11 / 23
千尋・加那太・真司・千晶
年末の夜(後編)
しおりを挟む
「外は寒いですから暖かくしていきましょう」
23時過ぎ、僕たちは神社に行く支度をしている。コートの上からマフラーを巻いて手袋を嵌める。なんかマフラーがだらんってなっている。いつも上手く出来ないのはなんでなんだ?
「加那、マフラーほどけそうだぞ」
そう言って千尋がマフラーを巻き直してくれた。マフラーがようやく言うことを聞いてくれた。
「ありがと!」
ニット帽を被って出掛ける準備は完了した。毎年のことなのに僕はいつもこの行事にワクワクしている。
「では行きましょうか」
外に出ると冷たい風が吹いている。やっぱり寒い。
「かなさん、向こうに着いたら熱い甘酒飲みましょうね」
「わぁ、楽しみ」
僕たちは他愛もない話をしながら神社に向かった。
やっぱり年末って楽しいな。
「あ、クリスマスプレゼントありがとうございました」
「いや、俺達こそもらっちゃって。ありがとう」
あきくんはルームウェアにびっくりするだろうな。
僕はふと気が付いた。いつの間にか周りに人が沢山いる。みんなこの神社に初詣に来たんだ。お酒を飲みながら歩いている人もいる。更に歩くといくつも屋台が並んでいた。たこ焼き、焼きそば、りんご飴にクレープ、色々ある。うーん、さっきあんなに食べたのについ目移りしてしまうな。でも後で天ぷらの載った年越しそばを食べる予定だ。我慢しよう。もうすぐ鳥居が見える頃だろうか。
つんつん、とあきくんに指でつつかれた。
「甘酒飲みましょう」
あきくんが指をさした方向には確かにお店があった。なんだか昔話に出てくるような古風な雰囲気のあるお店だった。
「…本当は甘酒パフェが食べたいんですよね。でもそれだとさすがに冷たいから」
あきくんはここでもスイーツを求めていた。さすが。
僕たちは店員のお姉さんに甘酒を注文した。こんなに寒い場所で熱々の甘酒を飲むのは初めての経験だ。
出てきた甘酒は熱々で僕たちは息で冷ましながらそれを飲んだ。甘酒が体をじわっと温めてくれる。このどろっとしてる感じ、好きだなぁ。
「美味いなぁ」
「本当に」
真司さんや、あきくんとこうして一緒に年が越せて本当に嬉しい。もちろん千尋とも。
「あ、除夜の金が鳴り出したな」
千尋が笑って言う。ああ、やっぱり楽しい。だから12月って好きなんだ。
「もう今年も終わるんだね」
「俺達、いっぱい遊びましたよね」
「俺達はだいたい食ってるか遊んでるかだからな」
あきくんが千尋の言葉に噴き出している。もー、身も蓋もないんだから。
「楽しかったな」
「うん、楽しかった」
真司さんが笑う。
「かなさん、来年もよろしく」
「僕の方こそ」
お互いに今年のお礼を言い合った。除夜の鐘はもう100回は鳴っている。そしてカウントダウンがどこからともなく始まった。僕たちもそれに加わる。
「3.2.1!!おめでとうー!」
歓声がどっと沸く。人が一気に動いたらしい。僕たちも自然と前に進んだ。いつの間にか鳥居が近くにある。確か入る時は頭を下げるんだっけ。
今年のお願い事、それは「今年も楽しく過ごせますように」の一択だ。不思議な力は最近発動していないけど何が起きるか分からないのが人生だし。
あ!去年のお礼も神様に言わなくちゃいけないな。
✢✢✢
「わぁぁ、大きなエビ天!」
「最近、近所の天ぷら屋さん開拓したんです。今度一緒に行きましょうね」
「いつも悪いな」
あきくんが千尋の言葉に首を横に振る。
「全然です。千尋さんにもかなさんにもいつもお世話になってますし」
あきくん、いい子ー!
「かなさん、これじゃお腹いっぱいにならないんじゃないか?」
「あ、そうですよね、お餅焼きましょうか?」
真司さんとあきくんにお腹の具合をめちゃくちゃ心配されてしまった。
「だ、大丈夫だよ。二人共」
困って言うと二人にジッと見つめられる。
「かなさん、もしかして、ダイエットか?」
「そうなんですか?必要ないですよ」
怒られるかもしれないけど、ダイエットなんて今までしたことないしなぁ。じり、と詰め寄られて僕は焦った。
「だ、ダイエットはしてないよ。さっき沢山食べたからお腹いっぱいなだけ」
「お腹が空いたら言ってくださいね!」
僕、どんだけ腹ペコキャラなんだろう。いや、実際腹ペコキャラなんだけどね。
お蕎麦も天ぷらもすごく美味しかった。
あきくんが布団の用意をしてくれている。まだ寝たくないけど、タマが心配するだろうから早めに起きることになっている。
初夢はいいものが見られたら嬉しいなぁ。
寝る間際、隣にいた千尋が頭を撫でてきた。
「どうしたの?」
小声で尋ねるとそのままキスされる。わ、なんだ急に。味わうようにキスされて僕は蕩けそうになった。
千尋とするキスは気持ちいい。
「加那、おやすみ」
「おやすみ」
千尋、今年もよろしくね。
おわり
23時過ぎ、僕たちは神社に行く支度をしている。コートの上からマフラーを巻いて手袋を嵌める。なんかマフラーがだらんってなっている。いつも上手く出来ないのはなんでなんだ?
「加那、マフラーほどけそうだぞ」
そう言って千尋がマフラーを巻き直してくれた。マフラーがようやく言うことを聞いてくれた。
「ありがと!」
ニット帽を被って出掛ける準備は完了した。毎年のことなのに僕はいつもこの行事にワクワクしている。
「では行きましょうか」
外に出ると冷たい風が吹いている。やっぱり寒い。
「かなさん、向こうに着いたら熱い甘酒飲みましょうね」
「わぁ、楽しみ」
僕たちは他愛もない話をしながら神社に向かった。
やっぱり年末って楽しいな。
「あ、クリスマスプレゼントありがとうございました」
「いや、俺達こそもらっちゃって。ありがとう」
あきくんはルームウェアにびっくりするだろうな。
僕はふと気が付いた。いつの間にか周りに人が沢山いる。みんなこの神社に初詣に来たんだ。お酒を飲みながら歩いている人もいる。更に歩くといくつも屋台が並んでいた。たこ焼き、焼きそば、りんご飴にクレープ、色々ある。うーん、さっきあんなに食べたのについ目移りしてしまうな。でも後で天ぷらの載った年越しそばを食べる予定だ。我慢しよう。もうすぐ鳥居が見える頃だろうか。
つんつん、とあきくんに指でつつかれた。
「甘酒飲みましょう」
あきくんが指をさした方向には確かにお店があった。なんだか昔話に出てくるような古風な雰囲気のあるお店だった。
「…本当は甘酒パフェが食べたいんですよね。でもそれだとさすがに冷たいから」
あきくんはここでもスイーツを求めていた。さすが。
僕たちは店員のお姉さんに甘酒を注文した。こんなに寒い場所で熱々の甘酒を飲むのは初めての経験だ。
出てきた甘酒は熱々で僕たちは息で冷ましながらそれを飲んだ。甘酒が体をじわっと温めてくれる。このどろっとしてる感じ、好きだなぁ。
「美味いなぁ」
「本当に」
真司さんや、あきくんとこうして一緒に年が越せて本当に嬉しい。もちろん千尋とも。
「あ、除夜の金が鳴り出したな」
千尋が笑って言う。ああ、やっぱり楽しい。だから12月って好きなんだ。
「もう今年も終わるんだね」
「俺達、いっぱい遊びましたよね」
「俺達はだいたい食ってるか遊んでるかだからな」
あきくんが千尋の言葉に噴き出している。もー、身も蓋もないんだから。
「楽しかったな」
「うん、楽しかった」
真司さんが笑う。
「かなさん、来年もよろしく」
「僕の方こそ」
お互いに今年のお礼を言い合った。除夜の鐘はもう100回は鳴っている。そしてカウントダウンがどこからともなく始まった。僕たちもそれに加わる。
「3.2.1!!おめでとうー!」
歓声がどっと沸く。人が一気に動いたらしい。僕たちも自然と前に進んだ。いつの間にか鳥居が近くにある。確か入る時は頭を下げるんだっけ。
今年のお願い事、それは「今年も楽しく過ごせますように」の一択だ。不思議な力は最近発動していないけど何が起きるか分からないのが人生だし。
あ!去年のお礼も神様に言わなくちゃいけないな。
✢✢✢
「わぁぁ、大きなエビ天!」
「最近、近所の天ぷら屋さん開拓したんです。今度一緒に行きましょうね」
「いつも悪いな」
あきくんが千尋の言葉に首を横に振る。
「全然です。千尋さんにもかなさんにもいつもお世話になってますし」
あきくん、いい子ー!
「かなさん、これじゃお腹いっぱいにならないんじゃないか?」
「あ、そうですよね、お餅焼きましょうか?」
真司さんとあきくんにお腹の具合をめちゃくちゃ心配されてしまった。
「だ、大丈夫だよ。二人共」
困って言うと二人にジッと見つめられる。
「かなさん、もしかして、ダイエットか?」
「そうなんですか?必要ないですよ」
怒られるかもしれないけど、ダイエットなんて今までしたことないしなぁ。じり、と詰め寄られて僕は焦った。
「だ、ダイエットはしてないよ。さっき沢山食べたからお腹いっぱいなだけ」
「お腹が空いたら言ってくださいね!」
僕、どんだけ腹ペコキャラなんだろう。いや、実際腹ペコキャラなんだけどね。
お蕎麦も天ぷらもすごく美味しかった。
あきくんが布団の用意をしてくれている。まだ寝たくないけど、タマが心配するだろうから早めに起きることになっている。
初夢はいいものが見られたら嬉しいなぁ。
寝る間際、隣にいた千尋が頭を撫でてきた。
「どうしたの?」
小声で尋ねるとそのままキスされる。わ、なんだ急に。味わうようにキスされて僕は蕩けそうになった。
千尋とするキスは気持ちいい。
「加那、おやすみ」
「おやすみ」
千尋、今年もよろしくね。
おわり
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる