カラスの月夜

はやしかわともえ

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修行のあと

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「ん、まり、や...っ!」

俺は茉莉也とキスをしている。

なんでこんなことになってしまったんだ?
茉莉也とするキスは熱くて、とろけそうだった。息が苦しいけど、そんなのどうでもいい。
茉莉也を感じられるのが嬉しい。

「気持ちいい?月夜」

「ん、気持ちいい、もっと」

ぎゅ、と茉莉也に抱きつくと茉莉也も抱き返してくれる。
胸が苦しい。
でもそれはマイナスじゃない。
もっと温かい感情だ。

あれから茉莉也に修行をする、と言われて、茉莉也の式神六体と本気の戦いをした。
茉莉也の式神は強くて、何度も地面に叩きつけられた。
しかもこちらは相手の気配がほとんど読めない。
要するに苦戦でしかない。
式神の気配はひとつひとつが小さい。
またそれが気配を読み取りづらくする。
俺が地面に叩き伏せられるたびに、茉莉也に仕切り直しをするように言われる。
茉莉也だって六体も式神を操っている。
疲れないはずがない。

「はあっ、っつ」

もう何回張り倒されたか、俺はそれでも立ち上がろうとした。
体ががくがくする。
でも茉莉也だって一緒に頑張ってくれてる。
俺が頑張らないわけにはいかない。
剣を構える。
足が震えた。

式神が同時に二体迫ってくる。
俺は咄嗟にそれを避けて後ろから迫ってきた式神を切りつけた。

「!!」

今気配が分かった?

「月夜!」

茉莉也が嬉しそうな声を上げる。

「茉莉也、頼む。もう少しなんだ」

「わかった」

それからはぎりぎりだった。
いつ倒れてもおかしくない。
茉莉也の式神はいよいよ強くなった。
今までの動きをはるかに上回る。

(茉莉也は本気を出してなかった)

悔しい。俺が茉莉也を守っているのに。
さっきより気配を確実に読めるようになっている。

「そこまで」

茉莉也が言う。
俺は倒れた。

「月夜!」

茉莉也が駆け寄ってくる。
俺は茉莉也を見つめた。

「茉莉也は絶対俺が守るから」

「うん、信じてるよ」

そしたら何故かキスが始まってしまったのだった。
はじめは恥ずかしかったけど、茉莉也が俺は大好きだ。
いつの間にか彼を受け入れていた。

「まりや、いたい」

「え、痛いの?」

茉莉也が慌てたような声を出す。
唇の横に大きな切り傷ができている。これがうずくのだ。

「ごめんね、月夜」

茉莉也はそこに手をかざしてくれた。

「何してるんだ?」

「手当だよ。俺の本来の力は癒しなんだ」

確かに茉莉也が手をかざしてくれたら楽になった気がする。

「ありがとう、茉莉也」

「傷残らないようにしっかりしておこう」

「ん」

もう茉莉也はキスしてくれないのかな、なんて残念に思った。

「月夜」

ちゅ、と頬にキスされる。

「あとでもっとしようね」

俺は顔が熱くなるのを感じた。
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