かっている。既に祭りの準備は始まっているようだ。
「おはようございます、ヴァルド様、ローゼ様」
子どもたちがやって来て挨拶をする。
「ローゼ様、すごくお姫様みたい!」
「あたしもそのお髪がいいー!」
「いいよ、後でやってあげようね」
「わ、私も!!」
「もちろんいいよ」
ローゼがくすり、と笑うと子どもたちがローゼに群がってくる。
「ローゼ様、大好きー!」
「みんな、ローゼはこれからお仕事があるからね」
ヴァルドが手を打ち言う。
「はぁーい」
今日のローゼの仕事はバザーの会計だった。公民館の前には3棟テントが建てられている。
「ヴァルド様、準備はほぼ完了しています」
「ありがとう。ローゼ、困ったらすぐ呼んで。他の人も助けてくれるから大丈夫だからね」
「承知したよ」
ローゼは公民館内の会計と書かれた机の後ろに座っている。しばらく静かだったがだんだんと人が集まってきた。
「これください」
一番最初の客は幼い女の子と母親だった。
「500ゼニです」
金額を伝えると母親が紙幣を差し出してきた。ちょうどだ。
「ありがとうございました」
「お姉ちゃん、お姫様なのー?」
「え?」
お姉ちゃんと呼ばれローゼは戸惑った。
「やだ、すみません。もうモンちゃん、お姉ちゃん困っちゃうでしょ?本当にごめんなさいね」
「いえ」
母親が女の子を抱き上げる。
「ばいばい、お姉ちゃん」
女の子が手を振ってきたのでローゼは振り返した。
それからローゼはしばらく接客を頑張った。
「ローゼ、お疲れ様…って大丈夫?」
人が切れた頃にはローゼの体力は限りなくゼロに近かった。
「ヴァルド…僕は…」
「大丈夫だよ!救護室行こうね!」
「すま…ないね」
かくっ、と落ちてしまったローゼをヴァルドは抱え救護室に運んでくれたらしい。ローゼが気が付くととっくに昼を過ぎていた。
「ローゼ様、ご飯持ってきたよ」
「あぁ、ありがとう」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。対人の仕事には慣れてなくてね。たべれば元通りさ」
ローゼは持ってきてもらった食事を食べ始めた。
「あとで髪の毛を結ってあげるよ。僕の今日の仕事はほとんど終わったからね」
「本当?」
「あぁ」
「待ってて!みんな呼んでくる!」
子どもたちが駆け出していく。ローゼは気にせず食事を摂り始めた。
「む…このサラダ、かぼちゃにチーズが入っているね。こっちのスープは飲んだことない出汁だ」
ローゼはしっかり食事を堪能し、ごちそうさまをした。
「さて、片付けをしなければね」
ローゼは食器を水道で洗い、歯を磨いた。
「ローゼ様、食べた?」
救護室に戻るとぴょこっと子どもたちが顔を出す。
「おいで」
ローゼの言葉に子どもたちは顔を輝かせ駆け寄ってきた。ローゼはひとりひとり丁寧に髪を結い上げてやった。皆、鏡を見て喜んでいたので、ローゼとしても嬉しかった。
「ローゼ、お疲れ様」
「ヴァルド、すまなかったね。大変じゃなかったかい?」
「大丈夫。皆心配していたよ。今は体調どう?」
「あぁ、もうなんともないよ。僕はもっと人と関わらなければと反省したのさ」
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「あぁ、是非に」
2人の冬はまだ続く。
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