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湯気が立ち込める浴室にソータはリーナといる。
とにかく浴室が広いのだ。もちろん湯船も大きい。そして花びらがこれでもかと浮かんでいる。
侍女たちが普段ならいるらしいが、今日は二人で入りたいからとリーナが断っていた。ソータは裸になったまま立ち竦んでいる。よく考えたら誰かと風呂に入るのは初めてだ。
「どうしたの?ソータ」
リーナに声を掛けられて、ソータはびくりとした。リーナの裸は美しい以外の何物でもない。白くすべすべした肌にソータは見とれた。
「ソータ、こっちよ。体を洗ってあげる」
リーナに腕を掴まれて、もう逃げることは出来ないとソータは諦めた。
泡で身体中をもこもこにされる。泡からとてもいい匂いがする。
「いい匂い」
へにゃあとなりながらソータが言うと、リーナも笑った。
「お姉様、式が終わったらザギヤへ?」
「ええ、そうなの。即位式があるから」
リーナはザギヤの女王になるのだ。もう気軽に会えない、ソータは寂しくなった。せっかくこうして再会できたのに。
「ちょっと、ソータ。私が女王になっても私とソータは姉妹なの。大体、アオナの聖女である貴女と会う方が難しいんだからね」
全くもうとリーナが唇を尖らせる。それが可愛くてソータは笑ってしまった。
「ほら、今度は髪の毛ね。ツルツルサラサラにして男どもに見せつけてやりましょ」
「ツルツルサラサラ?」
「ソータ、目を閉じていて」
リーナがソータの髪の毛を洗い、お湯ですすいでくれた。その後に何かいい匂いのものを髪の毛に塗り込んでいる。
「これは?」
「特製の香油よ。すっごいんだから、これ」
「いい匂いなのです」
風呂から上がり体を拭いていると、待機していたと思われる侍女たちが現れた。
「リーナ姫様、聖女様、お支度をお手伝い致します」
まだリーナのお手伝いは分かる。なんで自分まで支度をしなければならないのか。ソータがアワアワしているうちに、髪の毛を乾かされ、服を着せられている。しかもただの服ではない。明らかに上質なローブだ。
「聖女様に相応しいものをご用意させていただきました」
厳しそうな表情をした女性が言う。
「あら、ありがとうローザ。ソータ、この方は女官長よ。侍女を取りまとめているわ」
「リーナ姫様、私の紹介は…」
「必要よ、ねえ?ソータ」
「はい。ありがとうございます」
ソータが礼を言うとローザは焦ったような表情を見せる。
「どうか聖女様、私に頭を下げないでください」
「ローザが慌てているわ、珍しい」
面白いものが見られたとリーナが笑っている。
「姫様、全く…」
ローザが更に表情を険しくしてぷ、と噴き出した。
「もう・・・リーナ姫様には敵いません」
「ふふ、私の圧勝ね」
人間の友達が一人もいないと幼いリーナは泣いていた。だが、彼女はこうして沢山の人に愛されている。
「お姉様は素敵です」
「ソータに言われるとすっごく嬉しい」
ぎゅっとリーナに抱き着かれる。リーナはいつの間にか淡いピンク色のドレスを身に包んでいた。
「可愛いドレスですね」
「ふふ、ダミアン様に褒めてもらうの」
リーナはダミアンが大好きなのだとそれだけでうかがえる。
「姫様、間もなく式が始まります。聖女様はこちらへ。
「後でね、ソータ!」
「はい」
ソータは侍女に案内され、そっと城内にある礼拝堂に入った。沢山の客が今か今かとリーナを待っている。今頃ダミアンにドレスを褒めてもらえているだろう。厳かな曲が流れ出す。いよいよ主役の登場だ。しずしずと二人が歩いて来る。ダミアンは明らかに緊張しているが、隣にリーナがいるおかげか、足取りはしっかりしている。
無事、式は終わりを告げた。
***
式は終わり、成婚のパレードが執り行われた。国民が皆カリアシュヤとザギヤの国旗を振っている。
ソータたちも後ろから国旗を振った。今日の夜は結婚を祝うパーティーが行われる予定だ。ソータたちも参加することになっている。
「いやー、やっぱすごいなあ王族の結婚式って」
ロニが呟くように言う。
「ロニの興味は食事では?」
パぺが突っ込む。
「あのローストチキン美味かったなあ、ってもちろんそれだけじゃないよ!」
もー、とロニが膨れているのに皆は笑った。
「ロニさん、今日は沢山美味しいものが食べられるよ」
「うん、楽しみ」
「やっぱり食い気じゃん」
レントの言葉にロニが顔を赤らめている。
「小僧、酒を間違って飲むなよ」
キメルがからかうように言う。
「俺はまだ未成年だよ。だいたい酒なんか勧められないし」
ふいとロニが腕を組んでそっぽを向いた。そんな仕草もロニがやると可愛らしい。
「ドレス着て出た方がいいんじゃないか?」
「あー!エンジ兄ちゃん言ったな!」
ロニがいよいよへそを曲げたので皆でロニの機嫌を取った。なんだかんだロニは可愛がられている。
「ソーちゃんのローブすっごいね。刺繍とか」
「はい。いつの間にか体の寸法を測られていたみたいで」
「あ、ダンスパーティーの時に着替えた時じゃないか?」
エンジの言葉にあ、とソータも合点がいく。
「あの婆なかなかやるな」
キメルなりの誉め言葉だ。今は城の客間にいる。どうも豪華すぎて落ち着かない。
「パーティーまでまだ時間あるし、休むかな」
うーんとエンジが伸びをした。
「俺も寝る」
「私もそうしようかな」
皆、疲労が溜まっているのだ。ソータもまた疲れていた。
「じゃあ、後で」
ソータはキメルと共に自分があてがわれた部屋に向かった。
服を脱いでベッドに潜り込む。ソータはすぐに眠りに就いていた。
とにかく浴室が広いのだ。もちろん湯船も大きい。そして花びらがこれでもかと浮かんでいる。
侍女たちが普段ならいるらしいが、今日は二人で入りたいからとリーナが断っていた。ソータは裸になったまま立ち竦んでいる。よく考えたら誰かと風呂に入るのは初めてだ。
「どうしたの?ソータ」
リーナに声を掛けられて、ソータはびくりとした。リーナの裸は美しい以外の何物でもない。白くすべすべした肌にソータは見とれた。
「ソータ、こっちよ。体を洗ってあげる」
リーナに腕を掴まれて、もう逃げることは出来ないとソータは諦めた。
泡で身体中をもこもこにされる。泡からとてもいい匂いがする。
「いい匂い」
へにゃあとなりながらソータが言うと、リーナも笑った。
「お姉様、式が終わったらザギヤへ?」
「ええ、そうなの。即位式があるから」
リーナはザギヤの女王になるのだ。もう気軽に会えない、ソータは寂しくなった。せっかくこうして再会できたのに。
「ちょっと、ソータ。私が女王になっても私とソータは姉妹なの。大体、アオナの聖女である貴女と会う方が難しいんだからね」
全くもうとリーナが唇を尖らせる。それが可愛くてソータは笑ってしまった。
「ほら、今度は髪の毛ね。ツルツルサラサラにして男どもに見せつけてやりましょ」
「ツルツルサラサラ?」
「ソータ、目を閉じていて」
リーナがソータの髪の毛を洗い、お湯ですすいでくれた。その後に何かいい匂いのものを髪の毛に塗り込んでいる。
「これは?」
「特製の香油よ。すっごいんだから、これ」
「いい匂いなのです」
風呂から上がり体を拭いていると、待機していたと思われる侍女たちが現れた。
「リーナ姫様、聖女様、お支度をお手伝い致します」
まだリーナのお手伝いは分かる。なんで自分まで支度をしなければならないのか。ソータがアワアワしているうちに、髪の毛を乾かされ、服を着せられている。しかもただの服ではない。明らかに上質なローブだ。
「聖女様に相応しいものをご用意させていただきました」
厳しそうな表情をした女性が言う。
「あら、ありがとうローザ。ソータ、この方は女官長よ。侍女を取りまとめているわ」
「リーナ姫様、私の紹介は…」
「必要よ、ねえ?ソータ」
「はい。ありがとうございます」
ソータが礼を言うとローザは焦ったような表情を見せる。
「どうか聖女様、私に頭を下げないでください」
「ローザが慌てているわ、珍しい」
面白いものが見られたとリーナが笑っている。
「姫様、全く…」
ローザが更に表情を険しくしてぷ、と噴き出した。
「もう・・・リーナ姫様には敵いません」
「ふふ、私の圧勝ね」
人間の友達が一人もいないと幼いリーナは泣いていた。だが、彼女はこうして沢山の人に愛されている。
「お姉様は素敵です」
「ソータに言われるとすっごく嬉しい」
ぎゅっとリーナに抱き着かれる。リーナはいつの間にか淡いピンク色のドレスを身に包んでいた。
「可愛いドレスですね」
「ふふ、ダミアン様に褒めてもらうの」
リーナはダミアンが大好きなのだとそれだけでうかがえる。
「姫様、間もなく式が始まります。聖女様はこちらへ。
「後でね、ソータ!」
「はい」
ソータは侍女に案内され、そっと城内にある礼拝堂に入った。沢山の客が今か今かとリーナを待っている。今頃ダミアンにドレスを褒めてもらえているだろう。厳かな曲が流れ出す。いよいよ主役の登場だ。しずしずと二人が歩いて来る。ダミアンは明らかに緊張しているが、隣にリーナがいるおかげか、足取りはしっかりしている。
無事、式は終わりを告げた。
***
式は終わり、成婚のパレードが執り行われた。国民が皆カリアシュヤとザギヤの国旗を振っている。
ソータたちも後ろから国旗を振った。今日の夜は結婚を祝うパーティーが行われる予定だ。ソータたちも参加することになっている。
「いやー、やっぱすごいなあ王族の結婚式って」
ロニが呟くように言う。
「ロニの興味は食事では?」
パぺが突っ込む。
「あのローストチキン美味かったなあ、ってもちろんそれだけじゃないよ!」
もー、とロニが膨れているのに皆は笑った。
「ロニさん、今日は沢山美味しいものが食べられるよ」
「うん、楽しみ」
「やっぱり食い気じゃん」
レントの言葉にロニが顔を赤らめている。
「小僧、酒を間違って飲むなよ」
キメルがからかうように言う。
「俺はまだ未成年だよ。だいたい酒なんか勧められないし」
ふいとロニが腕を組んでそっぽを向いた。そんな仕草もロニがやると可愛らしい。
「ドレス着て出た方がいいんじゃないか?」
「あー!エンジ兄ちゃん言ったな!」
ロニがいよいよへそを曲げたので皆でロニの機嫌を取った。なんだかんだロニは可愛がられている。
「ソーちゃんのローブすっごいね。刺繍とか」
「はい。いつの間にか体の寸法を測られていたみたいで」
「あ、ダンスパーティーの時に着替えた時じゃないか?」
エンジの言葉にあ、とソータも合点がいく。
「あの婆なかなかやるな」
キメルなりの誉め言葉だ。今は城の客間にいる。どうも豪華すぎて落ち着かない。
「パーティーまでまだ時間あるし、休むかな」
うーんとエンジが伸びをした。
「俺も寝る」
「私もそうしようかな」
皆、疲労が溜まっているのだ。ソータもまた疲れていた。
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