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1・遊戯と遊技
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鬱蒼と木々が茂る森の中で、少女が二人、すやすや眠っている。二人共黒いワンピースに白いフリルの付いたエプロンを着けている。その周りを取り囲むようにデーモンが一体立っていた。彼は周りを警戒しているように見える。
「ん」
一人の金髪の少女がムクリと体を起こした。外で眠るのに慣れているのか、特に周りを警戒する様子もなく、うんしょと伸びをしている。
「遊戯、起きろ。早く行かないと主人がうるさいぞ」
遊戯と呼ばれた茶髪の少女はむにゃむにゃと寝言を言っている。
「遊戯」
「遊技ちゃん一人で行ってきて。僕まだ眠い」
「仕方ないな」
遊技と呼ばれた少女は立ち上がって身だしなみを整えた。寝転んでいたせいで乱れたヘッドドレスを着け直す。
「デーモン行くぞ」
「畏まった」
デーモンが遊技を軽々と抱えて飛ぶ。彼女たちは魔界が誇る屈指のデーモン・テイマーであり、漆黒を司る主人に仕えるメイドだ。漆黒というのは魔界の支配者である。遊戯と遊技の二人は16歳だが身長が低いせいか年齢より遥かに幼く見える。そのせいか他人から侮られがちだが、二人の実力は本物だ。
「遊技、もう眠らなくていいのか?吾輩は道を覚えているゆえ、まだ眠っていても構わないが」
デーモンにそう気遣われ遊技は笑った。
「俺は大丈夫だ。ジャス、お前こそずっと周りを見張っていたんだ。疲れてないか?」
「吾輩にはなんてことのないことだ」
ジャスの答えに遊技はそうかと笑った。彼女はデーモンに特に愛されている。もちろん双子の姉である遊戯もだ。彼女たちのデーモン・テイマーの素質は十分過ぎるほどあった。
「遊技、もう間もなく漆黒様の屋敷に到着する」
「ありがとう」
デーモンは静かに降り立った。そこは緑で囲まれており、一見屋敷があるとは思えない。
漆黒は大の人嫌いだ。遊戯と遊技を除いては滅多に人の前に姿を見せない。
遊技が見えないが、門の前に立ち毎回変わる呪文を唱えると門が音を立てて開いていく。それでもまだ屋敷には入れない。漆黒は基本的に忙しい人だ。魔界の管理をしながら、大企業の社長を兼任している。それを遊戯と遊技も手伝っているのだ。遊技はそばにあったモニタに手を翳した。ここまで厳重にしなくてもいいのに、と毎度思うが、漆黒は聞き入れない。どこで情報が漏れるか分からないからと。ようやく屋敷の中に入れた遊技は、漆黒のいる部屋へ向かった。この時間、彼は自室で仕事をしている。
「おーい!漆黒!お茶でも淹れてやろうか?」
部屋に入って早々、遊技がそう声を掛けるとモニターから顔を上げた漆黒が顔をしかめた。
「お前の茶は飲めない。飲めば生物を滅ぼす」
「う、うるさいな!さすがにそれは言いすぎだからな!」
遊技が真っ赤になりながら怒ると、漆黒は笑った。
「遊技、新しいゲームを作った」
「え?本当?」
漆黒に手招きされ、遊技は彼のそばに駆け寄った。モニターに映し出されているのはどう見てもダンジョンだ。
「え、これってダンジョン…だよな?」
「俺が作った」
「は?じゃあ最近忙しそうにしてたのって…」
「これを作っていたからな」
遊技は改めてモニターを見直す。ダンジョンは今まで過去の遺物とされてきていた。
それを目の前の男があっさり再現してしまうとは。
「で、どんなゲームなんだよ?」
「遊戯はどうした?」
「遊戯は寝てる。もうそろそろ来るぜ」
遊技がそう言って振り返ると、遊戯が眠そうな顔でやってきた。
「漆黒くん、人使い荒すぎ!!」
イーっと歯を食いしばりながら遊戯が言うと漆黒が笑った。遊戯と遊技は昨日まで二人でモンスターの捕獲を行っていたのだ。それも全て、このダンジョンを作るためだったようだ。
「遊戯、漆黒が新しいゲームを作ったんだってよ」
「え?何それ、やってみたい!」
遊戯も遊技も漆黒の作るゲームが大好きだ。
「RTAというものは知っているか?」
「あれだろ?ゲームクリアまでの時間を測るやつだよな?」
「そうだ。今回用意したのはダンジョンクリアまでの時間を競うゲームだ。色々な試練が立ち塞がってくる」
「えぇ…そんなすごいの作ってたんだぁ」
「で、いつから遊べるんだ?」
漆黒がマウスをカチとクリックした。するとモニターの画面が変わる。そこには武装した者で溢れかえっていた。どうやらカメラの映像らしい。
「今日の17時からゲームはスタートする。お前たちにも挑戦してもらおう。圧倒的な力を見せてやれ」
遊戯と遊技は頷いた。
「ん」
一人の金髪の少女がムクリと体を起こした。外で眠るのに慣れているのか、特に周りを警戒する様子もなく、うんしょと伸びをしている。
「遊戯、起きろ。早く行かないと主人がうるさいぞ」
遊戯と呼ばれた茶髪の少女はむにゃむにゃと寝言を言っている。
「遊戯」
「遊技ちゃん一人で行ってきて。僕まだ眠い」
「仕方ないな」
遊技と呼ばれた少女は立ち上がって身だしなみを整えた。寝転んでいたせいで乱れたヘッドドレスを着け直す。
「デーモン行くぞ」
「畏まった」
デーモンが遊技を軽々と抱えて飛ぶ。彼女たちは魔界が誇る屈指のデーモン・テイマーであり、漆黒を司る主人に仕えるメイドだ。漆黒というのは魔界の支配者である。遊戯と遊技の二人は16歳だが身長が低いせいか年齢より遥かに幼く見える。そのせいか他人から侮られがちだが、二人の実力は本物だ。
「遊技、もう眠らなくていいのか?吾輩は道を覚えているゆえ、まだ眠っていても構わないが」
デーモンにそう気遣われ遊技は笑った。
「俺は大丈夫だ。ジャス、お前こそずっと周りを見張っていたんだ。疲れてないか?」
「吾輩にはなんてことのないことだ」
ジャスの答えに遊技はそうかと笑った。彼女はデーモンに特に愛されている。もちろん双子の姉である遊戯もだ。彼女たちのデーモン・テイマーの素質は十分過ぎるほどあった。
「遊技、もう間もなく漆黒様の屋敷に到着する」
「ありがとう」
デーモンは静かに降り立った。そこは緑で囲まれており、一見屋敷があるとは思えない。
漆黒は大の人嫌いだ。遊戯と遊技を除いては滅多に人の前に姿を見せない。
遊技が見えないが、門の前に立ち毎回変わる呪文を唱えると門が音を立てて開いていく。それでもまだ屋敷には入れない。漆黒は基本的に忙しい人だ。魔界の管理をしながら、大企業の社長を兼任している。それを遊戯と遊技も手伝っているのだ。遊技はそばにあったモニタに手を翳した。ここまで厳重にしなくてもいいのに、と毎度思うが、漆黒は聞き入れない。どこで情報が漏れるか分からないからと。ようやく屋敷の中に入れた遊技は、漆黒のいる部屋へ向かった。この時間、彼は自室で仕事をしている。
「おーい!漆黒!お茶でも淹れてやろうか?」
部屋に入って早々、遊技がそう声を掛けるとモニターから顔を上げた漆黒が顔をしかめた。
「お前の茶は飲めない。飲めば生物を滅ぼす」
「う、うるさいな!さすがにそれは言いすぎだからな!」
遊技が真っ赤になりながら怒ると、漆黒は笑った。
「遊技、新しいゲームを作った」
「え?本当?」
漆黒に手招きされ、遊技は彼のそばに駆け寄った。モニターに映し出されているのはどう見てもダンジョンだ。
「え、これってダンジョン…だよな?」
「俺が作った」
「は?じゃあ最近忙しそうにしてたのって…」
「これを作っていたからな」
遊技は改めてモニターを見直す。ダンジョンは今まで過去の遺物とされてきていた。
それを目の前の男があっさり再現してしまうとは。
「で、どんなゲームなんだよ?」
「遊戯はどうした?」
「遊戯は寝てる。もうそろそろ来るぜ」
遊技がそう言って振り返ると、遊戯が眠そうな顔でやってきた。
「漆黒くん、人使い荒すぎ!!」
イーっと歯を食いしばりながら遊戯が言うと漆黒が笑った。遊戯と遊技は昨日まで二人でモンスターの捕獲を行っていたのだ。それも全て、このダンジョンを作るためだったようだ。
「遊戯、漆黒が新しいゲームを作ったんだってよ」
「え?何それ、やってみたい!」
遊戯も遊技も漆黒の作るゲームが大好きだ。
「RTAというものは知っているか?」
「あれだろ?ゲームクリアまでの時間を測るやつだよな?」
「そうだ。今回用意したのはダンジョンクリアまでの時間を競うゲームだ。色々な試練が立ち塞がってくる」
「えぇ…そんなすごいの作ってたんだぁ」
「で、いつから遊べるんだ?」
漆黒がマウスをカチとクリックした。するとモニターの画面が変わる。そこには武装した者で溢れかえっていた。どうやらカメラの映像らしい。
「今日の17時からゲームはスタートする。お前たちにも挑戦してもらおう。圧倒的な力を見せてやれ」
遊戯と遊技は頷いた。
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