2 / 23
千尋・加那太・真司・千晶
お泊まり会
しおりを挟む
「あぁ…こんな簡単に」
ある日の夜、加那がテレビを観ながらぽつっと呟いた。今、加那はあるサスペンスドラマにハマっている。主人公である刑事のバディ二人がイケメンでかっこいいとSNSでも人気らしい。加那はドラマを観ながらスマートフォンでSNSもチェックしている。今時はこれが当たり前だから不思議なものだな。サスペンスといえば当然、誰かが死ななければ話が始まらないわけで。加那はそれを観て呟いたのだ。でも、あっさり死んでくれないとドラマパートが短くなるから仕方がないとは言えないよな。流石にメタ過ぎる。
「加那は本当にそのドラマ好きだな」
「うん、面白いから好き。タカヤくんかっこいい。あきくんも観てるって言ってたよ」
確かあきもそんなことを言ってたな。(俺とあきは時折、喫茶店で家事の愚痴を言い合う会を開いている。愚痴とは言っても〇〇が高くなったとか普段の献立が思い付かないから思い付いた時にお互いに共有しようだとか、美味しそうなレシピを見付けたら教え合おうという平和なものだ。俺もあきもパートナーに恵まれている結果だと思う。)あきと加那は推しが同じなのか。
「ねえ、みんなでお泊まり会しようよ!」
加那の思い付きがまた始まった。まぁ楽しそうだからいいけれど。あきたちに聞いてみるか。俺はスマートフォンを取り出した。
「何するんだ?ゲームか?」
「このドラマの劇場版を観ながらお菓子食べたい」
「あぁ、これ映画化してるのか?」
「そうなの。でもなかなか観てる時がないからさ」
「?」
加那が言うにはこの作品は映画とドラマで少しずつシナリオが違うらしい。それも話題の一つなのだと説明してくれた。なるほど、金の掛かり具合が半端ないのは理解した。映画は全部で六作出ているらしい。そりゃなかなか長いな。観ている時がないという理由もわかる。六作って、魔法学校が舞台のあの映画並みじゃないか。とりあえずあきと真司さんに打診してみるか。俺はメッセージを送った。いつもすぐ既読がつくのはあきだ。返信も速い。
「楽しそうですね!俺、資料作りますよ」
資料ってなんだろう?と思っていたらまたメッセージが来た。
「ドラマパートの流れをまとめます」
そうか。シナリオがドラマと少しずつ違うから、ということか。大変じゃないかと聞いたら、自分用に既にまとめていたらしい。よく知らない俺のためにもう少し詳しく踏み込んで作ると言ってくれた。ありがたい。真司さんからも返信が来た。
「もちろんいいよ、千晶から聞いた」
そう書いてある。それなら話が早いな。
「その映画はDVDを借りてくるのか?」
加那に尋ねるとふるふると首を横に振られた。
「Blu-rayに入れておいた!いつか観ようと思って!」
それなら準備万端か。とりあえず散らかった部屋をなんとか片付けないとな。あと、みんなで何を食べようか。焼肉でもしようか?加那が目をキラキラさせているな。
✢✢✢
「お邪魔します」
「二人共、いらっしゃい!今お茶淹れるね!」
加那が冷たいお茶をグラスに注いでいる。
あきと真司さんには座っていてもらった。
「はい、どうぞ」
加那が二人の前にグラスを置く。二人共喉が乾いていたのか一息に飲み干す。外、暑いもんな。
「おかわりいる?」
「あの…かなさん」
あきがビニール袋を差し出している。
「今日焼肉って聞いていたのでホルモンを買ってきました」
「えー、わざわざありがとうー!」
今日はお泊まり会だから飲酒解禁だ。(いつもノンアルコールビールを飲んでいる)とにかく飲もうってことになった。冷蔵庫からビールを取り出す。暑いからキンキンに冷えたビールは絶対に美味い。みんな一本ずつ持ったのを確認した。
「じゃあ、乾杯!」
「効くなぁ」
「うんま…」
プルタブを引っ張って一口。ビールを飲むとオヤジになるのは不可避だ。さて、そろそろホットプレートも温まっている頃だ。肉を焼き始めるか。
肉を載せるとジュワアアアといういい音が鳴り響く。
「これでご飯食べられる」
「さすがかなさんだな」
「あはは」
加那の食いしん坊ぶりにもみんな慣れたみたいだな。肉を焼きながら飲むのも悪くない。食べてみると思いの外肉が美味かった。遅い時間を狙って行ったら肉が予想通り安くなっていた。タレは適当な焼肉のタレだ。でも美味い。
「千尋ー、ご飯食べるー!」
「はいよ」
炊いておいた米を茶碗に盛ってやる。加那、腹減ってたんだな。未だに男子高校生みたいな食欲だもんな、こいつ。
野菜ももちろん焼いた。かぼちゃが甘くて美味いとみんな言ってたな。
「わぁい、お泊まり会楽しい!」
現在午後9時。加那のテンションも高まったところで、映画を観ることになった。あきが資料をみんなに配ってくれる。
「映画を観ながらチラチラ観てもらえれば」
相変わらずあきの資料作成能力の高さには驚かされるな。これを観るだけで、随分ストーリーが分かるな。どうやらドラマの一話は主人公たちがバディになる所から始まるらしい。映画もちゃんとそこから始まるらしい。作り込んであるな。
「じゃあ流すねー!」
お菓子をつまみながら観る映画はよかった。
「あ、ここが違うんだ」
「みたいですね」
あきも劇場版を観るのは初めてだったらしい。今回実施できてよかったな。加那風に言うと、お泊まり会最高!ってやつだったな。
おわり
ある日の夜、加那がテレビを観ながらぽつっと呟いた。今、加那はあるサスペンスドラマにハマっている。主人公である刑事のバディ二人がイケメンでかっこいいとSNSでも人気らしい。加那はドラマを観ながらスマートフォンでSNSもチェックしている。今時はこれが当たり前だから不思議なものだな。サスペンスといえば当然、誰かが死ななければ話が始まらないわけで。加那はそれを観て呟いたのだ。でも、あっさり死んでくれないとドラマパートが短くなるから仕方がないとは言えないよな。流石にメタ過ぎる。
「加那は本当にそのドラマ好きだな」
「うん、面白いから好き。タカヤくんかっこいい。あきくんも観てるって言ってたよ」
確かあきもそんなことを言ってたな。(俺とあきは時折、喫茶店で家事の愚痴を言い合う会を開いている。愚痴とは言っても〇〇が高くなったとか普段の献立が思い付かないから思い付いた時にお互いに共有しようだとか、美味しそうなレシピを見付けたら教え合おうという平和なものだ。俺もあきもパートナーに恵まれている結果だと思う。)あきと加那は推しが同じなのか。
「ねえ、みんなでお泊まり会しようよ!」
加那の思い付きがまた始まった。まぁ楽しそうだからいいけれど。あきたちに聞いてみるか。俺はスマートフォンを取り出した。
「何するんだ?ゲームか?」
「このドラマの劇場版を観ながらお菓子食べたい」
「あぁ、これ映画化してるのか?」
「そうなの。でもなかなか観てる時がないからさ」
「?」
加那が言うにはこの作品は映画とドラマで少しずつシナリオが違うらしい。それも話題の一つなのだと説明してくれた。なるほど、金の掛かり具合が半端ないのは理解した。映画は全部で六作出ているらしい。そりゃなかなか長いな。観ている時がないという理由もわかる。六作って、魔法学校が舞台のあの映画並みじゃないか。とりあえずあきと真司さんに打診してみるか。俺はメッセージを送った。いつもすぐ既読がつくのはあきだ。返信も速い。
「楽しそうですね!俺、資料作りますよ」
資料ってなんだろう?と思っていたらまたメッセージが来た。
「ドラマパートの流れをまとめます」
そうか。シナリオがドラマと少しずつ違うから、ということか。大変じゃないかと聞いたら、自分用に既にまとめていたらしい。よく知らない俺のためにもう少し詳しく踏み込んで作ると言ってくれた。ありがたい。真司さんからも返信が来た。
「もちろんいいよ、千晶から聞いた」
そう書いてある。それなら話が早いな。
「その映画はDVDを借りてくるのか?」
加那に尋ねるとふるふると首を横に振られた。
「Blu-rayに入れておいた!いつか観ようと思って!」
それなら準備万端か。とりあえず散らかった部屋をなんとか片付けないとな。あと、みんなで何を食べようか。焼肉でもしようか?加那が目をキラキラさせているな。
✢✢✢
「お邪魔します」
「二人共、いらっしゃい!今お茶淹れるね!」
加那が冷たいお茶をグラスに注いでいる。
あきと真司さんには座っていてもらった。
「はい、どうぞ」
加那が二人の前にグラスを置く。二人共喉が乾いていたのか一息に飲み干す。外、暑いもんな。
「おかわりいる?」
「あの…かなさん」
あきがビニール袋を差し出している。
「今日焼肉って聞いていたのでホルモンを買ってきました」
「えー、わざわざありがとうー!」
今日はお泊まり会だから飲酒解禁だ。(いつもノンアルコールビールを飲んでいる)とにかく飲もうってことになった。冷蔵庫からビールを取り出す。暑いからキンキンに冷えたビールは絶対に美味い。みんな一本ずつ持ったのを確認した。
「じゃあ、乾杯!」
「効くなぁ」
「うんま…」
プルタブを引っ張って一口。ビールを飲むとオヤジになるのは不可避だ。さて、そろそろホットプレートも温まっている頃だ。肉を焼き始めるか。
肉を載せるとジュワアアアといういい音が鳴り響く。
「これでご飯食べられる」
「さすがかなさんだな」
「あはは」
加那の食いしん坊ぶりにもみんな慣れたみたいだな。肉を焼きながら飲むのも悪くない。食べてみると思いの外肉が美味かった。遅い時間を狙って行ったら肉が予想通り安くなっていた。タレは適当な焼肉のタレだ。でも美味い。
「千尋ー、ご飯食べるー!」
「はいよ」
炊いておいた米を茶碗に盛ってやる。加那、腹減ってたんだな。未だに男子高校生みたいな食欲だもんな、こいつ。
野菜ももちろん焼いた。かぼちゃが甘くて美味いとみんな言ってたな。
「わぁい、お泊まり会楽しい!」
現在午後9時。加那のテンションも高まったところで、映画を観ることになった。あきが資料をみんなに配ってくれる。
「映画を観ながらチラチラ観てもらえれば」
相変わらずあきの資料作成能力の高さには驚かされるな。これを観るだけで、随分ストーリーが分かるな。どうやらドラマの一話は主人公たちがバディになる所から始まるらしい。映画もちゃんとそこから始まるらしい。作り込んであるな。
「じゃあ流すねー!」
お菓子をつまみながら観る映画はよかった。
「あ、ここが違うんだ」
「みたいですね」
あきも劇場版を観るのは初めてだったらしい。今回実施できてよかったな。加那風に言うと、お泊まり会最高!ってやつだったな。
おわり
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる