カラスの月夜

はやしかわともえ

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復活

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俺は茉莉也と共に修業を続けていた。
今では式神の数は12体になっていた。
前より気配が読み取れるとはいえ、相手の方が絶対的に手数は多い。

ピッと俺の頬に傷が走って血が流れ出す。
うぅ、また避けきれなかった。

「月夜、集中」

茉莉也がすかさず声をかけてくる。俺は頷いて応えた。

(あと1体)

なんとか11体、俺は式神を倒した。残り1体、ずっと手間取っている。
式神は攻撃は軽いが素早い。
それがまた体力を奪われる。

(くそ)

式神の動きに翻弄される。

(慌てるな)

呼吸を整える。
気配を感じ取った。

「そこだ!」

剣を振ると式神が崩れ落ちた。
勝った、のか?

「月夜、すごいよ」

茉莉也が抱き付いてくる。
茉莉也の式神を全部倒せた?

「月夜、試してみて」

力を出せ、ということだろうか。
俺は全身に力をこめてみた。

(なんだ?)

俺の体からエネルギーがほとばしってくる。
茉莉也の霊力もはっきり読み取れた。気のせいなんかじゃなかった。
茉莉也の霊力は人間の保有できる限界を超えている。

「茉莉也、お前」

「月夜」

茉莉也はにっこり笑う。
俺はなにも言えなかった。
茉莉也が神になっている。
いつから?どうして?


茉莉也から休憩だと言われて、俺たちは土手に座っていた。

「茉莉也、どういうことなんだ?」

「うん、いつかは話さなきゃって思ってたけど」

「なんて無茶をするんだ?」

俺は茉莉也の肩を掴んで揺さぶった。
茉莉也はそれでも動じなかった。

「月夜がいなくなって、俺はいよいよおかしくなってね」

茉莉也はあの時、限界を迎えていたのか。
子供として暮らせない生活。俺は気が付いてあげられなかった。

「茉莉也、ごめん」

俺は涙を止められなかった。
茉莉也を俺が守るって決めたのに。

「月夜のせいじゃない。俺が自分でそれを選んだんだよ」

茉莉也が俺の涙を拭ってくれた。

「月夜、鍵持ってる?」

鍵?俺はようやく思い出した。
ばあさんから受け取った鍵。
それはポケットに入っている。
取り出すと茉莉也がその上に手を置いた。

「これは俺が封印されてる鍵。ここに子供の頃の俺の精神が入ってる」

そんなに大切なものだったのか。
俺は鍵を握りしめた。

「月夜はずっと俺を守ってくれてるよ」

「茉莉也」

俺は不思議な感覚を覚えていた。
頭の中に映像が走る。
なんだ?

「月夜?」

茉莉也が不思議そうに俺を見る。
前にもこうして茉莉也と話した。
茉莉也と俺はずっと一緒だった。

「思い出した」

「え?」

俺が人間だったころの記憶。
そこから始まっていた。

「月夜、本当に思い出せたの?」

俺は頷いた。
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