引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

文字の大きさ
1 / 92

1

しおりを挟む
アオナは惑星の辺境にある小さな国だ。インフラは最近整ったばかりというまだまだ発展途中の国である。この国が他の国から狙われなかったのは、あまりに辺境過ぎるためだ。この国の歴史は周りが思っているより、意外と長い。アオナの政治は古くから王族が取り仕切っている。だが現在、跡取りもおらず国王が高齢ということもあり、これからは民主制にするべきではないのかという声も上がっている。国王もまた、それに賛同している。だが、いざ民主制にするとはいっても国のリーダーは必要である。それには一体誰が?と、国民の間で話題は持ちきりだった。国王はそこである人のことを思い出していた。聖域で祈り続けているあの聖女を。その人に占ってもらえば、適任な人物を見つけてもらえるはずである。国王は老体に鞭打って聖域を訪ねた。そこにいたのはこちらに背を向けて祈り続けている聖女の姿だ。彼女は小さい。

「もし…」

聖女は振り返る。そして彼女は目を丸くした。本来であれば身分が下の聖女の方から国王のもとを訪ねなくてはならないはずである。

「こ!国王陛下!!申し訳ありません!」

聖女は地面に頭を擦り付けて謝っている。国王もそこまで謝られてしまうと何も言えない。とりあえず、今後の政治体制が変わることを彼女に説明し、占いをして、この国の中からリーダーとして適任の者を探してもらいたいと頼んだ。聖女は返事こそするものの、上の空という感じである。国王はいよいよ不安になって、尋ねた。

「まさか、占いが出来ぬのか?」

「あ!いえ!そういうわけでは、えーと」

聖女があまりに煮え切らない返事をするので、国王もだんだん苛々してきた。

「はっきりせんか!」

喝にビリビリと空気が震える。国王は元々屈強な戦士である。若い頃から戦いという場に身をおいていた。そこで王妃(すでに亡くなっているが)に見初められ、結婚したのだ。国王の巨大で立派な体躯にはいくつも痛々しい傷が残っている。それが彼の誉れだ。だが聖女は国王の喝に全く怯えなかった。
それどころかはっきりこう言ったのである。

「私の占いでは国内に適任な者はいないと出ております」

「なんだと?!」

国王は驚いた。アオナは確かに小さい国だ。だが国民の一人も該当しないとは。この聖女の占いには、彼女が幼い頃から救われている。国王は呻く代わりに手で顔を覆った。しかしこうしている間も惜しい。

「それは誠か?ならば適任な者はどこにいる?」

国王はチラリ、と聖女を見た。彼女は自分の背丈よりある杖をぎゅっと握りしめて言う。

「は、旅をして探せと」

「旅だと?」

国王は成る程、と思った。これは自分に課された最期の試練だろうと。そして、今回もこの聖女を信じてみようと。

「聖女ソータナレアよ、お前が探しに行くのだ」

「は」

ソータナレアはその場に跪いたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

追放された元聖女は、イケメン騎士団の寮母になる

腐ったバナナ
恋愛
聖女として完璧な人生を送っていたリーリアは、無実の罪で「はぐれ者騎士団」の寮へ追放される。 荒れ果てた場所で、彼女は無愛想な寮長ゼノンをはじめとするイケメン騎士たちと出会う。最初は反発する彼らだが、リーリアは聖女の力と料理で、次第に彼らの心を解きほぐしていく。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

召しませ、私の旦那さまっ!〜美醜逆転の世界でイケメン男性を召喚します〜

紗幸
恋愛
「醜い怪物」こそ、私の理想の旦那さま! 聖女ミリアは、魔王を倒す力を持つ「勇者」を召喚する大役を担う。だけど、ミリアの願いはただ一つ。日本基準の超絶イケメンを召喚し、魔王討伐の旅を通して結婚することだった。召喚されたゼインは、この国の美醜の基準では「醜悪な怪物」扱い。しかしミリアの目には、彼は完璧な最強イケメンに映っていた。ミリアは魔王討伐の旅を「イケメン旦那さまゲットのためのアピールタイム」と称し、ゼインの心を掴もうと画策する。しかし、ゼインは冷酷な仮面を崩さないまま、旅が終わる。 イケメン勇者と美少女聖女が織りなす、勘違いと愛が暴走する異世界ラブコメディ。果たして、二人の「愛の旅」は、最高の結末を迎えるのか? ※短編用に書いたのですが、少し長くなったので連載にしています ※この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

処理中です...