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ガラガラと鎖が揺れる音がして、キメルは目を開けた。どうやら気を失っていたらしい。
「ブルル」
威嚇のため鼻を鳴らすと、その人はじり、と後ずさった。一体自分になんの用だろうとキメルは訝しんで、ハッとなった。鎖から解放されている。
「なんで…」
魔法も使える。キメルは静かに立ち上がった。
「お前はさっきの?」
キメルの鎖を外してくれたのは先程出会った少年、ロニだった。シーと人差し指を口に当てている。
「とにかく遠くに行こう。こっちだ」
ロニが駆け出していったのでキメルもあとを追い掛けた。なにかの罠かもしれないと一応注意する。しばらく走り、タイタンの拠点から随分離れた場所に来た。
「ロニ、といったな?」
肩で荒く呼吸をするロニにキメルは尋ねる。汗を手の甲で拭いながらロニは頷いた。
「なんで俺を助けた?」
「キメルがただの敵だとは思えなくて、だって俺たちの話を聞いてくれただろ?」
「いや、普通は聞くだろう」
キメルが冷静に突っ込むと、ロニが固まり赤くなった。
「で、でも今までそんな事なかったんだ!本当だよ!」
「ロニ、とりあえず俺と中央都市に来い。お前は裏切り者だ。タイタンに捕まったら命はない」
ごくり、とロニが喉を鳴らす。
「うん、どこへでも行くよ。俺、何も持ってないし」
「とりあえず乗れ。行くぞ」
キメルは空を駆け出した。ソータは今頃どうしているだろう。泣いていないといいと思う。
「キメルは神様なのか?」
「ノーコメントだ」
ロニは色々聞きたがった。だが、キメルは大の人間嫌いである。簡単に心を許さない。
「あの、ソータって誰なんだ?」
「!!」
「あ、やっぱり普通の関係じゃないんだ。鎖外してる間、寝ながら言ってたからさ」
まさか自分が寝言を言っていたとは。呑気なのにも程がある。
「ノーコメントだ」
「キメルはさっきからそればっかりだな」
ロニが膨れている。
「俺は人間が嫌いなんだ。上辺ばかり取り繕って心にもないことを平気で言う」
「う…」
ロニにも思い当たる節があったらしい。しばらく固まって大きくため息を吐いた。
「キメルの言うことはよく分かるよ?分かるけど人間社会って複雑なんだ」
「複雑にしてるのはお前たち自身の思考だろう」
「身も蓋もないなあ」
ロニはそう言って笑った。
「何がおかしい?」
ムスッとしながらキメルが尋ねると背中にしがみつかれる。
「まさか俺がタイタンから飛び出すなんて思わなかったからさ」
「今から引き返すか?」
キメルの冗談をロニはまともに受け取ったらしい、慌てて否定した。
「冗談に決まっているだろう」
「キメルの冗談、心臓に悪い」
はー、とロニは安堵の息をついている。
「あぁ、そういえば衛星は壊しておいた。言っておくが弁償はしないからな」
「え?マジ?マジかー!」
ロニが笑い出す。
「キメルマジですげー!」
「お前の方が遥かに肝が据わっているんだが」
キメルが困って言うと、ロニはそう?と首を傾げた。
「で、お前にはタイタンのことを洗いざらい話してもらうが、そのことは覚悟しているんだろうな?」
「まぁ裏切り者らしいよね、その方が」
「そうだな…」
「でもさ、俺、めちゃくちゃ下っ端だったからあまりタイタンの情報知らないんだ」
「…引き返すか」
「わー!!待って待って!!それだけは本当に!知ってる情報は全部話すからさー!」
「絶対だぞ。俺はお前を殺すのなんて訳ないんだからな?」
「キメル怖い…」
震えるロニをよそにキメルは更に走る速度をあげた。
✢✢✢
キメルが帰って来る。ソータはそれを知り、ようやく生きた心地がした。彼はタイタンに所属していた少年を人質にした、とも言っていた。人質は物騒だがキメルのことだ、酷い扱いはしていないだろう。
「よかったですね、ソータナレア様」
「キメルってば大胆なんだもの。自分からタイタンの本拠地に行くなんて」
「さすがに私でもそれは躊躇います」
パペがため息を吐いている。早くキメルに会いたい、ソータはキメルの無事を祈った。
「ソータ!!」
ふとキメルの声が聞こえてくる。ソータは寮から飛び出した。キメルだ。
「キメル!」
ソータはキメルに抱き着いた。
「キメルの馬鹿!危ないことばかりして!」
「いや、えーと、すまん」
「あのー」
キメルの背には可愛らしい誰かが乗っていた。少年と聞いていたが、その人は少女にしか見えない。自分が聞き間違えたのかと思い、ソータは慌てた。
「え、えとお嬢様、私はソータナレアと申します。聖女です」
「お嬢様?」
ロニはソータに尋ね返した。それにキメルが思わずといった様子で鼻を鳴らす。ソータはますます慌てた。
「お嬢様、とりあえず中にお入りください!お着替えをせねば!」
「えーと、俺、一応男…」
「え?」
「え?」
ソータがぽかん、とロニを見つめるとロニも同様にソータを見つめた。キメルは面白いらしい。尻尾をバタバタさせている。
「も、申し訳ありませんでした。まさか殿方とは」
ソータは体を直角に折り曲げてロニに謝っている。
「や、もういいよ。全然気にしてないし、よくあることだから」
「よくあるのですか?」
「う、うん」
ロニは戸惑いながらも頷いた。
「ロニ様はお姫様に見えるのです!きっと強い武器になりますよ!」
「え?」
「確かにその通りかもしれません」
お茶を優雅に運んできたのはもちろんパペである。茶の入ったティーカップをロニとソータの前に置いた。
「あなたは?」
「私はパペと申します。ソータナレア様と共に行動させて頂いております」
「は、はぁ」
「では、貴方のことをお聞きしても?」
パペは相変わらず無表情だ。ソータも彼の言葉に頷く。
「ロニ様、私たちに協力してください」
✢✢✢
「で、あんたが星時計の複製を持ってるってわけね」
鬼はシヴァの元を立ち寄っていた。
「君の分もある」
鬼が複製を差し出すとシヴァが笑い出す。
「あらぁ、気が利くじゃない。でもこんなところまで来るかしら。まぁ持っていたらそれなりに使えそうね」
「君の人形は優秀だね」
シヴァがふふ、と笑う。
「アタシが育てた子だもの。当たり前でしょ!」
「ブルル」
威嚇のため鼻を鳴らすと、その人はじり、と後ずさった。一体自分になんの用だろうとキメルは訝しんで、ハッとなった。鎖から解放されている。
「なんで…」
魔法も使える。キメルは静かに立ち上がった。
「お前はさっきの?」
キメルの鎖を外してくれたのは先程出会った少年、ロニだった。シーと人差し指を口に当てている。
「とにかく遠くに行こう。こっちだ」
ロニが駆け出していったのでキメルもあとを追い掛けた。なにかの罠かもしれないと一応注意する。しばらく走り、タイタンの拠点から随分離れた場所に来た。
「ロニ、といったな?」
肩で荒く呼吸をするロニにキメルは尋ねる。汗を手の甲で拭いながらロニは頷いた。
「なんで俺を助けた?」
「キメルがただの敵だとは思えなくて、だって俺たちの話を聞いてくれただろ?」
「いや、普通は聞くだろう」
キメルが冷静に突っ込むと、ロニが固まり赤くなった。
「で、でも今までそんな事なかったんだ!本当だよ!」
「ロニ、とりあえず俺と中央都市に来い。お前は裏切り者だ。タイタンに捕まったら命はない」
ごくり、とロニが喉を鳴らす。
「うん、どこへでも行くよ。俺、何も持ってないし」
「とりあえず乗れ。行くぞ」
キメルは空を駆け出した。ソータは今頃どうしているだろう。泣いていないといいと思う。
「キメルは神様なのか?」
「ノーコメントだ」
ロニは色々聞きたがった。だが、キメルは大の人間嫌いである。簡単に心を許さない。
「あの、ソータって誰なんだ?」
「!!」
「あ、やっぱり普通の関係じゃないんだ。鎖外してる間、寝ながら言ってたからさ」
まさか自分が寝言を言っていたとは。呑気なのにも程がある。
「ノーコメントだ」
「キメルはさっきからそればっかりだな」
ロニが膨れている。
「俺は人間が嫌いなんだ。上辺ばかり取り繕って心にもないことを平気で言う」
「う…」
ロニにも思い当たる節があったらしい。しばらく固まって大きくため息を吐いた。
「キメルの言うことはよく分かるよ?分かるけど人間社会って複雑なんだ」
「複雑にしてるのはお前たち自身の思考だろう」
「身も蓋もないなあ」
ロニはそう言って笑った。
「何がおかしい?」
ムスッとしながらキメルが尋ねると背中にしがみつかれる。
「まさか俺がタイタンから飛び出すなんて思わなかったからさ」
「今から引き返すか?」
キメルの冗談をロニはまともに受け取ったらしい、慌てて否定した。
「冗談に決まっているだろう」
「キメルの冗談、心臓に悪い」
はー、とロニは安堵の息をついている。
「あぁ、そういえば衛星は壊しておいた。言っておくが弁償はしないからな」
「え?マジ?マジかー!」
ロニが笑い出す。
「キメルマジですげー!」
「お前の方が遥かに肝が据わっているんだが」
キメルが困って言うと、ロニはそう?と首を傾げた。
「で、お前にはタイタンのことを洗いざらい話してもらうが、そのことは覚悟しているんだろうな?」
「まぁ裏切り者らしいよね、その方が」
「そうだな…」
「でもさ、俺、めちゃくちゃ下っ端だったからあまりタイタンの情報知らないんだ」
「…引き返すか」
「わー!!待って待って!!それだけは本当に!知ってる情報は全部話すからさー!」
「絶対だぞ。俺はお前を殺すのなんて訳ないんだからな?」
「キメル怖い…」
震えるロニをよそにキメルは更に走る速度をあげた。
✢✢✢
キメルが帰って来る。ソータはそれを知り、ようやく生きた心地がした。彼はタイタンに所属していた少年を人質にした、とも言っていた。人質は物騒だがキメルのことだ、酷い扱いはしていないだろう。
「よかったですね、ソータナレア様」
「キメルってば大胆なんだもの。自分からタイタンの本拠地に行くなんて」
「さすがに私でもそれは躊躇います」
パペがため息を吐いている。早くキメルに会いたい、ソータはキメルの無事を祈った。
「ソータ!!」
ふとキメルの声が聞こえてくる。ソータは寮から飛び出した。キメルだ。
「キメル!」
ソータはキメルに抱き着いた。
「キメルの馬鹿!危ないことばかりして!」
「いや、えーと、すまん」
「あのー」
キメルの背には可愛らしい誰かが乗っていた。少年と聞いていたが、その人は少女にしか見えない。自分が聞き間違えたのかと思い、ソータは慌てた。
「え、えとお嬢様、私はソータナレアと申します。聖女です」
「お嬢様?」
ロニはソータに尋ね返した。それにキメルが思わずといった様子で鼻を鳴らす。ソータはますます慌てた。
「お嬢様、とりあえず中にお入りください!お着替えをせねば!」
「えーと、俺、一応男…」
「え?」
「え?」
ソータがぽかん、とロニを見つめるとロニも同様にソータを見つめた。キメルは面白いらしい。尻尾をバタバタさせている。
「も、申し訳ありませんでした。まさか殿方とは」
ソータは体を直角に折り曲げてロニに謝っている。
「や、もういいよ。全然気にしてないし、よくあることだから」
「よくあるのですか?」
「う、うん」
ロニは戸惑いながらも頷いた。
「ロニ様はお姫様に見えるのです!きっと強い武器になりますよ!」
「え?」
「確かにその通りかもしれません」
お茶を優雅に運んできたのはもちろんパペである。茶の入ったティーカップをロニとソータの前に置いた。
「あなたは?」
「私はパペと申します。ソータナレア様と共に行動させて頂いております」
「は、はぁ」
「では、貴方のことをお聞きしても?」
パペは相変わらず無表情だ。ソータも彼の言葉に頷く。
「ロニ様、私たちに協力してください」
✢✢✢
「で、あんたが星時計の複製を持ってるってわけね」
鬼はシヴァの元を立ち寄っていた。
「君の分もある」
鬼が複製を差し出すとシヴァが笑い出す。
「あらぁ、気が利くじゃない。でもこんなところまで来るかしら。まぁ持っていたらそれなりに使えそうね」
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