引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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「ね、ソータ。これからどこ行くの?もう暗いし帰ろうよ」

 深夜、ソータとロニ、キメルは岩場を歩いている。少しでも足を踏み外せば真っ逆さまだ。ソータはロニの震える手をしっかり掴んでいた。

「大丈夫だ、ガキ。あれ?」

 一番後ろを歩いていたキメルが急に立ち止まる。ソータも分かっているのか歩を止めた。

「そうなのですよ、キメル」

「うーん、そうか」

「え?一体何が?」

 ロニは訳が分からないといった様子だ。ソータは毅然と言う。

「ロニ様、あなたに魔力が宿り始めてるんです」

「はぃい?なんでそうなるの?」

「こいつ、思っていたより馬鹿だぞ」

「こら!キメル!!ロニ様、今、キメルと普通に話せますよね?」

「え?あ、うん。そうだね、え?話せないのが普通なの?」

「はい。今のあなたにはあなたの妹さんと同じことが起きています」

「え、じゃあどうすれば…」

 あたふたし始めたロニにキメルはため息を吐いた。

「こいつ、本当にソータと同い年か?頼りにならなすぎるだろ」

「え?ソータって俺と年同じなんだ。へへ、奇遇だ…うわあ!!」

 キメルに頭を甘噛みされたロニである。ぐいとそのまま頭を引っ張られた。

「なにさりげなくソータに抱き着こうとしてるんだ」

「だってソータ可愛いし、いいじゃんか」

「ロニ様もキメルも私のお話を聴いてください」

 根気強いソータもさすがにうんざりしてきた。

「これから私たちはラシータ様の今の状態を確認します。その後二班に分かれ、それぞれがスイレイ様の保護、ラシータ様の復活を行います」
 
「え、そんなすごいことするの?」

「ロニ様、ここからあなたはどうされますか?ここで警察に保護して頂くという選択肢もありますよ」

 ソータの言葉が重たい。ロニは迷っていた。自分に出来ることは何も無いかもしれない。

「…ソータ、俺」

「どうされますか?」

 ソータの表情は暗いから見えなかったが、きっと厳しい表情をしているのだろう。

「俺、ソータたちの仲間になりたい。魔力があるなら出来ることも増えるだろうし、俺は星時計に何かあっても修復が出来るよ」

「それは…」

 ロニの特技が機械いじりであることをソータは思い出していた。

「ロニ様、もしかしたらお仲間と戦うことになるかもしれませんよ」

 ソータからすれば最後の警告だった。

「ん、大丈夫。俺はラシータ様を救いたいし、何をしようとしているかは分からないけどタイタンを止めたい。そんな理由じゃ駄目?」

「ロニ様…」

 ソータはロニの手を握った。少年とは思えないほっそりした指先をロニは持つ。

「よろしくお願い致します」

「あ、うん、よろしく!」

 一行は岩場の頂上にいる。ここは中央都市から少し外れた場所にある。

 ソータは杖を取り出した。跪き祈りを捧げる。

「神ラシータよ、我の前に顕現せよ」

 ラシータは現れなかった。

「やはり封印されているようです」

 ロニはびっくりしてしまった。

「え、魔法ってもっと色々呪文とか死んだ鳥とか儀式とか、とにかく怪しい物色々使うんじゃないの?」

「ソータは聖女だ。お前、そもそも魔法に偏見持ち過ぎだろう」

 キメルが突っ込む。

「え、あ、そうなんだ。俺、魔力持ちの人は皆やべー儀式をしているのかと」

「差別だな、ある意味それも」

「そ、そそ、そうだよね!ごめんなさい…」

「いいんですよ。知らないことは知ればいいんですから。私もこの間負けを知りましたし」

「俺もだ」

「そ、そうなんだ」

 ロニは心配そうに二人をチラチラ見た。

「落ち込んだ?」

「当然」

 キメルとソータが声を合わせる。

「負けると悔しいのは皆一緒なんだね」

 ソータもキメルも頷く。

「では、そろそろ戻りましょう。作戦を練らなければ」

「作戦?」

「俺たちには兵力なんてないからな。出来ることは頭の首を獲ることくらいだ」

「え、首を切り落とすの?」

 ロニがまた驚いている。

「冗談の通じない奴め」

「キメルはロニ様と仲良くしたいんですよ」

「え!本当!?」

「ソータが一番だ」 

「キメルが照れてる」

 ふふ、とソータが笑った。

 ✢✢✢

 次の日、早朝から会議が行われている。

「やはり、ラシータ様は封印されてしまったか。多分例の呪術ってやつだな。ソータもキメルも一方的にやられている所を見ると、魔力だけでは対応しきれないのか」

 フレンがそう言って頭を抱える。

「とんでもないのが敵になったな」

「大丈夫だよ、フレン。僕は剣も扱えるからね」 

 リヒがのんびり言う。

「いや、リヒ、剣だって当たらなきゃ意味ないんだぞ?」

「この子が暴れたがっててね」

 リヒがフレンの前に差し出したのは赤い柄の剣だった。かなりレアリティが高いものだ。

「おいこれ、魔剣だろう」

「うん。イケメンの僕が持つとかっこいいでしょう?」

「お前なあ…」

 それに、とリヒは続ける。

「パーティーがあるんだ」

「は?」

 急な展開についていけないのはフレンだけではない。

「僕とソータと少年Aでパーティーに行くね!」

「は?」

 じゃあ会議終わりねー!とリヒが立ち去ってしまった。

「あの馬鹿…」

 フレンが手で顔を覆う。

「あの大馬鹿野郎の頭を噛み砕いていいか?」

 キメルも憤慨している。

「あいつはいつもそうだからなぁ」

 とはハ・デスである。

「まあまあ、僕たちで決められることはなるべく決めましょうか」

「鬼様の言うとおりです。私たちに出来ることは全てしましょう」

 鬼とパペは冷静そのものだ。

「えーと、パーティって?」

 ロニはドキドキしながら尋ねた。ソータと一緒にそこに行けるのが何より嬉しい。

「おそらくここより北にあるツンベアの迎賓館で行われる舞踏会のことでしょう。スイレイ様がその舞踏会に国賓で呼ばれているようです。開催は明日の夜です」

パペには分からないことがないのだろうかと皆が一様に思っていた。

「スイレイはそんなに偉いのか?」

 ロニが驚いている。今更だが本当に何も知らなかったらしい。

「そこでスイレイ様を保護しましょう。私も同行します」

 パペがそう申し出た。

「じゃあ残りのメンツはラシータ様の復活か」

「任せておけ!スッと封印を解くぞ!」

 ハ・デスがとん、と胸を叩く。

「まぁそれなりに苦戦しそうだけどな」

 フレンはあくまで冷静だ。

 こうして作戦は決まった。後は明日、実行あるのみである。
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