いちゃらぶ②(日常パート)

はやしかわともえ

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千尋×加那太

クリスマスツリー

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『今年のクリスマスは~』


ある日の休日、加那太は朝食のトーストに噛り付きながらテレビを見ていた。
もう12月の半ば過ぎ。クリスマスまでもうすぐである。

「ねえ千尋」

「ん?」

加那太は向かいでハムエッグを食べていた千尋に声を掛けた。千尋が加那太を見つめる。

「クリスマスツリー欲しい」

「要らない」

きっぱりと拒否されて加那太は「やっぱり」と内心で思った。だがもう一回ねだってみることにする。

「小さいのでいいから」

「タマが倒しちゃったら困るだろ?」

「そうか・・そうだね」

タマが加那太の足にすり寄って来る。呼ばれたと思ったらしい。加那太は彼女の背を撫でた。

「あきくんからメッセージ来てた」

「ああ、クリスマスパーティーな。俺はラザニアでも作ろうかなって」

「千尋すごすぎる」

今年のクリスマスも楽しそうだと加那太は嬉しくなった。12月は寒い。だが人とのつながりを感じられて暖かい季節でもる。毎年これが楽しみだ。

「僕にもなにか出来ない?」

千尋に尋ねると彼が考え始める。

「アイシングクッキーか?」

「ナニソレ」

「クッキーにデコレートするんだ」

「うわあ、やるー」

「じゃあ皆で作ろう。あ、今これ来てた」

「?」

千尋がスマートフォンの画面をこちらに向けてくれた。そこには写真が添付されたメッセージが来ている。差出人を見ると千晶からだった。

「これってクリスマスリースだよね?」

「ワークショップで作ったんだってよ。二人共上手過ぎる」

「え、買ったのかと思った」

千晶のリースは華やかなピンクと淡いピンクの飾りでまとめられ、一方、真司のリースは緑色を主体に、赤色、金色のリボンで装飾されている。

「ピンク選ぶの、さすがあきくんって感じ。でも分からないことない、可愛いし」

「あきらしいよな」

2人で感想を言い合う。

「じゃ、飯食ったら買い物行こうな。クッキーの材料買おうぜ」

「やったあ」

千晶たちにメッセージで尋ねると、二人共来れるとのことだった。
スーパーで待ち合わせることにする。こうして遊ぶ回数をかさねるごとに、どんどん仲良くなっている。

「わわ、クリスマスめちゃくちゃ楽しみ」

改めて喜びを噛みしめる加那太である。
近くのスーパーで必要な材料を買っていると千晶たちがやって来た。

「こんにちは」

「あきくん!」

加那太が駆け寄ると千晶も嬉しそうに笑ってくれた。

「クリスマスパーティー楽しみ」

「はい。俺もめちゃくちゃ楽しみです。実はもうケーキは用意していてあとは届くのを待つだけなんです」

「えー、すっご」

千尋が小麦粉をカゴに入れる。

「クッキーを焼くのか?千尋さん」

「ああ。アイシングクッキーを作ろうって」

「わ、それ俺めちゃくちゃ好きなやつ」

わいわい言いながらの買い物はいつも楽しい。
四人はそれぞれ荷物を持って加那太たちが暮らすマンションに戻って来た。

「アイシングクッキーってどうやって作るの?」

加那太の問いに千尋が腕まくりをしながら答える。

「基本的に普通のクッキーだ」

「デコレートが綺麗に出来るといいな」

千晶も自前のエプロンを着けていた。やる気は十分である。
生地を捏ねて型で抜く。

「お、可愛いな」

真司が感心したように言う。
クリスマスツリーの型や、星型、ハートなど様々な型がある。その作業につい没頭してしまう。
オーブンに生地を入れて、四人はお茶を飲むことにした。

「ケーキってどんなの?」

加那太にスマートフォンの画面を見せている千晶である。

「わー、高級そう。金箔かかってる」

「ご褒美です」

ニコニコしながら千晶が加那太に言う。そんな二人の様子を千尋は見ていた。

「千尋さん」

真司にそっと声を掛けられて千尋は彼に顔を寄せた。

「千晶にいろいろ付き合ってくれたみたいで」

どうやら彼は知っているらしい。加那太が言ったのだとすぐに分かった。

「全然気にしなくていい。俺もあきに怖がられてるのはやだったし」

「知ってたのか」

真司の言葉に千尋は笑ってしまった。

「やっぱり怖がられてたか」

真司が顔を赤くする。

「いや、そういう・・えーと」

「気にしなくていいよ」

千尋が笑うと真司は頷いた。

「加那も楽しそうにしてるし、俺も楽しい」

「ああ、俺もだ」

クッキーの焼き上がりをオーブンが告げている。

✣✣✣

「ねえ、千尋ー。なんでこっちにきたの?
逆方向じゃん」

「いいから来い」

デコレーションしたクッキーを加那太と千尋は千晶たちに届けた。ふと、千尋はそこで思い出したのである。ここにはあれがある。

「あ!」

加那太が嬉しそうに笑った。
きらびやかな装飾をされたクリスマスツリーだ。

「家には絶対に置けないよな」

「外国の家でも、多分無理だよ」

クリスマスツリーの電飾が輝き出す。
18時を報せる時報がどこからか聞こえた。

おわり
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